第2話 コスプレ幽霊に好かれる

 そして、レイヤー撮影同好会の部室に戻ると。ナースの姿をした祟日先生がパイプ椅子に座っていた。ピンク色の独特な上着にミニスカートが印象的であった。


「久しぶりだな、あすかも一緒か?」


 感動の姉妹の再会とはいかず、さばさばしたモノであった。


「はい、暗室は暗くて狭いので落ち着くのです」


 暗室の暗くて狭い所が落ち着くとは、やはり、幽霊だ。イヤ先にナース姿の祟日先生に突っ込みを入れた方がいいか。


「おし、もう一着、ナース服が有る、あすかもコスプレするか?」

「喜んで、ナース服に着替えます」


 あすかはナース服を受け取ると奥の和室に向かう。結果、田中の表情は真剣な顔になり。一眼レフカメラを構える。


 こ奴、本物のレイヤー好きだ。


 私が関心していると。あすかが着替えて和室から出てくる。


 ううううう、エロい。とにかく、エロい。エロいと言う表現しか思いつかない。


 その後、二人がお立ち台に上がると田中の撮影タイムとなる。私もレイヤー撮影同好会の一員だ。ここは決心をして、遠くからスマホで撮影するのであった。


 さて、である。あすかなる幽霊にとりつかれたのである。自宅へも憑いてきている。


 今日は母親の仕事が朝番なので帰ってきている。あすかと母親と対面であった。


「青龍ちゃん、彼女ができたの?」


 いやいや……何処をどう説明すれば良いのだ?


「部活の新入生です」

「へー死人を彼女にするなんて罰当たりな関係ね」


 イヤ、だから彼女ではない。


「私達の愛に生死など関係ありません」


 おいおい、嫁と姑の微妙な距離感みたいなことになっているぞ。


「簡単に言えば彼女ではなくお気に入りです」


 何とか関係を説明したいが上手い言葉が思い付かない。


「ま、死んでいるので、籍を入れならないのに、お気に入りなんて、母さん悲しい」


 ああああ、話がもつれるばかりだ。


「とにかく、憑かれた。これから一緒に暮らすのでよろしく」

「確かに食費はかからないわね」

「お母様、祟日あすかです。改めてよろしくお願いします」

「はいはい、青龍ちゃんもそんな年頃なのね。母さん諦めるわ」


 こうして幽霊との同居生活が始まったのだ。


 夜……。


 夕食も終わり、まったりとしていると。祟日先生から預かった袋を思い出す。妹のあすかとの同居生活に必要だからと貰って物だ。


 早速、開けてみると。


「……」


 それは『弱音ハク』のコスプレ衣装であった。レイヤーさんの間では根強い人気のある衣装だ。


「これで初夜を向かえるのですね」


 違う!!!幽霊との初夜など怖くて出来るか!!!


 あすかの呟きを全力で否定する。


「嫌なの?それとも腐れチ〇ポは立たないの?」


 あああああ、下品な事を言うな!これでも健全な男子高校生だ。


 それでも、結果、あすかは弱音ハクのコスプレを始める。緑色のウイックに胸を強調したテクニカルな上着、これまた短いスカートであった。


「青龍、来て……」


 アホか!だから、幽霊などとエッチが出来るか!


「なら、撮影してよ」


 あすかの言葉に迷いを感じる。レイヤー撮影同好会に入ったのも挫折をしたからだ。本気で打ち込んだモノができなくなる。それは苦痛などと言う簡単な言葉ではなかった。


「イヤ、撮影はしない、お前を見ていると昔を思い出す」

「ケチ……」


 その後、あすかは適当にスマホで自撮りをして元の制服姿に戻る。


 ふ~う、一段落か……私はベッドに入り寝る事にした。


 すると、あすかが目の前でぷかぷか浮かびながらこちらを見ている。


「頼むから私の上でリラックスするのは止めてくれ」

「えへへへへ、この恋は本物だよ」


 と、言って横に移動する。


 恋か……バレンタインデーが嫌いな私にとって心に刺さる言葉であった。

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