第11話…生徒会室に居たのは
「よっ! 遅かったな!」
生徒会室の扉を開けると、他のメンバーたちとアキラが談笑しているところだった。
「「へ?!」」
二人とも何も聞いてなかったので、ただただ驚いている。
「あ、アキラ、どうして??」
アキラはしてやったり顔で笑って、リリーに近付いて頬にキスをした。
すかさずユウが引離し、リリーの頬を手で拭く。
最近はこれが3人のルーティンになってきていて、リリーも慣れたもので動じない。
「今日は最後の仕事で。引継ぎと後輩への喝? を入れに」
アキラはけらけら笑って、揃ったメンバーへ振り返った。
「とりあえず、揃ったから自己紹介だな。俺は第一皇子のアキ・イラ・フィズガ、前会長だ。今日は引継ぎに来た。歓迎式典が始まる前と、終わってから……出来れば昼までに終わらせたいかな!」
次! と、アキラにユウが指名された。
「皇太子のユウ・ウス・フィズガ、4回生で今期から会長をする。よろしく頼む」
「オウカ公爵家のリリー・カノ・オウカです。5回生で、副会長をします。皆様よろしくお願いいたします」
「タナー公爵家、5回生トウマ・センカ・タナーと申します。私は会計を担当します」
「ビスカ伯爵家、カヨ・ナツ・ビスカと申します。6回生です。去年から引き続き、会計をさせていただきます」
眼鏡をかけた長身の女性で、髪はハーフアップで清楚な感じがする。背の高い方のリリーと同じくらいだ。
リリーが、目をキラキラさせて見ている。自分が長身で目立つのが好きではないらしく、同じくらいの背丈の女性がいて嬉しいのだ。
「スモス子爵家、5回生のセイチ・フォル・スモスと申します。書記を担当致します」
綺麗な宝石が施されているピアスが似合う、少し垢抜けて人懐こい感じの男性だ。
スモス領は宝石が豊富に採れることが有名で、子爵家だがどの伯爵家よりも金持ちかもしれない。
ユウは、目つきが鋭くなった。今日のリリーに着いて行こうとしていた男の内の一人はスモス子爵のご令息だったらしい。
イラッとしたのをアキラに勘付かれて、ユウは背中を叩かれた。
「プラム男爵家、シン・ウィン・プラムと申します。6回生、雑務担当です」
長髪の優しそうな男性で、ふわっとした雰囲気が安心感を与えてくれる。
「キャメリ男爵家、ジュン・ウィン・キャメリと申します。4回生、自分も雑務担当です」
かなり優秀でないと4回生から生徒会に入れないと言われている中での入会だ。祖父の代に商で成功して男爵になった家門だ。
アキラが、前に出てニコッと笑う。
「と、まあ最初は他人行儀なのは仕方ないとして。ユウは皇太子殿下だから除外するが、他は基本的には名前で呼ぼうか! まずは形からで」
ユウはイラッとした。スモス子爵家の奴がリリーを名前で呼ぶのが気に入らないのだ。
「式典まで、ユウは俺と引継ぎ、他は引継ぎ書を読んでてくれ!」
にこにこしながら、アキラはユウを会長席へ引張って行った。
ユウを席に座らせて、アキラは小声で諭すように言った。
「お前ね、リリについての感情を出し過ぎ! これから国政をする時、リリが弱点だってバレたらアウトだろ。俺たちが揺さぶられるだけじゃない、リリが巻き込まれたり、取引に使われたりするかもしれないだろ?」
ユウはその他では感情を出さないことで有名だ。だからこそ、リリが唯一の弱点としてしられたら非常にまずい。
矛先をリリーに向けたくないアキラとしては、ユウの丸分かりの態度をどうにかしたかった。
「まぁ、その練習のための生徒会長だ。存分にやるんだな! 期待してるぞ、ユウ」
ユウは真剣な表情でアキラを見た。
「前から思っていたけど……兄上の方がむいてるだろ」
初めて聞くユウの言葉に、アキラは嬉しそうに驚いている。
「はは! まさか! そんな事考えてたのか……俺は、こうやってサポートする方が得意なんだ。だから、感情をあまり出さず威厳を持って交渉に当たる事ができるユウが、将来国を治めるに適してる」
「……そうか」
「まぁ、その時は俺がサポートしてやるから。俺はこれから皇城でその勉強をするからな」
式典が始まり、引継ぎもそこそこ進んでいた時、生徒会のメンバーが呼ばれた。
アキラは会場まで一緒に来てくれると言うので、新メンバーたちは良い雰囲気のまま向かうことが出来た。
途中までは。
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