第26話

 その山から、周囲の地面にまで溶岩が押し寄せてきて、豪雨のように降る焼けた大量の大岩が、天高くばら撒かれた。まるで、地獄だ……。 いや、地獄にいるんだよな。俺たち……。


 それと同時に、周囲の高熱も更に極度に上がってしまい。岩山の間の一輪の花が揺らいだ。


「だ、ダメだ!! 熱くてしょうがないぞ! このままじゃ、二人とも高熱でやられてしまう!! しょうがないから一旦、八天街へ引き返そう! 音星急いでくれ!!」

「は……はい! え、ええ! そうですね!」


 音星は布袋を肩から降ろして、袋の中から古い手鏡を急いで探しだした。

 その間、俺は辺りを警戒した。


 これだけの激しい高熱や溶岩の流れがあるというのに、そして、大雨のように降って来る大岩も、俺たちがいる岩山の間の部分は何事もなかった。でも、無事だったけど、熱さは酷いもんだ。

 

 俺も音星も火山によってグンと上がってしまった高熱で、滝のような汗を流していた。もしかしたら、このままだとそこらの亡者と一緒になるんじゃないかと思うほど、物凄い高熱が黒縄地獄全体を包み込んだ。至る所にある地面に転がっている大きな岩が、悲鳴のように水蒸気を勢いよく上げ、煙を噴き出している。俺の呼吸もなんだか、過呼吸になって、息苦しさを覚えるようになってきた。


「火端さん! この手鏡を! ……あれ? 火端さん? あっちの岩間から……」

「え?」


 音星が指差す方を見ると、鬼(獄卒)たちによって、一つの人型の魂が鉄岩に括り付けられていたが。今にも巨大な斧で四肢を切断されそうになった。その時、その人型の魂から、あり得ないほどの大きな悲鳴が発せられた。 


「火端さん。私、行ってきます!」

「音星! 待つんだ! 無茶だよ! ここは地獄だぞ! 罪を犯したものが落ちてしまう場所んだし! 当然、受けないといけない罰なんだよ! きっと! 

 だけど……」


 俺は頭を激しく振った。


「いや、罪人だけど……でも、罪人だから……仕方ないことなんだと思うんだ! 俺たちが止めに入るのは、何かがおかしい気がするんだ!」


 音星は俺の顔をじっと見つめて、クスクスと笑いだした。


「私。お説教されてしまいましたね。でも、火端さんも私も目的がありましたね。その目的とは……一体何でしょう?」

「う! ……うん! そうか! そうだよな!!」

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