第7話

「今日、彼氏がねー」


「__でね、彼氏がプレゼントくれたの!」


「今度デートなんだ」


「彼氏の誕プレって何渡すのが正解?」


 女子校にいた反動なのかな。

 澄佳はそれはそれは彼氏にべったりだった。



 私の中でその彼氏は「澄佳を奪った大嫌いな人」って位置付けだったから、そんな彼氏の話ばかりする澄佳にイライラして、嫌気がさしていた。


「ねえ聞いてまのちゃん! この間デートしたときに彼氏が__」


「うるさいな!!」


 私にはそんな顔したことなかったのに、出会って数ヶ月の男にはするんだね。

 お気に入りのおもちゃを取られた子どもみたいに、私は拗ねていたんだ。


 気が付けば大声を出して、澄佳を拒絶していた。


「ち、ちがう……ぇっと」


 澄佳に怒ってなんていない。私が悪いの。ごめん、ごめんなさい。そんな顔しないで。


 声に出して謝りたいのに、喉の奥が絞められているかのように声が出せない。

 ただ口がはくはく動くだけだ。


「ごめんね。彼氏の話ばっかりでウザかったよね。ほんとごめんなさい」


 そう、申し訳なさそうに笑った。


 その顔を見た瞬間、罪悪感が一気に押し寄せてきた。

 澄佳は悪くないの。なんでよ、謝らないでよ。そんな風に笑わないで。これ以上、私の心を壊さないで。



 いてもたってもいられなくなった私は、その場を走り出していた。

 何とか声に出せた「ごめん」という小さなつぶやきを残して。

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