第3話 up! up! my Friend①


 ──目が。

 私を取り囲むたくさんの黒い光が。

 ぎょろりとのぞき込んできた。


「っ……あ……」


 言葉が出ない。

 息が苦しい。

 水の中にいるように、声を吐き出そうとすると喉元で押し戻され、勢いよく空気が逆流するようだった。

 瞳からこぼれた涙が、頬を伝う。

 顎が震え、歯がカチカチと鳴る。身体が熱く、足がすくんだ。


「う……あっ……!」


 みんな、私のことを見ている。

 全身は凍えるように寒いのに、顔だけは熱湯にかけられたように熱い。

 どこか遠くで、誰かが何か喋っているような気がした。

 それがよく聞こえなかったのは、耳元で鳴っているかのように脈打つ胸の動悸と、すすり泣く自分の嗚咽のせいだった。

 

「……め……なさ……っ」


 謝りたいのに、声が出ない。

 

「ごめ……」


 ──目が。

 たくさんの目が、纏わりついて離れない。


「ごめっ……ごめ……なさい……っ」


 ごめんなさい。

 私で。

 みんなが期待している子じゃなくて。

 誰も、気付いてない。

 みんなが見ているものは誰なのか。

 ここで泣いているのは、誰なのか。



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