第27話
その時。ついに噴火活動が激しさを増した。恐ろしい高温が更に酷くなって、俺は熱さでブッ倒れるんじゃないかと思った。それでも、グッと歯を食いしばり、二本の足に力を入れる。岩山の間のすぐ近くを流れる溶岩の影響で、広大な黒縄地獄の地面の土から至る所で煙が間欠泉のように噴き上がった。降りだす無数の大岩もどかどかと地面に落ちてくる。大噴火の大音響が襲う中。地面が大揺れに揺れだした。
俺は、ここにいるのが、どうしようもないほど怖くなった。
かなりの揺れと黒煙で前が見えない。両手を前に突き出して震えていると。と、突然。大きな得体の知れない物体が遥か上空から降りて来た。地獄の灰色の空一面を得体の知れない物体が覆いつくす。
「な? ……あれ……は……なんだろうか?」
「……」
俺はガクガクと震えながら、大量の汗を噴き出して、岩山の間から悲鳴を上げた人型の魂を助けることさえも、しばらく忘れてしまっていた。
だけど、グッと歯を食いしばり。岩に身体を固定して、唯一見える灰色の空を見上げた。どうやら、その得体の知れない物体は、半透明のようだった。その背後の雲一つない灰色の空が見えるからだ。なので、合点がいった。魑魅魍魎の類なのだ。
俺は地震によって、グラグラと激しく揺れ動く地面から、その得体の知れない物を見ていると、空の一角に魑魅魍魎の巨大な真っ赤な目が浮き出てきた。それは、周囲を見回していた。
と、瞬間。俺と目と目が合ってしまった。魑魅魍魎がこちらに気がつくと、途方もない大きさまま空からドロリと降りてきた。
「……これは! さ、さすがに、ヤ、ヤバくないかな……? 音星。この状況は、かなりマズいぞ!」
「……ふぅー……火端さん。静かに……」
今まで岩山で身体を固定していた音星が、黒煙だらけの辺りをゆっくりと見回してから、ある一点を指差した。そこには、溶岩が一切入らない。地面にぼっかりと開いた空洞があった。
「火端さん! あそこです!」
それは、真っ暗な洞窟のようだった。
「あそこへ入りましょう!」
「へ?」
音星は当然、その洞窟へ入ろうというのだ……。
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