第1話:転生
日差しが入ってきた。まぶしい。
もう朝?
でも、たしか俺は爆発されて粉々になったじゃないのか?
まさか俺は一命を取り留めたのか?
いいや、不可能だ。
あんな威力のある爆発物では生き残るのは不可能だ。
そうでなければ、俺は夢を見ているのか?
しかし、この夢はあまりにもリアルすぎる。
……まあ。
目を開けた。
ベッドに横になっていて、天井を見ている。
見たことのない天井だ。
白い正方形の格子の中に紫色のラベンダーの模様が描かれている。
周りを見た、明らかにここは病院じゃない。
ここはどこだ?
この部屋は見たこともない。
この部屋は金持ちだけが利用できる個室だと感じた。
俺は起き上がった。
自分の手を見た。
―――っ!!
目の前の光景に衝撃を受けた。
―――俺の手は小さくなっている!
どういうことか!?
俺は自分の体を触ると手だけでなく体も小さくなっている。
何が起こったんだ?
突然、ドアが開けられた。
ドアの方を見た。
入ってきたのはメイドのような格好をしている。
綺麗な青色の長い髪と瞳、健康的な白い肌に背はそこまで高くないけどスラッとした長い足が際立っている。
ふるまいが落ち着いており、年齢は16歳ぐらいだろう。
これはコスプレか?
俺が目の前で起こったことすべてについて考えていた時、そのメイドは話した。
「おはようございます、ノルス様」
ノルスは誰か?
彼女は俺に『ノルス様』と語りかけてきたのだから、それが俺の名前のようだ。
「おっ、おはよう」
俺もそのメイドに挨拶した。
「えっと、お前はコスプレをしているのか?」
「コスプレ?……申し訳ありません、ノルス様。コスプレとは何ですか?」
そうか、彼女はコスプレを知らないのか。
今起こっていることから判断すると、ここは異世界と考えたほうがいい。
なるほど、もうわかった。
―――俺は生まれ変わったのだ。
以前は輪廻転生など神話かアラビアンナイトであり、真実だとは思っていなかった。
「いいや、なんでもない」
メイドと周りの貴重品から見て、俺はある金持ちの息子に転生したようだ。
しかし、この情報だけでは不十分だ。
他の情報についても知る必要がある。
「で、お前はここに来て何をする?」
「ノルス様を起こし、お着替えを手伝わせていただきます。そして洗顔後に朝食を食べていただきます」
「わかった」
ベッドから立ち上がった。
「着替えさせてくれ」
「はい」
メイドが近づいてきて、俺が着ているパジャマのボタンを外し始めた。
俺も心の中でやりたいことを考え始める。
―――情報を収集する。
「君の名前は?」
「はい、私の名前はリリです、ノルス様」
「じゃ、俺の名前は?」
「ノルス様のお名前はノルス・ガルメス様です」
ノルスは名、ガルメスは姓だな……。
しかし、目の前のメイドは自分の名を言うだけだ。
「リリには姓がない?」
「はい、ノルス様。リリは庶民ですから、姓がありません」
なるほど。どうやら、この世界には階級制があるのだな。
俺には姓があるから、多分ある高官や身分の貴い人の家庭に生まれたはずだ。
「リリ、お前は俺の氏素姓をどう思う?」
「ノルス様は当今の王様が厚く信頼されている公爵家にお生まれになったのです。ノルス様のお父様はラフィダート公爵様です。ラフィダート様のこの国での影響力は大きく、王様でさえラフィダート様を非常に尊敬しています」
前世で裏切られたことを思い出すと、とても悔しい。
他人が俺のために命がけで働くような身分となりたいのだから、影響力のある人にならないといけない。
こうなったら俺は影響力のある人になるために公爵の継承権を手に入れなければ。
「なぁ、リリ、俺には兄弟がいるか?」
「いいえ、ノルス様は一人っ子です」
そうか。兄弟がないのなら、彼らを殺害する必要もない。
俺はもう公爵の継承者だから。
いいや、ただ「今」は兄弟がないだけ、「未来」にはできるかもしれない。
が、長男としての俺には大きなアドバンテージがある。
「で、今年俺は何歳になる?」
「はい、ノルス様は3歳です」
3歳か、時間は十分にある。
成人するまでには新王としての資質を身につけなければ。
しかし、これまでの情報だけではまだ足りない。
俺は生まれ変わったばかりで、この世界のことはまだ十分に理解していない。だから、この世界に関するすべてを知る必要がある。
俺一人だけじゃちょっと無理だ、誰かに助けてもらわなきゃ。
「はい、着替えは終わりました」
「ありがとう」
「どういたしまして」
俺はこの世界でどんな姿をしているの?
ちょっと気になる。
「リリ、鏡はあるか?」
「はい、あります」
リリはキャビネットへ行って鏡を持ってきた。
彼女の手から取り、鏡を見た。
俺の髪は黒くて少し淡い青だ、瞳は紫だ。
自分は自分を美少男だと思う。
かっこいいかな、俺は。
「どうしましたか、ノルス様?そんなに嬉しいですか」
「いいや、別に」
「そうですか……。ノルス様、私はノルス様にお話しておきたいことがあります。でもノルス様を怒らせるかどうか不安です」
「話してみろ」
「はい、なにか今日のノルス様は変です。とっても大人びて穏やかでいらっしゃると思います」
「そうか?」
見た目は3歳の男児だが、魂は53歳の中年男だ。
やはりおかしいと思われるな。
「おかしいか?」
「いっ、いいえ」
リリは頭を下げた。彼女は自分が失言したと思っているようだ。
俺は彼女に近づき、その顔を見上げた。
「大丈夫だ」
「はい」
リリは明るさを取り戻した。
これでいい。
「そうだ!まずは顔を洗うはずだったな?」
「はい、お顔を洗うには、裏庭に行かなければなりません」
「わかった。連れて行ってくれ」
「はい。でもノルス様、ちょっとすみません」
突然、リリが俺を抱き上げた。
「えっ?!」
と、リリに急に抱き上げられてびっくりした。
リリの胸が俺の目の前になり、赤面した。
俺は人生のほとんどを暗殺の任務に注ぎ込んできたのだから、恋愛する時間はなかった。
恋愛経験がないのだから、顔が赤くなったのも当然だ。
リリはこの部屋のドアを開けた。
廊下は結構広かった。
他人が俺のために命がけで働くような身分となるためにお金も非常に重要だ。
こりゃまるで天の助けだ、嬉しい。
そして、階段を下りて行った。
なるほど、リリは階段のせいで、俺を抱き上げたのだろう。
俺の部屋は3階にある。
このまま彼女に抱かれても仕方がない。
早く自分で階段を歩かなきゃ。
裏口を開けて裏庭に入った。
井戸に着くと、彼女は俺を下した。
リリはバケツを井戸に投げ込み、ロープでゆっくりとバケツを引き上げた。
このように水を汲むのはとても不便だね!
蛇口を開けたら水がでる世界など彼女には想像できないだろう。
俺は前世の経験を生かしてこの世界を変えていけるだろう。
これも影響力のある人になる方法の一つだ。
顔を洗った後、リリは俺を食堂に連れていった。
俺は背が低くて一人では椅子に座れない、だからリリは俺を抱き上げて椅子に座らせた。
朝食は豪華だ。
さすが貴族だな。
朝食はステーキ・コーンスープ・パン・サラダだ。
ナイフとフォークを取ってステーキを切ろうとした時……。
「だめです。これはノルス様には危険すぎます」
リリは俺の手からナイフとフォークを取り上げた。
それから、ステーキを食べられるサイズに切った。
自分でやってもいいのに……。
……まあ。
すると食堂のドアが開いた。
入ってきたのは
「おはようございます、旦那様、奥様」
リリが彼らを『旦那様、奥様』と呼んだのだから、彼らは俺の両親のはずだな。
「おはよう」
「おはよう」
それから、こちらを見た。
「ノルスもおはよう」
お母さんは言った。
「おっ、おはよう」
「今日はノルスがこんなに早く起きてくるとは思わなかった。いつもなら朝寝坊なのに」
お父さんは苦笑しながら言った。
俺も苦笑した。
さあ、俺の新しい人生はこれからだ。
他人が俺のために命がけで働くような身分となることを目指して頑張ろう。
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