第67話

「そ、それまでこの広い場所を走り回るのか?! 兄貴?」

「え? ああ……」


 今度は弥生が俺の夏服の袖を引っ張りだして、走り出した。すぐ後ろに獄卒がいたからだ。獄卒は俺にも金棒を振り回していた。


「ひえっ!! こりゃ音星を待ってられないかもな……」


 そこで、俺たちは数ある骸の山の一つを急いで登ることにした。

 灰色の空からは、まだ罪人たちが大勢降って来る。

 あっという間に地面は真っ赤に染まり、派手に血潮が辺りに舞う。


 ここは大叫喚地獄。


 俺に嫌というほどここが地獄なんだと思わせた。


 慈悲も仏もないんだな。


 周囲の獄卒たちはざわめきだし、皆俺たちを追いまわしていた。

 骸の山を登り切ると、今度は地面へ向かって一直線に降りだす。

 そこで、弥生が叫んだ。


「あ、兄貴!! あそこに巫女さんがいるぞ!!」

「お、おう!!」


 真っ赤な地面にポツンと立っていた音星は、急いで手鏡を布袋から取り出してから、こちらに気がついて手招きしている。

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