第32話
皿洗いが終わったあと、僕は海燈大附属の昔の入試を解いてるんだけど……明らかに二年前の入試だけ難易度がおかしい。別に頑張れば解ける、解けるんだけど僕が受けたやつや去年のやつに比べて難しい。
︎︎これで全く解けないとかだったら塾とかも考えてたけど、その心配は無さそうだ。お金は自由に使っていいって言われてるけど、不要なことには使いたくないしね。
僕がこうやって友達を呼んでご飯を食べたりできるのは全て母さんが残してくれたらしい途方もない額の遺産があるから。それを一人暮らしを始める僕にくれた父さんにも感謝してる、だから尚更無駄遣いはしたくない。
︎︎琴歌さん達が来てからは折半で一緒に住んでるから使うお金を少なくなったけどね。
「天さん、やる問題がないのでしたらこの問題を解いてみてください。とっても難しいですよ?」
「わかっ……て何この問題、絶対に高一が解く問題じゃないでしょ。予想だけどこの問題さ、どこかしらの大学の入試で出たじゃないの?」
「バレちゃいましたか。それ、私も解けなかったので天さんに解いてもらおうと思って」
琴歌さんが解けなかった問題を僕が解けるわけ無くないかな? まぁ暇だし渡されたからにはやるんだけどさ、パッと見でわかるほどに高三の範囲なんだよね。証明問題だけど……うん、無理だ解けるわけがないけど二年もしたらこういう問題も解けるようにならないとなんだよね。
︎︎とりあえず今ある知識で頑張ってみよう。
「いやぁ普通に先生の授業より分かりやすい、次のテストはそこそこの点数が取れそうな気がするよ。本当に琴歌さんのおかげだよ」
「お礼は結果を出してからでお願いしますね。もしいい点数が取れたのならそれを続けていけるように頑張りましょう!」
「これだけやって貰って点数取れなかったら普通に俺の頭に問題ありそうだなぁ。元から海燈大附属が俺のレベルにあってないのはわかってたけどさ」
まぁここらへんの地域で一番頭がいい高校だし、高校生からしたら入れただけですごいと言われるところだからねぇ。ん、さっきの問題? そんなもの頑張っても解けなかったからもう諦めましたよ。
「この問題無理だよ、僕はどれだけ時間がかけても解けそうにないかな。あ、さっきからずっと教えてるし僕と交代して休んでていいよ」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいますね。また私が必要なら部屋にいますので呼んでください」
琴歌さんと交代して、社会でも教えようかと思ったけど、湊は数学と英語しか持ってきてなかった。どちらかと言うと数学と英語は嫌いなんだよね、そんなこと言ってたら僕より点数が取れてない人に怒られそうだからこれ以上言わないでおこう。
「数学と英語は苦手なんだよねぇ……どこか分からないところでもある? 一応課題の範囲ならなんでもわかるけど」
「苦手な教科はなんでもわからないんだよ、やっぱり頭がいい人の苦手は信用出来ないって。苦手とか言いながら俺より点数取るだろ?」
「あくまで僕は五教科の中で英語と数学は苦手って話だからね、湊からしたら点数高いと思うだろうけど。まぁ結局はどれだけ勉強したかだよ、僕は中学の時に勉強をずっとしてたから今の点数がある」
もしも僕が中学時代を普通に過ごしていて友達も居たとしたらここまで頭は良くなってなかった気がする。友達が居なくて、ずっと一人で勉強していたからこそ今の点数なのかもしれない。
︎︎それと……他の人からしたら異様とまで見える僕の思いかな、父さんを楽に生活させてあげたいっていう思いだね。
「中学の時にずっと勉強してたんだろ、遊びたいとか、もう辞めたいとか思わなかったのか? 俺だったら絶対に途中で勉強するのやめてるけどな」
「そもそも僕には遊ぶ友達はいなかったし、僕には勉強しかやることがなかったからね。父さんのためにってずっと一人で何もかもしてきたけど、今思えばもうちょっと子どもとして親に甘えても良かったのかなって」
僕だって小一とか小さい頃は物事の判断も全然できなかったし父さんに甘えていたんだろうけど、小三ぐらいかな母さんが居ない本当の理由を聞かされてから僕は子どもらしくなくなったんだろうね。今更親に甘えるっていうのもあれだし、僕は目的は変わらず勉強し続ける。
§
湊も朱里さんも帰ってもう既に琴歌さん達は寝ちゃったけど、僕はまだ勉強をしていた。
朱里さんも途中からは琴理さんと一緒に勉強していたし、湊も僕と琴歌さんに教えてもらったんだし前よりはいい点数取れるでしょ。そんな中で僕が点数下がったら元も子も無いからまだ起きて勉強してるというわけである。
「そういえば琴歌さん達が勉強してる姿見たことないな、今日も教えてるだけだし……本当にいつ勉強してるんだろ?」
僕より早く寝てるのに起きるのは僕より遅いから……あ、琴歌さん達は部屋に戻っただけで一言も寝るとは言ってなかった気がする。もしかして僕と同じように今起きてて、勉強してるタイプかな。
︎︎もしそれで僕よりも遅くまで勉強していたのなら朝起きるのが僕より遅くても納得できる。
ちなみにこの後天は机で寝落ちした。
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