【リズム地獄Remix】にゃにゃにゃにゃにゃー♪【薙切ナキ/FMK】
【リズム地獄Remix】にゃにゃにゃにゃにゃー♪【薙切ナキ/FMK】
「にゃにゃっにゃー、にゃにゃにゃにゃにゃー、にゃにゃっにゃー、にゃっ、にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃー、にゃにゃにゃっにゃにゃ、にゃーっにゃー」
FMKの配信専用スタジオに『にゃ』が蔓延していた。
溢れすぎて『にゃ』がゲシュタルト崩壊を起こすくらいには『にゃ』だらけになっていた。
発生源はFMK所属VTuberの薙切ナキだ。
現在ナキは大人気リズムゲーム[リズム地獄]を実況配信しているのだが、『にゃ』でリズムを取っているためにこのような猫々しい音声になっているのであった。
「にゃーにゃ、にゃにゃにゃにゃ、にゃーにゃ、にゃにゃにゃにゃ? にゃーにゃ、にゃにゃにゃにゃ、にゃーにゃ、にゃにゃにゃにゃ! にゃーーーにゃっにゃにゃにゃ? にゃーーーにゃっにゃにゃにゃ! にゃーんっにゃーにゃーにゃーんっにゃにゃ? にゃーんっにゃーにゃーにゃーんっにゃにゃ! みすった。にゃーーーん、にゃーーーんにゃにゃ? にゃーーーん、にゃーーーんにゃにゃ! にゃーーーーーん、にゃにゃにゃにゃ、にゃにゃ? にゃーーーーーん、にゃにゃにゃにゃ、にゃにゃ! にゃっにゃにゃにゃっにゃっにゃ、にゃにゃ? にゃっにゃにゃにゃっにゃっにゃ、にゃにゃ! にゃー……にゃ……にゃー……にゃ、にゃにゃ? にゃー……にゃ……にゃー……にゃ、にゃにゃ。 にゃーーーーーーにゃ? にゃーーーーーーにゃ。クリア!」
〈にゃーにゃー言っててかわいい〉
〈にゃにゃにゃ〉
〈この配信にゃしか聞こえない〉
〈にゃーしか言えんのかこのネコぉ!〉
〈ミスった時に素に戻るの草〉
〈かわいいなぁ〉
金廻小槌ch.:〈ナキちゃんちゅき♡〉
〈うわでた〉
〈小槌もよう見とる〉
〈小槌さん、ナキちゃんに付きまとうのやめてくれませんか〉
どうでもいいのだが、最近ナキの配信に小槌が堂々と湧くようになってきた。
構うと付けあがるので(1敗)、ナキも基本的には小槌には触れないようにしている。
触ると火傷する女なのだ、小槌は。
そこそこ難易度の高いステージをクリアした所で時計を見ると、時刻はもう23時半。
明日も日曜で学校が休みとはいえ、流石にそろそろ配信を切り上げて家に帰らねば、現役女子高生として色々とマズイだろう。
深夜帰りを頻繁に繰り返していたら、基本的に家に帰って来ない両親はともかくとして、ご近所さんに変な噂をされかねないし。
「さて……もうちょっとやってたいけど、変にゃやつも湧いてきたし、今日はここまでにしようかにゃ。みんにゃまたねー♪」
〈おつにゃー〉
〈にゃー〉
〈やっぱり不仲じゃにゃいか〉
まだ遊びたい欲を抑えつつ、ナキは配信終了ボタンを押した。
同時に薙切ナキの仮面を外して、西表瑠璃の仮面に付け替える。
「ふぅー……
呟いてから、猫語が完全に抜けきっていないことに気が付く。
あまりにもにゃーにゃー言いすぎていたせいで、口がにゃの形になってしまったのかもしれない。
「あぶにゃいにゃ、これ……。日常生活でうっかり出ちゃったら確実に笑われる。気を付けにゃいと」
言ってるそばから『にゃ』が口から零れてくる。
まあ明日になれば直っているだろう。
それまで誰とも口を聞かなければ良いだけだ。
そう結論付けて、瑠璃はその後一言も口を開かずに事務所を後にした。
■
「大変ですわ、瑠璃様が猫になってしまいました」
日曜の朝。
いつも通りに事務所に顔を出した俺を、幽名が深刻そうな雰囲気で出迎えて来た。
幽名は来客用のソファに座っており、その膝の上には瑠璃が身体を丸めて寝そべっていた。
ゴロゴロと猫のように喉を鳴らしながら。
「……なにふざけてるんだ?」
「シャー!」
「うお」
声を掛けると瑠璃が威嚇してきた。
ヤバイ、本当に猫になっている。
自分を猫だと思い込んでいる精神異常者だ。
「あー、何故こんなことに?」
「分かりません……今日は朝から一緒にショッピングに行く予定だったのですが、瑠璃様が事務所に姿を現した時には、もう……」
「こうなっていたと」
「はい。恐らくは、猫化した状態でもわたくしとの約束だけは覚えていて、その記憶だけを頼りにここまで来れたのかと」
「なるほどな……」
……いやいや。
何がなるほどなんだか。
俺も朝が強い方じゃないからまだ頭が覚醒しきってないな。
そして瑠璃はそれ以上に寝惚けてしまっているらしい。
「ほら、馬鹿やってないで目を覚ませ瑠璃」
「ヴゥウウウ! ニャー!」
「いてっ! 引っ搔くな馬鹿!」
コ、コイツ……!
幽名には懐いているクセに、俺が近付くと容赦なく攻撃してきやがる……!
完全に理性無き獣と化している。
何故こんな……いや、原因はともかくとして、元に戻す方法を考えた方が良いだろう。
しかしどうやって元に戻す?
こういう時に頼りになりそうな七椿は、生憎と今日は公休だ。
お仕事ロボットな七椿にだって私生活はある。
こんなワケの分からない事件のために、休日返上で事務所に呼ぶのも可哀想だ。
だとすると他に役に立ちそうな人間は……。
「ハナシは聞かセテ貰ったアルヨ!!」
ちょうど良いタイミングで蘭月が事務所に乱入してきた。
しかも説明不要の、話は扉の外で聞いていたパターンだ。
手間が省けて助かる。
「フムフム……症状ヲ見たトコロ、どうやら強力なジコアンジに掛かってしまってイルみたいネ」
「自己暗示?」
「ソウネ」
チャイナ服を着た自称闇系の何でも屋は、瑠璃が猫になっている原因を一目で看破したらしい。
しかし自己暗示ね……鏡に向かってお前は猫だとでも言い続けたのだろうか。
いや、そんなことをしなくても、暗示に掛かりそうな要因はあるっちゃあるか。
「まさか配信で『にゃ』を言いすぎたせいでは?」
幽名が顎に指を添えた名探偵みたいなポーズで推理を披露する。
本当にまさかって感じの理由だが、俺にもそれくらいしか思いつかない。
「そういえば、昨日の瑠璃の配信はいつも以上ににゃーにゃー言ってたな」
「ソレのせいでジコアンジに掛かってしまったというコトネ」
マジかよ。
なんてことだ。
「元に戻す方法はあるんですか、先生」
「ダレが先生アルカ。元に戻す方法ならアルヨ」
「おお、じゃあ手っ取り早く頼む」
流石は闇の住人。
こういう頭のおかしい事態にはこの上ないほど頼りになる。
「ジコアンジを解くのにイチバンお手軽ナ方法ハ、やっぱりショック療法ネ」
言って、蘭月が懐から鉄扇を抜いた。
おいおい。
「ケガはさせるなよ!」
「ワカッてるヨ。ちょっと小突いテ気絶させるダケネ」
大丈夫かな……不安になってきた。
嫁入り前の妹の身体に傷でも付いたらどうしよう……。
俺が狼狽えている間に、蘭月はジリジリと瑠璃へと間合いを詰めていく。
そして――
「シィッ!!」
「ニャっ!!!」
蘭月が鉄扇を振りぬいた瞬間、瑠璃が猫のような身のこなしで跳躍した。
自己暗示を解くための一撃は空振りに終わる。
「ニャ」
跳躍した瑠璃はそのまま事務室の入り口に着地。
そして開けっ放しになっていた扉から外へと逃げて行った。
「しまったネ、逃げられたアル。アンジに掛かってイルせいで、身体能力のリミッターが外レテいたようネ」
「言ってる場合かよ! 追いかけるぞ!」
「わたくしも行きますわ」
あんな状態の瑠璃が外で暴れたら大変なことになる。
早いとこ捕まえなければ。
俺と幽名と蘭月は、大慌てで事務所を出て瑠璃の後を追った。
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