第20話
その時、おじさんが俺の顔を急に覗いてきた。
二カッと笑ったおじさんは、
「ぼうず。二階にいる巫女さんを呼んでくる時間だ。さあ、行った。行った」
「え? へ??」
「あの人は朝はとても弱いのよねえ。さあ、巫女さんを呼んできてちょうだい」
おばさんが音星の部屋は、二階の左から二番目。ちょうど俺の部屋の斜め向いだと言うので、俺は音星を起こしに、何故かドキドキしながら、ゆっくりと階段をまた上がることになった。
斜め向かいの部屋のドアを、トントンとノックすると俺は声を掛けた。
「あ、音星……あの……起きてるかい?」
お、俺……声がすげえ上ずってるな……。
しょうがないか、高校になっても、あまり女子には話し掛けた時がなかったからな。ドアの向こうで、ゴソゴソと音がしたかと思うと、音星の眠そうな声が奥から聞こえてきた。
「おはようございます……ああ、火端さんですよね。ドアならいつもカギは開いてますよ~」
いつもの音星だった。
俺は、まったくといっていいほど、警戒というものがない音星の性格が薄々気になってきた。
俺はそこで、ふと思った。
一体。どんな子供時代を送ったら、こういう性格になるんだろう?
けれども、決して悪いわけじゃないから。なにせ地獄まで行って死者の弔いへ行こうとする人なんて、あまりいないだろうからな。
おっとりしすぎなのかな?
俺は頭を掻いてから、ドアをまたノックしてから少し開けた。
「音星。いいかな? 朝食の時間だけど……」
部屋の中には、ジャージ姿の音星が布団の中で二度寝をしていた。
健やかな寝息が聞こえる。
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