第2話 陽気な少女は転移する

 しかし、いつまで経っても地面に落ちない。原因を探るためにゆっくり目を開けると自分の体が浮いていた。


「え?ははぁぁ!!??な、なんで、浮いてるのー!!??」


 騒いでいると、目の前の空間が歪み始めた。


「なな、なんなんだこれは!?」


 時間が経つにつれ、縦横2m程の空間の歪みが激しくなり、また雪も激しく降るようになる。


「僕はもう死んだんじゃないのか?え、何どうゆうこと?もう何が起きてるのかわかんないよ!」


 重力に逆らうように浮く体、そして水溜りに雫が落ちて波紋が広がるように歪む空気どれも生きていた地球ではありえないことであった。そんな非現実感から、生は自分が死んでいると考えた。しかし、降る雪のせいで視界は悪いが、目の前には先ほど眺めていた美しい街並みが広がっていた。この景色が現実であるということを知らせてくる。生はそんな非現実と現実の間で葛藤していた。


「よいしょ、よいしょっととと、」

空間から元気な声が聞こえてくる。


「え、なんでなんで、なんで!空間から少女の声が!?」

驚きで開いた口が塞がらない。


「やっほ〜!そこのお兄さん元気してますか〜?みんなのアイドル神さまちゃんだよ!おっと、そんなに驚いてくれるなんて嬉しいなぁ!」 

元気をもらえるようなそんな可愛らしい声だった。


「ちょ、ちょっと待ってください、」

何が何だかわからず、時間を求めた。


「たっく〜しょうがないなぁ。少しだけだよ少しだけ」


 意味が分からない、突然現れたこの少女は一体何者なんだ?

少女のことをよく観察してみると、身長は140cmほどで深緑色のジャンパーを着て茶色のハンチング帽をかぶっている。ハンチング帽から出ている肩上ボブの金色の髪は星のように美しい。顔は、深々と帽子をかぶっているうえ、激しい雪と夜で顔が見えない。


「お兄さんなんでそんなにジロジロ見てるの?まさかお兄さんは世に言うロリコンっていう奴〜?」

少女は楽しそうな声で生に聞く。


「いや、そんなつもりじゃ!…………そ、それよりも!この状況はどういうことなんですか?」


「キャハハハ!まったく焦っているお兄さん可愛いですね〜!そんな可愛いお兄さんに教えてあげましょう」


 そう言うと、結果を発表するときになる効果音がどこからかなった。

「ドドドドドドドドドドドド  ドン!!」

「お兄さんには異世界に行って魔王を討伐してもらいまーす!」と少女は楽しそうに言った。


「は?君が神か何か知らないけど、僕はもう死にたいんだそんなことはしたくない」


「キャハハハ!やっぱり面白いなお兄さんは。人間って生きたいって望むものでしょ?それなのになんでお兄さんは、捻くれちゃってるの?もしかして厨二病?」

本当に不思議そうに尋ねてくる。


「僕は死ぬことが最高の幸せだと思うんだ。今ここに僕がいるのは、死という人に等しく与えられる権利を行使するために今ここにいる。だから、邪魔しないでくれ、」


「え〜そうなの?でも、ごめん〜!もう私お兄さんに不死の能力与えちゃったてへぺろ」


 そう言った時の声色は、確信犯のそれだった。僕は一貫して死ぬって言ってるのに、不死の呪いをかけるなんてこのクソガキは何を考えているのだろう?日本語が通じないのかな?


「お、おい!それは本当なのか?今すぐその呪いを解け!僕は僕は死ぬんだぁ!」

 そう叫んでいる生の目は充血していた。


「呪い?いやいや能力だからねー!不死とか最高じゃん〜!」


「クッ!クソガキ!人の希望を奪うのか!?」


「死ぬことに希望を見出している人にクソガキなんて言われたくありませ〜ん。クソガキって言った方がクソガキなんですぅ〜!あっかんべーだ!」


 死なない怒りが爆発し一気に血が頭にのぼった、生は自分の舌を思いっきり噛んだ。


「あっあああああーーーーああああぁああ〜!!痛いよーー!!」


 無知だった、舌を噛んでもものすごい痛みと出血するだけで死にそうにない。ただ辛いだけだった。


 だが、舌を噛んでから10秒ほどで、舌が再生され初め元通りに戻った。あれほど痛かった痛みが引いていった。これは、あぁそっか、不死っていうのはこう言うことか、何度殺されようとも死なずに元通り回復する。これじゃ、痛いだけで、死ぬことなんて永遠に叶わない。最悪な気分だ。


「どう?不死の力は最高でしょお兄さん?」


「頼む死なせてくれ頼むから頼むから」

 再生したが口に残った血を吐き出しながら言葉を搾り出す。


「死にたい死にたいうるさい!もうそんなに死にたいなら、教えてあげる。魔王を討伐したら虹色に輝く魔石が手に入るから、それで、お兄さんのお望みのことができちゃうよ!どう、簡単でしょお兄さん?」


「そこまで生きろと?」


「それがお兄さんができる唯一の死への道だよ」


 今までのどこかおちゃらけている少女とは違う、真面目に答えている姿を見て、嘘を言っているようには思えなかった。それに、魔王を倒す以外死ぬ道はないことがわかった。

 ここは自分の感を信じてみよう。


「わかった。すぐに異世界に行って魔王を倒して死んでくるよ」

生の気持ちは定まったのだ。


「それなら決まりだね、お兄さん」


「……」

俺は頷いて答えた。


「ちちんぷいぷい開け世界の扉!」


 少女は、手を祈るように組み合わせそう叫んだ。

そうすると、生の目の前に高さ10mもある扉が現れ扉が開いていった。


「大きいな」

驚きで声が漏れた。


「キャハハ!でしょ!私の自慢の扉なんだぁ~!もっと褒めてよお兄さん〜!」

元気そうな声に少し緊張がほぐれた。


 扉が開いていくとそこには闇が広がっていた。


「魔王なんてすぐ倒して、死を叶える」

そう決意を新たにする。


「そっか、頑張ってねお兄さん!」

そう言って生を明るく送り出す。


 闇は生の体を吸収しようとする。その闇の引力に身を任せ生は扉の向こうへと消えていった。


 扉の向こうに生が旅立ったことを確認し、扉を消した。激しく降っていた雪が舞うように降り始めた。少女は地面に降りて、展望台から街を眺めた。


「地球って聞いてた通りほんとにきれい」


 そう小さな声でつぶやいた後、少女は積もった雪にその小さな足跡を残しながらどこかに歩いて行った。



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読んでいただきありがとうございます!! ハート、コメントぜひお願いします!


今回は、文字数ときりのいいところどっちできるべきか悩んできりの良いところで切ってみました。皆さんはどうしているかきになります!

それではまた



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