死にたがり高校生は、異世界で魔王討伐しないと死ねない。〜不死の能力で、自殺は不可能!?魔王討伐しか道はないのである〜
はしもん
第1話 死に恋こがれて
「魔王なんてぶっ飛ばして、生きて帰ろうぜ!」
「あたりめぇだろ!」「うん!絶対ね!」「ほんとバカぁ?当然でしょ!」
「だよなぁ!いくぞ!!!」
「あたぼーよ!」「いっくよー!」「まったくしょうがないんだから、手伝ってあげる!」
カーテンを閉め切った暗い部屋の中で明るい声が響く。その声に、アニメを見ていた青年はため息をついた。
「この勇者達はなんで生きたいなんて思うんだろう」
心からそんな疑問が湧いてくる。同時に勇者達ことをばからしく感じて可笑しくなってくる。
「ハハハ、はぁ、」
世の中では、生きる事が絶対的な善で、死ぬ事は避けたい禁忌であるかのように言われている。僕から言わせれば、死ぬ事は世の中の絶望や孤独さまざまな問題から解き放たれる唯一の救いである。まったく、世界の認識はズレている。
カラスのように深い黒の目と髪をもち、身長は175cmで、痩せ型の青年、佐藤
父、佐藤
「昔の俺はあんなに勉強頑張っていい大学に入ったのに、お前はなんだいじられた程度で逃げて何もせずまるで社会のお荷物だな」
「……くっ!」
「なんだその目は親に向けていいと思っているのか!?」そして殴られる。
母、佐藤
「全く、金だけは減らす穀潰しね〜、ゴキブリよりもタチが悪いわ〜。早く成仏したほうが楽になるのに能無しかしら〜」
「……何か言った?」
「え?何も言ってないけど〜?」とぼけた顔の裏には見え透いたにやけ顔が浮かんでいた。
1歳下の妹、佐藤
「これ色葉が学校にいた時に届いてたよ」
「……」荷物を床に置き階段を登ると、
「やっと届いた!嬉しい〜!」喜びの声が家に響いた。
そんな冷め切った家庭環境がいじめで傷ついた生の心をさらに抉った。
「ふぅ、やっとアニメ見終わった」
そう声に出して、椅子に座って凝った体を伸ばしていると、1階から3人の声が聞こえてきた。耳を澄ませて話を聞いてみると、どうやら自分の話をしている。
「明日ついに精神科病院にあいつをおしつけられる。ふん、清正する。」
「4年間いつも面倒かけられてきたから、明日から気が楽になるわ〜!」
「そんな人いたっけ?笑」
「あらやだ、色葉ちゃんの中ではもうバイバイしてたのね〜!」
「まぁ、そんな感じかな」
「いずれにしても、明日はご馳走にして祝おう」
「そうね、お母さん腕にのりをかけて美味しい料理作るわよ〜!」
「やったー!」
「はぁ、心はこんなにも離れていたのか。仕方ない、もうこの家から消えよう、そして逝ってしまおう」
3人に対してもう家族だとは思っていないが、どこかで繋がっているものだと思っていた。だけど、病院送りの話を聞いてもう完全に繋がりが切れた。いや、現実から目を逸らしていただけで、ずっと前からもう絆などなかった。
思い返せば、学校に行っていた頃は、家族の仲はよかった。スポーツや勉強ができた僕は周りからの信頼も厚く、まさに完璧な少年だったと思う。実際、たくさん告白されたり、たくさん悩み相談を受けたりした。
そんな日々は、突然変わった。中学生に上がり、僕のことを気に入らない人たちが束になりいじめをしてきた。毎日が苦しくて、悲しくて、次第に学校に行けなくなってしまった。その頃から、家族の自分への対応は酷いものになった。おそらく、完璧な息子、兄ではなくなった僕に価値がなくなったから見放されたのだろう。
不登校になってからの4年間は自分がいらないものだと何度も思わされた期間だった。その上、以前の自分とあまりにも違う環境になったことが受け入れられず、現実なのかわからない日々が続いた。
そんな日々で、死ぬことが楽なことだと考え始めるようになり、死こそが救いなんだと考えるようになった。だけど何度か自殺を試みたが、いずれも失敗してしまった。失敗してしまうたびに、自殺への恐怖を抱くようになってしまう。それが理由で、最近は死にたいと思っていても行動に移せなかった。だが、家族の話を盗み聞いて、もう決まってしまった。あんなにも決めかねていたのに、決めるとあっさりと心は開き直り、死ぬことに素直になった。
だから、早くこの家から出てどこかで死のう。早くどこかに行って死のう。死のう、死のう、死のう。
そう考えると近くにあった青色のジャンパーに袖を通しながらすぐに部屋の扉を開けて、玄関へと駆け出した。階段を降りて一階に着くと3人が僕に気づいた。僕はそんな視線などお構いなしに靴を履こうとすると、
「お前、何をしているバカなのか?」
父だった人が顔を赤くしながら俺を睨む
「今まで黙ってきたけど、あなた本当にどうかしてるんじゃないの〜?」
母だった人がいつものニヤついた憐んでいるかのような表情が気持ち悪い。
「…………」この期に及んで無視を決め込むかつて妹だった何か。
どうせ死ぬんだし、大きな声で今まで思ってたこと伝えておこう。一方的に、言われるなんて公平じゃない。そう心の中で決心して言葉を紡ぎ始める。
「おい、糞禿げドメスティックバイオレンス趣味の変態!お前の説教する時の口臭腐った卵をさらに1億年間放置したぐらい臭いんだよ!さっさとくたばって、世の中の公衆衛生に貢献でもしとけ!」
「は!?お前!言わせておけば!!!!」
顔をニホン猿のように真っ赤にさせてかつて父だった何かは、キレる。
「おい、憐れみニヤニヤ顔いつも表情動かしすぎてるせいで皺が深くなってんなぁ!しかも、ぶくぶく太ってまじで豚だろ!あと話し方が普通にキメェんだよ」
「ふざけないで!!そんな、そんな、ことないわ、、」
言われるとすぐ泣くかつて母だった何か。
かつて妹だった何かには、無視でいい。もう関わりたくない。あれ、妹?そんなのいたっけ?
胸にあったものを言い切って、扉を開けて夜の街を駆け出していく。気持ちが軽いどこまでも走っていけそうだ。走っている途中、後ろを振り返っても誰もいなかった。あんなに貶したのに、追いかけてこなかった。それほど僕という存在はあの3人にとって薄いものなのだと改めて認識した。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
荒い呼吸で出る息が白く立ちこみ、そして冬の夜空に消えていく。2分ほど走ったら、疲れて走れなくなった。4年間も家で引きこもっていた体であったうえに、裸足であった。走れなくなるのは当たり前だった。体は雪が吹雪く冬夜の寒さによって冷やされていくにつれて、興奮によって出ていたアドレナリンが引き、冷静になっていく。積もった雪に音が吸収され、まるでこの世に僕1人しかいないようなほど静かである。そして気づいた。この世界に僕と繋がりがある人なんてもういないんだ。もう枷は無いこれで後腐れなく、死ねる。そう、死ねるのだ。ずっと望んでいたことがもうすぐ叶う最高の気分だ。体は凍えるほど冷えているのに心が温かい。
「そっか、死ねる喜びって温かいんだ」
この温かさを失わないうちに逝こう。そう考えると、街を一望できる丘陵にある展望台へと足早に向かう。
そして足早に歩くこと15分、展望台に到着し、あれほど強く降っていた雪はピタッと止んだ。
「綺麗だなぁ……」
街中の建物が白く衣替えをし、夜に光る街の明かりは幻想的だった。そして夜空に輝く星々は、まるでこれから死ぬ僕を祝福しているかのようにピカピカと輝いていた。味わうように周りの空気を吸い込み吐き出す。冬の空気は澄んでいて新鮮だった。
「最高の舞台だ」
死ぬ準備は全て整った。展望台の1.5m程の柵を乗り越えてこれから飛び降りる位置に立つ。そこから下を覗き込むと、およそ高さは50m程ある。雪が積もっていても、十分逝けそうだ。これで、こんな息苦しい世の中から無に変えることができる。
「今までありがとうございました。ふ、ハハハハ」
一応、お世話になった我が星地球に挨拶をしてみた。なんだか可笑しくなって笑いが込み上げてくる。段々と笑いも止まり落ち着いてくる。
「僕、今までお疲れ様」
そう言って、展望台から飛び降りた。
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読んでいただきありがとうございます!! よかったら、ハート、コメントお願いします!!
初めて、小説を書いてみました。なめていました。いやー日本人なら日本語を使って物語を書くなんて余裕って考えてた前の自分の目を覚ましてあげたい。
小説書いている人に対してリスペクトしかありません。これから頑張っていこうと思うので、感想などでアドバイスしていただけたら幸いです。改めて見ていただきありがとうございます。
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