第13話:意外な話
セシリアが聞いたのと同じ目覚めた時の話を、アレクサンデルはもう一度ロドルフへと説明していた。
セシリアと違うのは、ロドルフが中等学校入学当日のアレクサンデルの行動を知っている事だ。
「その日から変わった事といえば、下位貴族を側近にする案が議会を通り、フース・フラート子爵令息が側近候補として加わったくらいですね」
ロドルフの言葉に、アレクサンデルがそうだったかも、と頷く。
「彼は1つ上だからか、とても、その、経験が豊富のようだったよ」
頬を染めて下を向くアレクサンデルを、セシリアは首を傾げながら見つめた。
学校での王太子の様子を、セシリアがロドルフへ説明する。
「膝の上にスピッヘル伯爵令嬢が乗るのは、もう皆が見慣れてしまって誰も驚きませんわ」
淡々と話すセシリアに、ロドルフも感情の無い返事を返す。
その様子を見て、3年という月日をアレクサンデルは感じていた。自分の知っている二人とは違う、どこか冷めた大人の対応。
「おそらく入学式当日に、親密な関係になっているでしょう」
ロドルフの言葉に、驚いて立ち上がったのはアレクサンデルだった。
「僕の初めては、セシィが良い!」
叫んだアレクサンデルの口を、ロドルフが立ち上がって慌てて塞ぐ。
「良いとか悪いとかでは無く、事実として受け止めなさい。あの日貴方は、スピッヘル伯爵家から夕方になって帰って来ました。湯浴み係のメイドから、情事の跡の報告もなされました」
目を見開いた後、泣きそうな顔になったアレクサンデルは力無くソファに座った。
対してセシリアは、予想通りだと視線を落としただけだった。
「入学式当日の行動を、もう一度調べ直しましょう」
ロドルフの言葉に、アレクサンデルは「嫌だ!」と拒否の声をあげる。さすがに先程のような大声は出さなかったが、表情は泣きそうになっていた。
「言葉足らずですみません。調べるのは、中等学校の入学式当日の行動です」
ロドルフは軽く頭を下げた。
それに安堵したアレクサンデルは、チラリとセシリアを見た後に口を開く。
「それならば、当日の記憶はあるよ。調べるなら翌日……かな」
「まぁ! そうなのですね、アレク様! それならば当日のお話をうかがってもよろしいですか?」
セシリアが言うと、アレクサンデルは頬を染めながら視線を落とす。
「僕の事……軽蔑したりしないでね。お願いだよ、セシィ」
どこか歯切れの悪い物言いをするアレクサンデルだったが、セシリアに「大丈夫ですよ」と微笑まれて、渋々ではあるが話し始めた。
中等学校入学式の後に、幼等学校から一緒だった同学年の側近候補達と、中等学校から側近候補となった一学年上のフース・フラート子爵令息との顔合わせが行われた。
この日、同い年の者達も側近候補に確定した。それまで表向きは、単なる友人だったのだ。
学校内にある個室で行われた顔合わせは、当初は真面目な話だったが、そのうちに年頃の男子生徒らしい話へと脱線していった。
幼等学校には女子生徒が居なかった。
入学式で大勢の女子を見たせいで、そういう事を意識したのも大きかったのだろう。
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