第2話

「ねー、まのちゃん。まのちゃんって恋人とか気になる人とかいないの?」


 アイスティーにガムシロップを入れ、くるくると混ぜながら澄佳が私に問う。

 まるでなんてことない世間話、とでもいうような物言いだったけど、私は胸がちくりと痛んだ。


 ここで「私が好きなのは澄佳だよ」なんていえたらどんなにいいことか。


「あんまり恋愛とかに興味ないんだよね。ほら! 今は推しで手一杯っていうか」


「ふーん……」


 つまらない、とぶうたれた表情をする。


「澄佳は、いるの? 気になる人とか」


 息が詰まりそうだ。

 もしこれで、いるだなんていわれたら。


 ドクドクと心臓がうるさいくらいはねる。

 膝の上に置いている手をぎゅっと握りながら、澄佳の答えを待った。

 やけに時の流れが遅く感じる。それにしても澄佳の答えが遅くないか?

 まさか……!


 なかなか答えがおりてこないことに違和感を持った私は、ゆっくりと澄佳を見た。


「っ!」


 そこには、顔をそっぽに向け、顔をかわいらしく赤らめる澄佳がいた。

 うそ、でしょ。


「……うん。いる」


 瞬間、パキンとガラス板のように世界が崩れた気がした。


 なんで、うそでしょ、失恋? 私の恋はここで終わり?

 いやだ、誰かのものになった澄佳なんて見たくない。なんでよ、私、ずっと一緒にいたのに。


「バイト先の先輩に一昨日告白されてね、まだ返事してないんだけど」


 いやよ聞きたくない。


「前々から気になってたとかじゃなくて、ほんとにただの先輩のつもりだったんだ。けど、告白されてからなんか意識するようになっちゃって」


 お願い澄佳、私から離れていかないで。


「早めに返事しないとなって思っててさ。これって付き合っちゃっていいのかな? 昨日は夢にまで出てきたんだよねー。さすがにやばいよね」


 耳が裂かれたように痛い。私は澄佳しかいないのに。


「6年間も女子校だっから、ほんとにどうしていいかわからなくて。まのちゃんはどうしたらいいと思う?」

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