第22話

「あ、音星。まだ寝ていても良かったんだぞ。朝食なら俺が二階へ持って行ってやるぞ。まあ、たぶん。どのみち、おじさんかおばさんが持って行けっていうんだろうけど」

「ええ。ええ。火端さんありがとうございます。谷柿さんもおはようございます」

「おはよう。巫女さん」


――――


 音星とテーブルに着くと、もう一人のお客さんの古葉さんが廊下から歩いてきた。


「おはよう。巫女さん……誰? そいつ?」

「あ、俺は火端 勇気です」

「ああ、新しいお客さんか」


 古葉さんは、いわゆる不良のような人だった。だらしのないポロシャツを着ていて、髪はぼさぼさで茶色に染めている。


 背はひょろ長いが、程よく筋肉がついたナイスガイだった。

 歳は俺より上の大学生のようだ。


 谷柿さんもやってきて、おじさんとおばさんもテーブルに着くと、平和な朝食が始まる。献立は大根の味噌汁に、ご飯。それと、海苔と漬物に、エビフライと玉子焼きだった。


 俺のご飯だけ大盛りだったのは意外だったけど……。


「火端さん。あの……午後からは、この鏡でまた八大地獄へ行きましょう」

「ああ。あ、その鏡は? やっぱり普通の鏡じゃないんだろ?」

「ええ、この鏡は、浄玻璃じょうはりの鏡の欠片なんです」


 音星は、古い手鏡をテーブルの上に置いた。

 すると、みんなが朝食の手を止めて、一斉に鏡を覗きだした。


「じょうはり? ふっるい鏡だなあー。かなり昔からあるんだろ? これ? しかも、よく割れないよな」

「ええ。家の箪笥に大事に仕舞ってあったんですよ」

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