Ⅳ「取引と了承と出発進行」

「それで? その【オートクレール】さん? はこの俺に一体何用で?」

『呼び捨てで構いませんよ。サクヅキ=オウカさん』

「俺も呼び捨てでいい」


 そういう訳で、取り敢えず『オウカ』、【オートクレール】と呼び合う事になった。

 そして、【オートクレール】は、


『私と取引をしませんか?』


 自分の要件を告げた。


「……取引?」


 曰く、彼女(<冥刀>の自意識の性別は全部が女性)は一本の剣だったそうだ。だが、能力の危険性から分割されてしまった。だからこそ妙な長さとなっているのだろう。


『私は元に戻りたいのです』

「それに……力を貸せ、と?」

『はい』


 分割されそのパーツから、<冥刀>が幾本も作られた。しかも強力な使い手が所持している場合があるとの事。


『取り戻すためには戦う必要もあるでしょう』

「だろうな」


 相槌を打つオウカ。全てとは行かないが、意見や道理を押し通すには、力が必要な事があう。


『だからこそ、私の使い手になって欲しいのです』

「!」


 先程と比べ物にならない驚きが、オウカを襲う。完全に渡りに船。だが、どうにか冷静さを取り戻し、


「……質問いいか?」

『かまいません』

「何で俺? 他にも良さそうな人はいるだろう?」


 上手い話には裏がある。只より高い物はない。

オウカはそこまで強い訳ではない。凄まじい戦闘技術を持つ訳でもない。彼の問いに、


『相性が良さそうだったからです。実際良さそうですし』


 <冥刀>は持ち主を選ぶ。昔は、オークションで高額で競り落としたのに、使えないという事例が何度かあったそうだ。今では事前に相性を確かめる。


「なるほど。要するに、俺に使い手となって、分割された体を取り戻して欲しいと?」

『はい。取り戻した暁には……貴方の刃となりましょう。Win-Winのはずです』


 確かにそうだ。だが、何か嫌な予感と違和感がある。だが、それでも今は、


「わかった。協力しよう」

『ありがとうございます!』


 オウカは頷いた。それしか道はない。

 その言葉に【オートクレール】の声が明るくなる。人の顔があれば輝いていただろう。


「で? どうすればいい?」

『では契約を』


 彼女の指示に従い、刃に血を垂らす。血は刀身に吸い込まれる。


『契約はなりました。では出発です!』

「何処h」


 最後まで言えなかった。

 突如、空いた黒い穴に一人と一振りは吸い込まれた。

 これが全ての始まりだった。

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