第11話 姉妹百合……やっぱりいいねぇ……

「おーい、ねぇね? またぼーっとしてるよ?」

「あ、ごめん、ちょっと昔のこと思い出してた」

「僕以外の女の子の事考えてたでしょ……」

「え……う、うん」

「だめ! 今デートに来てるんでしょ! ちゃんと僕だけを見てよ!」

「う、うん……」

「僕のねぇねで、ねぇねの僕なんだから! ちゃんと見てて! 僕も見てるから!」

「わ、分かったよ、とりあえず落ち着いて……周りの人見てるから……」

「あっ、うん……ごめんなさい」

(素直で可愛い……)

「ちゃんと謝れて偉い!」

「ねぇね! 大好き!」

「私も好きだよ……」

(そう、ほんとに好きだよ……)


甘くも苦いあの日の思い出。今でも鮮明に思い出せるあの感情と胸の高鳴り。

それを今も感じる。

妹を恋愛対象として見ている自分に嫌悪感を抱くと共に懐かしい思いに浸れたことに少し喜びを覚える。


(私ってどうしていつもこうなんだろ……)


ぼーっと空を見つめる。

いつも叶わぬ恋ばかり。そんな自分が嫌いになる。

いっそのことこの空に消えてしまえたら……


「ねぇね……」

「ん、んん? どうしたの?」


また考え込んでしまっていたことに気づき慌てて綾花を見る。


「見てたらわかるよ、ねぇね今すごい悩んでる……すごい辛そう……そんな顔みてたら僕も辛いよ……」


風花は平然を装っているつもりだった。

だからこそ顔を見てバレたことに驚く。


「ありゃ、バレちゃった?」

「そりゃそうでしょ、何年一緒にいると思ってるの!」

「何を言う、ほとんど引きこもってたじゃないかベイベ〜」

「茶化さないで!」

「僕は本気で心配してるの!」

「心配なんだよ……力になりたい……話してよ……」

「分かったよ、とりあえずあそこのカフェ入ろか」

「うん……」


そう言って歩きだす風花。

背中に温かく柔らかい感覚が心地いい。

後ろから綾花が抱きついてきたのだ。


「ねぇね大好きだよ?」

「私も大好き」

「あと……」

「あと?」

「絶壁の割には柔らかいじゃん」

「ねぇね? シリアスな雰囲気返してくれる?殴るよ? 」


やっぱり仲の良い2人だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る