第6話 二匹の魔獣

 森の中をしばらく進むと、朽ち果てた屋敷が現れた。

「こ、これは?」

「先日の事件の犯人のアジトですよ」

 ダイトが平然と言う。


 二人が屋敷の中に入ると、そこで見た光景に二人は絶句する。それは死屍累々の死体の山だった。死体はみんな首を切り落とされていた。そして壁には文字が大量に書かれていた。その文字の意味は二人にはよくわからなかった。


 イッコたちはダイト男爵に案内されて奥の部屋に向かった。そしてダイトは部屋の扉を開けると言った。


 ――ガチャリ! 扉が開き中から声が聞こえた。


 その声は女の声だった。

 部屋の中は薄暗く、よく見えなかったが、女はこちらを振り向いた様だった。しかしそこでまた声がした。女のものではない声が部屋の奥から聞こえてきたのだ。


「こ、これは?!」

 イッコがダイト男爵に尋ねると

「奥には隠し部屋があるのです」

 そう言ってダイトはイッコたちを案内した。


 ダイト男爵は二人を引き連れたまま一番奥の部屋に入ると

「さあ、ここが目的地です。国家情報保安局のお二人にご紹介いたします」

 ダイトはにっこり笑うと二人に言った。


 目の前の光景が信じられないものが広がる。

 部屋の奥には貴族風の女が一人座っていた。しかしその手足は鎖でつながれていて、まるで罪人の様だった。それだけなら良かったのだが問題は女の両脇に座っている者たちだ。それはどう見ても人間ではなかったからだ。一匹はまるで猫の様な見た目をしていた。だがその姿は歪んでいた。体はところどころが不規則に歪んでおり、尻尾は途中で切れていた。そしてもう一匹は犬の様な見た目だったが、体が溶けていた。まるで腐ったかのように体が崩れかかっていたのだ。


《さぁ、それではお楽しみください》

 二人が呆然としていると後ろから声がした。それはダイト男爵の声だった。


 扉が閉まると同時に女の横に座っていた者が襲い掛かってくる。

 イッコは呪文の詠唱をはじめ、ホリは両手にナイフを構える。

 その時だった。


 ――ズシャ!

 何かが切り裂かれる音がした。見るとホリの両腕に獣の爪痕のような傷が現れる。

 そして一瞬遅れて血が噴き出した。


 ――ドサ!

 ホリが倒れる。


(な、なに? あの傷!)

 すぐさまイッコが呪文を唱える。すると女の両脇に座っていた獣人たちが炎に包まれた。二匹の獣は悲鳴を上げながら燃えていく。しかし女は不敵に笑いながら言った。


《そんな魔法効きませんよ》

 炎が晴れると二匹の獣はまだ立っていた。そして女を守る様に立ちふさがる。その姿を見てイッコは恐怖を感じた。

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