第11話
「へぇ、まのさん、〇〇大学の教養学部なんですか! すごいですね、都内有数のエリート学部じゃないですか!」
言われ慣れた誉め言葉。それに、「澄佳と同じ大学だ」なんてくっつける。
「ええ、まあ、偶然志望校が同じだったんですよ。でも悠誠さんの方がすごいじゃないですか。△△大学なんて」
「そんなことないですよ。僕は指定校推薦なので」
合コンとかでよくある会話。いわゆる世間話をしていた。
しばらく話して分かったことは__
隙が全く無いこと。
完全にキャラを作っているのか、これでもかというほどに隙が無い。
すべての言動が女子に対する模範解答みたいだ。
飲み物は持ってくるわ、カラトリーを差し出すわ、相手をおだてるわ。慣れてる。
一見したら、彼はただのエスコートができる好青年だろう。
「そんな優良物件、どこで見つけたの? どうやって落としたの?」「うらやましいなあ、うちの彼氏にも見習わせたーい」「大事にしなよー」なんて反応が正しいんだろう。
でも、なぜだか癪に障る。
気持ち悪いくらい完璧なエスコートも、気持ち悪いくらい精巧につくられた笑みも、私を苛立たせる材料にしかならない。
一度、澄佳と話がしたい。
私はカバンからスマホを取り出すと、机の下で、ばれないように澄佳の連絡先を開く。
『ごめん、急にアレきちゃった。持ってない?』
澄佳の携帯が振動する。
そして、メッセージを確認すると、ほんの少し目を見開いた。
『持ってるよ。えっと、一緒にトイレ抜け出そうか』
そのメッセージを確認すると、澄佳が立ち上がった。
「ごめん、お手洗い行ってくるね。まのちゃんも行く?」
「うん。すみません、失礼しますね」
「いえ、何か飲み物でも頼んでおきましょうか?」
「あー、大丈夫です」
「行こっ、まのちゃん」
抜け出し成功。
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