第18話:結果報告
暗い道を歩き、セシリアの待つヴォルテルス公爵邸にたどり着くと、アレクサンデルの緊張した体からようやく少しだけ力が抜けた。
ロドルフと共に、セシリアの部屋のベランダへと飛ぶ。
普通に考えると不用心に思えるが、そもそもヴォルテルス公爵家の敷地内に入るまでが恐ろしく大変であり、悪意ある者が弾かれる魔法陣も設置されている。
それでも通常は侵入者に対して、何かしらの警報装置が作動するのであろうが、セシリアが迎え入れているので許されているようだ。
ベランダに着いた二人は、極小さなノックをする。
もしもセシリアが寝ていたら帰る、と決めているからだ。
気遣いも杞憂に終わったようで、ベランダの扉が開き、セシリアが二人を迎え入れた。
「こんばんは」
優しい笑顔で出迎えるセシリアは、少しだけ疲れた顔をしている。
「セシィ、疲れてない? 大丈夫?」
アレクサンデルがセシリアの様子に気が付き、頬に触れる。
「フフッ、大丈夫ですよ。ちょっと学校で色々あっただけです」
笑顔ではあるのだが、言いたい事を我慢しているような、どこか遠慮している雰囲気だった。
その様子に、昼間の王太子が何かセシリアにしたのだろう、とアレクサンデルは唇を噛んだ。
いつものようにコップと水にいれるお菓子、それから軽く摘めるクッキーを手に、セシリアはローテブルとソファの置いてある場所へと歩いて行く。
アレクサンデルとロドルフは、セシリアに促されてソファへと移動した。
前回と同じようにロドルフの横に座ろうとしたアレクサンデルは、ロドルフにセシリアの横に座るように言われる。
「前にお二人が揃って居る方が話しやすいので」
ロドルフは表情を変えず、淡々とした様子で指示をする。
子供の頃の授業のようだと、アレクサンデルとセシリアは、顔を見合わせて小さく笑った。
セシリアの魔法水とお菓子で作った飲み物を飲んで心落ち着けた後。
ロドルフが小さく咳払いした。
これから真面目な話をするので、きちんと聴きなさい、という合図だ。
「私の調べた事を報告します」
ロドルフの言葉に、アレクサンデルとセシリアの背筋が伸びる。
「まず、アレクの部屋のセシリア様の荷物ですが、入学式の日には姿絵を、翌日には全てを片付けるようにアレクが命令しました」
アレクサンデルは驚いて目を見開き、セシリアはそのアレクサンデルを見た。
「ただし、その様子は余りに違ったとメイドは証言してます」
固まって動かない二人に気付いてはいたが、ロドルフは説明を続ける。
「様子が変わる前、アレクはフラート卿と魔女に会いに行っていました」
「魔女?」
聞き返したのはセシリアだ。
アレクサンデルには、その余裕が無い。
「はい。相手は忘却の魔女と呼ばれる、封印魔法の使い手です」
「……封印魔法」
今度はアレクサンデルが言葉を口にした。
部屋にあった魔法の本は、封印魔法のページが開かれていた。
忘却の魔女。
記憶や能力、そして感情の封印を得意としている魔術師だと、ロドルフは告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます