第7話:レベルアップ

 俺はもう中級魔法を完全に身に付けたが、実戦の経験がない。

 ならば、もし他人と対戦したら、どうすればよい?


 戦闘のときに魔法を効果的に発動できなかったら、これまでの勉強は無駄になる。

 そんなことが起こって欲しくない。


 そこで、俺は魔物を倒してみようと決意した。



 ✭✭✭✭✭



 夜中になった。パジャマを脱ぎ、服に着替え、軽微な装備を身につけた。

 こっそりと屋敷を抜け出し、周辺の町の道路に沿って無属性下級魔法 《疾走》を使い、見渡す限りの草原に来た。


 この草原は以前、魔法を勉強したところだ。


 俺は止まった。

 ちょっと疲れたので、草原に横たわり休んだ。


「綺麗だなぁ」


 やはりこの世界の星空は綺麗だと思った。


 そして、そよ風が草原一杯に吹き、気持ちがいい。


 ちなみに、この世界では月が三つある。しかし、色は異なる。

 色は青色、緑色、赤色だ。


 この世界の月も地球の月のように、時間とともに位置を変えていく。


 三つの月は重なることもあるようだ。だが、俺は生まれて以来、見たことがない。


 5分ぐらい過ぎた。


「そろそろだ」


 俺は立ち上がって、服の泥を叩き落とした。


 さて、魔物に出会うには、どこへ行ったらいいのか?


 魔物はどこにいるのがわからん。

 しかもこの草原は静かすぎるために魔物の気配が少しも感じられない。


「前進を続けよ」


 また 《疾走》を発動し、続けて前進した。

 それから、分かれ道に来た。


「道は二つあるが、どちらを選んだらいいのか?」


 俺はこの草原を離れたことがないので、どの道を選べばよいかわからない。


 どちらへ行くべきか迷って一回りしている時、道標らしきものを見た。

 でも、周囲が暗かったので、よく見えなかった。

 そこで 《光球》を発動した。


 見ると、やはり道標だ。


 右の道は商業都市ディヤヌスに通じているが、左の道はホルトンの森に通じている。


「森は多分、魔物でいっぱいだろうか」


 じゃあ、左の道を選択して行こう。

 《疾走》を発動しながら、前へ進んでいく。


 約3分後、ホルトンの森に到着した。

 森の奥を覗くと、不気味さを感じた。


 真っ暗だし、明かりが全然ない。


 《光球》を発動した。でも、見える範囲は有限だ。魔物がいきなり飛び出して攻撃してきたら、俺は死んでしまうかもしれない。


 念のために 《周囲感知》も発動した。


 《周囲感知》は無属性中級魔法だ。文字通り、近くの状況を感知することができる。


 《周囲感知》を発動すると、すぐに魔物の反応があった。

 前方約1.3キロほど、五匹の魔物がいる。


 よし、行くぞ。


 俺は注意深く前に進みながら、周りの状況に気を配った。


「見えた」


 前に火光が見えた。


 無属性下級魔法 《身体強化》を使い、察知されないように木に飛び移った。

 高い場所で視野が開けている。


 しかし、目の前の光景が俺をびっくりさせた。

 ―――五匹のゴブリンは人の死体を食べている。


 この光景を見て、そして死臭を嗅ぎ、吐き気がした。

 素早く 《風》を使って、周囲の風向きを変えて、新鮮な空気を吸った。


 悪いな、もう少しで息ができないところだった。


 冷や汗をかいた。


 ゴブリンなら、俺は本で読んだことがあった。

 知能指数が低くて攻撃力は弱いが、集団になり狩りをする魔物だ。

 もしゴブリンたちが集団で襲ってきたら、倒すのは困難になる。


 5匹のゴブリンを倒すのは、俺にとって大きな問題じゃないだろう。


 《鑑定》を発動した。


 ――――――――――――――――――――――

【ゴブリン】


 魔物等級:E

 HP 30/30  

 MP 0/0


 功撃力:40

 防御力:15


 固有スキル:

 《嗅覚鋭敏》LV.2 《下級剣術》LV.1

 ――――――――――――――――――――――


 魔物等級は9つの等級があった。低い順に並べたら、F・E・D・C・B・A・S・SS・SSSだ。


 やはり弱いな……。まあ、始末しておこう。


 右手を上げて、右手に魔力を注いだ。


 《火之矢》発動。


 魔法陣が現れ、5つの 《火之矢》発動し、高速で前に飛び命中した。

 しかし、その中の一匹を仕損じてしまった。


 俺はそのゴブリンに発見された。


「ヂいぃぃぃぃぃー」

「……っ」


 そのゴブリンは殺気を帯びる目で俺を見つめている。


 また右手を上げ、魔力を注ぐと魔法陣が現れた。


「死ね!《炎弾》!」


 火は弾丸のようになって前に飛び命中した。

 そのゴブリンは全身を炎に燃やされ、苦しそうに悲鳴をあげ絶命した。


 すると、脳内にシステムのような音が鳴り響いた。


『レベルが1アップしました』


 俺はすぐに 《鑑定》を発動し、ステータス画面を開いた。


 レベルが本当に上がった。

 レベル1からレベル2になった。


 これを見ると、嬉しかった。


 そして魔力値もHPも上がったのを見つけた。


 1006632960から1006633960になった。

 1000ポイントも魔力値がアップした。

 HPは、350から450になった。

 100ポイントHPがアップした。


 だが、5匹のゴブリンを殺しても、レベルがやっと1上がっただけ。

 どうやら、この世界でレベルを上げるのはちょっと難しいようだな。


 まあ、こりゃ自分の実戦経験を増やすためだ。


 レベルアップを続けよう。


 《周囲感知》を発動して、魔物を探した。

 ……前方約600メートルほどに魔物の反応があった。


 行こう。


 《身体強化》と 《疾走》を使い、忍者のように木から木へと移動した。


 間もなく、目的地に着いた。


 全身を火炎に包まれた蜥蜴のような魔物を見た。


「こりゃ一体なんの魔物か?」


 《鑑定》を発動した。


 ――――――――――――――――――――――

【火炎蜥蜴】


 魔物等級:B

 HP 7582/7582   

 MP 2355/2355   


 功撃力:310

 防御力:13276


 固有スキル:

 《火炎放射》LV.6《快速爬行》LV.5《鱗甲防御》LV.5

 ――――――――――――――――――――――


 等級Bの魔物なんて……、倒すにはちょっと手を焼くだろう。


 《水の槍》発動!


 魔法陣が現れ、水が槍のようになり、凄まじい速さで前へ向かって飛んでいく。

 が、火炎蜥蜴を傷つけられない。


「なん……っ!」


 火炎蜥蜴の鱗甲は硬すぎて、体を射抜けなかった。


 その火炎蜥蜴は俺を見ると、口を開け、火を噴き出した。

 とっさに飛び上がり、攻撃を避けた。そして、三つの 《風刃》を発射した。

 同じように攻撃は無効だった。


「クスッ!」


 再度俺に火を噴き出してきたので、《水流》を使い、火を消した。


 汗が全身を流れた。


 あの火炎蜥蜴を倒すには、弱点を見つけなきゃ。


 地球で一般的に背中を硬い鱗甲で保護されている動物は、ほとんど腹部が脆弱だ。


 そのために俺は「火炎蜥蜴の弱点は腹部かもしれない」と推測した。


 俺は下に降りた。火炎蜥蜴は素早く俺に迫ってくる。


 《尖岩突撃》!


 地上に魔法陣が出現して、尖鋭な石が出て腹から身体を貫いた。


 やはり、弱点は腹部だ。


 その火炎蜥蜴はもがきながら苦しそうに悲鳴をあげた。

 すぐに、もがきが止まり絶命した。


『レベルが3アップしました』


「……よかった」


 袖で額の汗をぬぐった。


「ふー」


 その火炎蜥蜴が死んだのを見てほっとした。

 しかし、突然 《周囲感知》は、周りにたくさんの魔物がすごい勢いで近づいてくるのを感応した。


 悪い予感がした。

 周囲の草からたくさんの火炎蜥蜴が現れた。


 なるほど、さっきの叫び声は仲間を呼び出していたのだな。

 こう考えてみると、苦戦は避けられそうにない。


 どれだけの時間が過ぎたのだろう。


 俺は苦笑した。やっと奴らを一掃することができた。



 ✭✭✭✭✭



 一連の激戦で、もう力が弱まり、ぐったりとなって、地面に倒れた。


 服が汚れた。帰ったらリリに叱られるかもしれない。


 立ち上がり、水属性下級魔法 《洗浄》を使って服を綺麗にした。


 その戦いで、俺は107匹の火炎蜥蜴を殺した。


 レベルが5から34になった。

 それに魔力値も1006636960から1006665960になったし、HPは3650になった。


 それに限界も突破した。

 25個の魔法を同時に発動できるようになった。ちょっと嬉しかった。


「もう疲れた。帰ろう!」


 森を抜けだして、屋敷に帰った。


 部屋に戻り、パジャマに着替えた。

 疲れていたので、ベッドに横になるとすぐに寝入っちゃった……。

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暗殺者の異世界支配譚 白皇 コスノ @porter6061212

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