【夏合宿3日目】劇場版 姪探偵ナンコ 機械仕掛けの標的 同時視聴するよ~♪【FMK/薙切ナキ/その他】

【夏合宿3日目】劇場版 姪探偵ナンコ 機械仕掛けの標的 同時視聴するよ~♪【FMK/薙切ナキ/その他】



「というわけで、にゃつ合宿3日目の配信は、劇場版にゃンコの機械仕掛けの標的ターゲットを同時視聴していくよ~」


 合宿3日目のオフコラボが始まった。

 前2回の配信は小槌のチャンネルからの配信だったが、流石に小槌ばかりズルい、不公平だという話になったので、今日からは各チャンネルをローテしていくことになった。

 そんな感じで本日はナキのチャンネルからの配信となっている。


「今日もFMKのメンバー総出で……って言いたいところにゃんだけど、☆ちゃんが体調不良で今日はちょっとお休みしてます」


〈風邪?〉

〈大丈夫かな?〉

〈夏バテかもね〉

〈夏風邪なら小槌が真っ先に拗らせそうなのに〉

〈お大事に〉


「なんか今さりげなくディスられてなかった? あたし」


「気のせいにゃんじゃにゃいかにゃ」


 小槌をあしらいながら、ナキは☆ちゃんを心配するリスナーたちの言葉を有難く思う。

 あれからまだ目を覚ましていない☆ちゃんも、きっとこのチャットを見れば元気になる。

 元気のない☆ちゃんなんて☆ちゃんじゃない。

 だからどんな悩みを抱えているか知らないが、さっさとそんなものは乗り越えて元の笑顔を見せて欲しい。

 気恥ずかしいので口には出さないが、瑠璃だってトレちゃんを死ぬほど心配しているのだから。 



「――さ、☆ちゃんのことは一旦おいといて、同時視聴を始めようと思うけど……FMKのみんにゃはこの映画見たことあるかにゃ?」


「これナンコの1作目の映画だっけ? あたし最近のヤツしか見てないのよね」


「わたくしはそもそも、これが初めての映画鑑賞ですわ」



〈えぇ……〉

〈流石箱入り娘は格が違うなあ〉

〈お嬢様に見せる初めての映画がこれでええんか?〉

〈ええやろ〉

〈やっぱ1作目が原点にして頂点だと思う〉

〈俺は天国へのT字路が好き〉

〈今やってる新作映画面白かったよ〉



「ちにゃみに私はにゃん回も見てるかにゃ」


「ふ~ん、ナキちゃんこの映画好きなんだ?」


「いや、私っていうかおにいが好きで」


「え、ナキちゃんってお兄さんいるんだ?」


「あっ……うん、いるいる。兄猫が1匹」


 しまった、とナキは心の中で舌打ちをした。

 余計な詮索をされたくないからこれまで家族関係の話には一切触れてこなかったのに、つい油断して兄の話をしてしまった。

 まあ、代表=兄ということまではバレてないから良いが、あまりこの話を深掘りされるのもイヤなので早々に流れを変えるべきだろう。

 代表が兄であることを知っている幽名辺りが余計なボロを出す前に――


「? ナキ様のお兄様なら小槌様も会ったことが」


「にゃー! にゃー! にゃああああああ!!!」


「ちょ、どうしたのナキちゃん。いきなり鳴き出して」


「ちょっと発作が」


「え、こわ」


 危なすぎた。


「ええっと、そんにゃことより、琴里はどうにゃのかにゃ? この映画は見たことある?」


 慌てて会話の軌道修正を試みる。

 話を振られた琴里は、待ってましたとばかりにキラリと目を光らせて、鼻息荒く身を乗り出してきた。


「原作は全巻持ってますし、映画も当然全部見てます!」


「そ、そうにゃんだ……」


「推しは青井さんで、好きなCPカップリングは青ア――」


「分かったからちょっと落ち着いて! にゃんか目が怖いよ琴里!」


 まさかのガチ……というか腐ってる方の人だった。

 しかし残念ながら今回見る映画は20年近く前の作品なので、10年くらい前に登場した琴里の推しである人気キャラは登場しない。

 よって視聴中に琴里がヒートアップすることはないだろう。


「じゃあ本編を見始めるよ」


 ■


 同時視聴とは、読んで字のごとく配信者とリスナーが同じ映画、アニメ、テレビ番組を、同じタイミングで視聴する配信を指している。

 みんなでリアクションを共有してワイワイ楽しく映像作品を見よう! 的なスタイルの配信カテゴリである。

 当然映像作品は権利関係がバチクソに厳しいので、配信画面上に映画などを直接映すことは出来ない。

 許可なくそんなことをやれば良くてもBAN、最悪逮捕だ。

 なので映画やアニメの同時視聴をする際は、現在の再生時間が分かるように配信画面にタイマーを表示したり、配信者と視聴者が同タイミングで再生ボタンを押して視聴を開始したりなどの工夫が必要となっている。


 上記のように視聴者側にもある程度の準備が必要なので、そういう意味ではあまりお手軽とは言えない配信だったりする。

 ナキ的にも、リスナーにいらぬ負担を掛けさせる同時視聴配信はあまり好みではない。

 が、小槌が「昨日が人狼とか高カロリーな配信だったし、今日はダラっとみんなで映画でも見ましょ」と提案してきたので、仕方なくそれを受け入れることにした。

 合宿中の配信内容を提案性にした弊害とも言える。

 それはそれとして映画本編の始まりだ。


「はい、よーいスタート」


 タイマーと再生ボタンを続けざまにクリックする。

 ネット回線の向こう側ではリスナーたちも再生ボタンを押していることだろう。

 そんな想像を膨らませながら、ナキは映画に集中することにした。


「姫ちゃんは原作もテレビアニメも見たことないんだっけ」


「ですわ」


「まあでも、この映画シリーズは毎回冒頭で設定と主要人物の紹介してくれるから、初見でも多分大丈夫だと思う」


 小槌の言う通り、冒頭の意味深なシーンが終わると同時に、ナンコおなじみのテーマ曲が流れてきて設定紹介が始まった。


 主人公である女子高校生探偵の江藤乱は、ある日幼馴染で同級生のボーイフレンドと動物園に遊びに行って、白づくめの男の怪しげな取引現場を目撃。取引に夢中になっていた乱は、背後から近付いていたもう1人の男に気が付かずに殴られ、怪しげな薬を飲まされてしまい――気が付いたら身体が縮んでしまっていた!

 奴らに江藤乱が生きているとバレたら、周囲の人間にも危害が及んでしまう。

 それを恐れた乱は、咄嗟に名前を神田川ナンコと名乗り、父親が探偵をやっているボーイフレンドの家に姪っ子として転がり込む。

 そしてへぼ探偵の彼氏の父親に代わり、様々な事件を解いていく。

 というのがナンコの大体の設定である。


「小さくなる薬……つまり若返りの薬ということなのでしょうか?」


「にゃンコが小さくにゃれたのはたまたまで、それ以外の薬を飲まされた人間は大体死んでるけどね」


「なるほど。わたくしのお父様も昔似たような薬の研究をしていたらしいですが、やはり強力な薬には強いリスクが付き物なのですね」


「にゃんか今さらっと凄いこと言わにゃかった?」


「?」



 ――建物が爆破され、現場にはトランプのキングが置かれているシーンが映る。



「1作目からボンボン建物爆破してるわよね」


「ナンコ映画ではとりあえず建物爆破しとけみたいにゃのがあるから」


「エンタメ重視ですから」


「なぜトランプが? 先が気になりますわね」



 ――少女探偵団のぽっちゃり少女元子が、立派なビルを前に「すっげー」と言うシーンが流れた。



「あっ……」


「このビル終わりましたね……」


「?」


「姫様に解説すると、元子がすっげーって言った建物は大抵爆破されたりして跡形も残らにゃいってネタにされてるの」


「なるほど?」



 ――犯人によって次々に爆破されていく建物。爆破された現場にはやはりトランプが置かれており、現場に置かれていたトランプと同じ数字が、爆破された建物の名前に入っているとナンコが推理。次の爆破のターゲットが、ボーイフレンドが遊びに行っている海洋娯楽施設だと判明。ナンコがハワイでお袋にならったヘリの操縦技術を活かして現場に急行する。



「手に汗握る展開ですわね……!」


「姫ちゃん普通に映画楽しんでて和むわね。あたしなんかネットミームに侵されてるから色んなシーンがネタにしか見えなくなっちゃって」


「ヘリの操縦とか銃の打ち方とかハワイで教わりすぎにゃんだよね」


「犯人の犯行動機とかも結構アレよね。自分の建築した建物が左右非対称じゃないのがストレスになって、それが原因で味覚障害になってお気に入りのワインの味が分からなくなったからって」


「まあでもこの頃の映画はちゃんと探偵してたしにゃんだかんだ好きだよ。最近のはアクション寄りすぎてちょっと……そもそもあんま見てにゃいけど」


「見てないの!? 勿体ないから見た方が良いよ! ここから寝ずに全作見よう!?」


「琴里ちゃんって興奮するとキャラ変わるわよね……」



 ――『らぁああああああん!』『しんじぃいいいいいいいいいいい!』



「おっ、出た」


「こいつら毎回叫んでるよね」



 ――ワクチンの効果で一時的に大人の身体に戻った乱が、得意の空手で機械仕掛けのサイボーグと化した犯人をボコボコにしていく。最期は天高く蹴り上げられた犯人が、夜空で大爆発して大団円を迎える。



「にゃん回見ても最後のバトルシーンは激熱だにゃあ」


「機械仕掛けの標的って犯人自身のことを指していたのよね」


「昔の映画も良いですね、私は青井さんが出て来る最近の映画の方が好きですけど」


「素晴らしい映画でしたわ」



 こんな感じでそこそこ全員楽しみながら、アニメ映画の同時視聴配信は終わったのだった。

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