第13話

「どういうこと? 何言ってるの?」


 たぶん、10秒くらい沈黙の時間が流れたと思う。

 こんな曖昧な表現になってしまうのは、この時間がとても長く、重たいものに感じたからだ。


「やめたほうがいいって……なんで?」


 ただただ疑問を投げかけているようだ。

「なんで?」、「どうして?」と純粋な疑問。それが澄佳の好きなところでもあるのに、今はなぜか私を苛立たせる材料にしかならない。


 ああ、どうして、どうして私はこんなに変わってしまったの?

 私はただ、あの学生の頃のように、澄佳と過ごしたいだけなのに。しょうもないことで喧嘩して、泣いて、笑って。そんな日々があれば私は十分なのに。


 なんで、どうして。

 どうしてわかってくれないの。



「ねえ、まのちゃん__」


「なんで!? なんで男なんかつくったの!? 私じゃダメだったの!? 私はずっと、ずっと澄佳のこと想っていたのに、なんでわかってくれないの!! 澄佳だけはほかの子は違くて、私をわかってくれると思ってたのに。結局、澄佳も莉奈と同じじゃない!!」


 今話してる言葉が本心なのかもわからない。

 今まで溜めてきた澄佳への苛立ちが、爆発しただけ。ただの八つ当たりだ。


「私がいないと何もできないとか言っておきながらさあ、どんどん私の知らないところに行っちゃうしさ。一々一々、他人のご機嫌を取るような行動ばっかして、正直ウザいし__」


 ほらまた。

 また繰り返す。

 私がばかだから。

 ああ、もう、ほんとに、


「きらい」

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好きでした。いいえ、大好きです。 蒼下日和 @Azure07

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