第4話 レイヤー撮影同好会の日常
撮影が終わると二人は奥の和室に向かいブルマから着替える。祟日先生はブラウスにタイトスカート姿となるが、やはりエロい。
あすかは制服姿だ。あれ?さっきよりあすかのスカートの長さが短くなっていないか?簡単な気持ちで聞いてみると。
「あ、これお姉ちゃんの制服なの」
自分学校の制服を持っているとは、やはり、祟日先生は変態だ。エロいな、制服のスカートはパンツが見えそうだ。しかも、あすかはふわふわ浮いているから余計に気になる。
「青龍どの、撮影したらダメかな?」
田中は真剣な顔だ。決して興味本位ではない。真のレイヤー撮影者なのだ。
「コスプレでないのでダメだ」
「やはりそうでござるか」
しょげている田中を見て私はあすかに弱音ハクのコスプレを頼む。
「しょがないな」
と、言いつつ、上機嫌で奥の和室に向かう。そして、あすかが弱音ハクの姿で私達の前に現れると、田中は歓喜の表情になる。
「可憐でござる、可憐でござる」
興奮する田中を見てあすかもハイテンションになる。結果は撮影会の始まりであった。
時々思う、何で生きているのかと。私は深夜コンビニの帰り道で月明りを受けながら。ふと、思う。
そう、私は生きる希望を失っていたのだ。理由は簡単、中学でテニスにハマり。高校一年の時にはインターハイに出場した。そのテニスがケガで絶望的になり、回復する前に辞めてしまった。その後は糸の切れた凧のようになり、結果、レイヤー撮影同好会に流れ着いた。
そんな事を思いながら帰宅すると。
「お帰りなさい、旦那様」
あすかが白い上下のビキニにエプロン姿であった。
「あ、私は今そんな気分でない」
「ケチ」
「あぁ、ケチだ。生きる意味も感じられない、壊れた人形だ」
「旦那様……」
言葉を失うあすかを無視するとスマホを取り出してコンビニで買ったコーラを飲み始める。すると、沈黙の時間が流れて気まずい空気になる。少し冷たくし過ぎたかな。
「なあ、あすか、今日は庭に月を見に行かないか?」
「あい?」
「幽霊のお前には少し気持ちが素直に成れそうだからだ」
「ビキニにエプロン姿で庭に出るなんて旦那様は鬼畜です」
「いやいや、着替えてからだ」
私がそう言うとあすかは制服姿に着替える。ホント、こういうところは素直でいい。
二人で小さな庭に出ると丸い月が輝いていた。少し、夏目漱石の言葉を思い出す。私は喉の先まで出かかった言葉を飲み込む。どうせあすかは知らないセリフだ。
「ね、ねえ、月が綺麗いだね」
「あ、ぁ……」
私はその言葉に固まる。あすかの様子は変化が無い。やはり、あすかは夏目漱石を知らない、ただの偶然だ。
「ところで、私、早く寝たい。部屋に戻ろうよ」
ああああ、いい雰囲気だったのに……。
贅沢を言っても仕方がない。私は渋々自室に戻る。その後、私も寝る事にした。あすかは相変わらず、部屋の中をふわふわ浮いて漂っている。
「また、私の上で寝るなよ、金縛りになる」
「はーい」
部屋の照明が消え窓の外から月明りが差し込む。わかっていた、挫折した感情を恋愛でカバーすると破滅する可能性がある。増して、あすかは幽霊だ。少し眠れない時間が過ぎていった。
今日もレイヤー撮影同好会の部室で撮影会である。祟日先生がチアの恰好でお立ち台に登っている。短いスカートに揺れるバストはセクシーであった。
「あれ?あすかはコスプレしないのか?」
あすかはパイプ椅子座り元気がない。幽霊も風邪でもひくのか?
「どうした?まいふれんど?」
「……」
少し気の利いたジョークを言ったつもりが完全にすべった。
ここはそっとしておこう。
「次はレオタードのコスプレがしたいわ」
「ござる、ござる。興奮するでござる」
祟日先生と田中が盛り上がる雰囲気は私を少し安心させる。すると、祟日先生がお立ち台の上でチアの衣装を脱ぎ始める。
「お姉ちゃん、ちょっと、やりすぎよ」
祟日先生をあすかが制止する。
「そう?下着姿もコスプレの内に入ると思ったのに……」
渋々、奥の和室で着替えるのであった。
うん、変わらない日常だ。何を不安な気持ちになっていたのだろう。私は缶珈琲を取り出してまったりするのであった。
帰り道でコンビニに寄る事にした。秋と言ってもまだまだ暑い日が続く。
「おでんが食べたい」
あすかが始まったばかりのおでんコーナーに張り付く。
「お前、食べたい、食べたいと言っても結局食べないだろうに」
「言ったはずよ、食欲は有るけど、う〇こは出ない」
うむ、質量保存の法則に反する。まるで、ド〇えもんだ。はて、ド〇えもんはう〇こをしないのであろうか?
少し想像してみた。
ヤダなーう〇こするド〇えもん……。なにやら、下品な話になったのであすかにはおでんは与えない事にした。
私はガ〇ガリ君を買うと外に出る。
「おでん……」
「まだ言うか、ホントに食べるのか?」
「確かに、食欲だけの感じです」
認めた、やはり、あすかに食事は必要ない。
「ねえ、頭をナデナデして」
何を突然?
「寂しいの」
私はガ〇ガリ君を食べ終わると、渋々、あすかの頭をナデナデする。ふ~う、これではバカップルだ。
こ
れはこれで気持ちの良い気分になる。
単純な愛もいいものだ。
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