第40話

 ニャー……。

 シロは首を傾げた。


「なんてな! じゃあ、行こうぜ!」

「ええ。叫喚地獄へ」


 俺たちは古井戸まで歩いて行った。


 古井戸の中には、一本の綱が下りていた。俺は嫌な予感がしたが、最初に降りていくと、次第にぶすぶすと幾つもの釜土が煮えたぎる音がし、身体中に下方から高温が襲いだしてきた。それと同時に、多くの絶叫が聞こえる。


 俺は勇気を持って、降りていった……。

 

 下の地面はマグマのような真っ赤に染まっていた。足裏が焼け焦げるかと思うほど熱い。周囲を炎が覆いつくし、火のついた釜土が至る所にあった。そこで人型の魂が逃げ回る凄惨な光景だった。


「だいぶ、地獄の下まで来たけど、まずいぞ……これは……」

「ええ。もう人間では無理なんじゃないでしょうか?」


 うーん……。

 

 でも!

 後、もう少しなら……いけるぞ!


「よし! 大叫喚地獄の入り口をすぐに探そう。妹探しはほんの少しだ!」

「ええ……あ、火端さん? シロが……」


 俺の腕の中のシロは熱さで、ぐったりしていた。だけど、何も抗議しないのだから良い猫だ。


 うん?


 それに、賢い猫じゃないか!


 シロはじっとしながら、地面に小さな白い花の咲いた。火がついていいない釜土を向いていた。

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