第2話 恐山菩提寺からきた巫女?
…………
大分県 別府
ガガガガ、ガガガガ、ガガガガ……。
俺のリュックサックの中のラジオが急にガガガガと鳴りだした。小うるさいので、ラジオを消そうとして背中に左手を伸ばしたが。その途端に、左手に冷たい感触を覚えて背筋がゾクリとした。
ここは、日本で最も地獄に近い街。
バスで海地獄。鬼石坊主地獄。かまど地獄。血の池地獄。龍巻地獄。鬼山地獄。白池地獄を地獄ツアーで巡った後で、「俺、とある事情で地獄に興味があるんです。今では、ちょっとした地獄マニアなんです」としつこく言うと、呆れたバスガイドさんは、ここ八天街をお勧めしてくれた。
バスガイドさんによると、八天街はかなりやばいとこらしい。
確かに今、実感しているけど……。
どうやら、ここには本当の地獄への入り口があるらしいんだ。
夜の八天街は、人通りが多く。
大通りには、ブランコが中央にポツンとある公園。品物が店外にはみ出た雑貨屋やこじんまりとした銭湯。煤ぼけた古本屋などがあった。目立つ食べ物屋では洋食レストランにステーキハウス。ちょっとした軽食には喫茶店などがあった。
その大通りから裏通りへ向かうと、
「やっと、見つけた!」
俺は歓喜した。
深夜なので、喧騒も静まり返った裏通りにそれはあった。隣接する建物は飲み屋が多い。その奥に煤ぼけた小さな神社があった。そこが、バスガイドさんから聞いた話では地獄への入り口の目印らしい。
そんな俺はどうしてここまで地獄へこだわるのかというと、妹が冤罪を犯して死んだからだ。
だから、俺は今も妹を探している。
地獄の勉強をしまくって早1年。
お蔭で、今ではちょっとした地獄マニアだ。
ダンテ新曲。
八大地獄。
地獄とは違うけど、日本の
妹は確かに地獄へ落ちたはずだ。
だから、俺が探さないといけないんだ。
「早く探さないとヤバいかな」
バスガイドさんは眉唾物の情報か噂話を俺に流したのだろうけど、本物は本物だ。
本物なんてそこら辺に本当にあるんだ。
ほら、俺の後ろにもある。
ろくろ首だ。
俺は神社の鳥居まで走った。
鳥居は古ぼけていて、葉や枝で覆われている。
鳥居に入ると、そこまでは追ってこないのか、ゾクリとした時からあった鳥肌がなくなってきた。
これが本物……魑魅魍魎だな。
「浮かばれない魂なんて、そこら辺にごまんといるんだよ。そんな魂は魑魅魍魎となるんさ。あんたも気をつけな。あんまり下ばかり向いていると、いつか足を引っ張られるさね」
昔、おばあちゃんが言っていたっけ。
俺は後ろと下を見ないで、境内の玉砂利の上を歩いた。
掴まったら喰われてしまう。
だから、逃げるか隠れたりするのが一番だったりするんだ。
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