第21話
「あ、着替えたんだ……」
そう言った俺は、音星の部屋から、鼻をくすぐる香水かなにかの良い匂いに顔を赤くしていた。
「早く来いよ。じゃ」
きっと、疲れてるんだな。
俺は音星をそっとしてやって、一階へと降りていった。
再び花柄のテーブルへ着こうとしている途中で、廊下で知らない男とすれ違った。
「やあ、おはよう。君が確か火端くんだね」
知らない男は、理知的な目鼻立ちの中年で、背が俺より高く背広こそ着てないが、大きな会社に通っていそうだし、そこで部長とか社長とか。とにかく偉い人のようだった。
俺は頭を即座に下げ、
「あ、おはようございます。谷柿さんですか? それとも、古葉さんですか? 俺、まだ居候してから一日しか経っていないので」
「あ、そうだったな。ふむ。私は谷柿だ。これからよろしくな」
俺は何ていうか、気恥ずかしさを覚えた。
「あ、あの。朝食はもう?」
「いや、その前に用足しだ。失礼」
「そうですか」
俺はその時、ジャージ姿の眠そうな顔の音星が、一階へゆっくりと降りてくるのを見つけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます