第4話 魔獣大襲撃時代の魔石
「んで、どうなったんだ?」
「いや、だからあ、言ってるじゃないっすか、いくら聞き込みしてもそんな店はなかったんですって」
「なんか他になんか気になった事はなかったか?」
「そうすねえ、ツノダさんが捕まる前の日にあの通りの店に盗難未遂事件があったって話くらいっすねえ」
「盗難未遂だ?」
ニッタの話では、殺人事件の前日、通りの宝飾店に何者かが押し入った形跡はあったものの何も盗まれた形跡がなく被害がなかったということだった。
「それだな」
「え? どれっすか?」
「ツノダさんを嵌めた奴らの仕業だ」
「ちょっとまってくださいよ、全然わかんないっすよ」
「犯人は宝石店に強盗に入ったんじゃねえ。装飾品を足したんだよ」
「足す? 何をっすか?」
「ああ、『ツキモノ』だよ」
ハルキはニッタにそう言うと、足早に通りに向かい始めた。
「待ってくださいよお、ハルキさーん!!」
▽▲▽▲▽▲▽
通りの宝飾店は夜になると明かりが灯る。店の中には数人の客がいて、ショーケースにはいくつかのアクセサリーや小物が並べられている。強盗が入った影響はないらしい。ハルキはゆっくりと店の中に入るとカウンターの中の男に声をかけた。
「おっちゃん、この店が強盗に襲われたそうじゃねえか、よかったなあ、何も盗まれなくてよ」
「ん? なんだね君は。いきなり」
ハルキは銀の懐中時計を見せ自らがイレイサーであることを示す。
ハルキはそう言いながら懐中時計をカウンターの上に置くと男に見せる。
男は目を輝かせながら「すごい」とつぶやきながらしばらく時計を観察した。
「おっちゃん、そんな物よりさ、聞きたいことがあるんだけどよ」
ハルキの言葉に男が顔を上げた。
「なあ何も盗まれてなかったんだよな?」
「え、ええ。幸いなことに何も盗まれておりませんでした」
「ほーん。で、置いて行かれたものは何だったんだ?」
「は? 何のことでしょう?」
「ま、そうなるよな」
「どういうことです?」
「おっちゃん、今から大事なことを話すからよ、ちゃんと聞いてろよ」
男は首をかしげる。ハルキは構わず話し始めた。
「おめえらが黙って自分たちの懐に入れて売っちまった物が『ツキモノ』だったんだよ! 宝飾商ならわかんだろ、国家情報保安局も動き出すぞ」
「な、なんですって?! そ。それは」
「ああ、もうこの店もおしまいだって事だな」
「な、なんとかならないんですか?! 私どもはただ」
「ああ、ただ置いて行かれた物を売っちまっただけだよな」
「ええ。そうですとも。なんとか、何とか穏便に」
「っち。んで? 何を売ったんだ?」
「は、はい。お売りしたものは旧王国、約八百年前の魔獣大襲撃時代の魔石を装飾したブローチでございました」
「なんだと?! 魔石だと?」
「はい。魔石を装飾したブローチでございました」
「なんでそんな物が、残ってんだよ!」
ハルキは男の胸ぐらをつかんだ。
「なんだぁ? おめえ、よくもまぁぬけぬけとそんなふざけたことが言えるなぁ」
「ひいいいい。すびばせん。どうかお許しを~」
男の情けない声に周囲の目がハルキたちに集まる。ハルキは舌打ちをして男を解放した。
ハルキはため息をひとつついてから、言った。
「おいニッタ! イッコのところだ、急ぐぞ!」
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