第18話

「あの。この方は私のお友達の火端 勇気さんです。しばらくここでお泊りさせて頂けないでしょうか?」

「いいよ、いいよ、うちは巫女さんのお友達なら誰でも大歓迎さね」

「よう、ぼうずもか? そりゃいいが……寝床はどうするんだ?」


 おばさんの後ろから、大柄なおじさんがぬっと現れた。

 

「はあー、確かにそうだねえ。寝る場所がないわねえ」

「この通り小さな貧乏民宿だしなあ。ほれ、部屋は他のお客で満員だぞ。なあ、お前。そういや、二階の倉庫が空いていたっけなあ?」

「いやいやいや、それじゃあ、さすがに可哀そうじゃないかしらねー」


 おじさんとおばさんが、俺の寝床のことで首を捻って考えている。


「え?? 寝床がない?! 俺、寝袋あるから外でもいいけど……」

「あ、それでしたら、大丈夫ですよ。火端さんは私の部屋でもいいですよ。今の季節でもまだ夜は冷えますし」


「ぶーーーっ!! それはダメだ!!」

「ぶーーーっ!!」

「ぶーーーっ!!」


 おじさんとおばさんと俺が同時に激しく吹いた。


 大柄なおじさんが、腹を抱えて笑いだした。


「がははははは! 気に入ったぞ! ぼうず! それなら、俺の息子の部屋が空いているぞ。息子のことは気にしなくて良いんだぞ! 今は東京に行ってるからなあ。多分、数年はここに帰って来ることはないだろうからな! 自由に使ってやってくれ!」  


「あ、ありがとう!! おじさん! おばさん!」

「火端さん。良かったですねー」

 

 ああ、これでやっと布団で眠れる。

 思えば俺はここ八天街へ来るまでは、なんだかんだで野宿ばかりをしていたからなあ。


 色々あったけど、今日から暖かい布団で眠むれるんだなあ。

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