第31話
「あれ、俺もしかして遅れてきた感じ?」
勉強を始めてしばらく経ってから来た湊がそんなことを言うが全然そんなことはない。琴歌さんと琴理さんは元からここにいるし、朱里さんに至っては寝顔を見るという少し不純な理由で朝早くからきてるからね。
「全然遅れてないよ、朱里さんが早すぎるだけだから。前も言ったけど僕の家に二人がいることは慣れてね?」
「よく考えたら天ん家って一種の塾みたいなものだよな。学年一位の琴歌さんがいて、三位の琴理さんと五位の天もいるだろ? 普通にここに来た方が本来の塾よりいい勉強になりそう」
確かに先生相手じゃなくて友達だから気を使う必要も無いし、場所は家だから休憩しようと思えばいつでも出来るし本人の勉強意欲さえ高ければ本来の塾よりいいのかもしれない。何より塾代がかからないし、場所が僕の家だからいつでも行ける。
僕に予定がない限りいつでも来れるけど、教えられるのは僕だけの時があるかもしれないけどね。琴歌さん達は僕と違って予定はあるだろうしさ。
「あれ、琴歌さんって視力良くなかったっけ?」
「あ、これは伊達メガネです。雰囲気だけでも先生っぽくしたくて……どうです? 先生に見えますか?」
まぁ琴葉さんもメガネかけてるし似合わないわけないよね。ただ幼く見えるけど……何が問題なんだろ、髪型かな? それで言うなら琴理さんがメガネをかけたら完璧に先生だと思う、まぁ琴理さんは琴葉さんと髪型同じだからね。
「どちらかと言うと幼く見えるけど、学校でもかけて見たら? 多分可愛いって言われるよ」
「琴歌はいい意味で子どもっぽいからねぇ。メガネをかけてもその印象を打ち消すどころか悪化させた感じかな」
「私ってそんなに幼く見えるんでしょうか……?」
その場で聞いた結果全員が「うん」と答えてしまった。まぁ僕が高一に見えないのと同じようなものだよ、僕より身長は高いけどね。
︎︎琴歌さんが幼く見られる原因は顔と……純粋さだと思うけど、それを直すことは出来ないしもう受け入れるしかないんじゃないかな。
「もう私のメガネの話は置いておいて、湊さんも来たことですし勉強しましょう!」
「外しちゃうんだ、私はもっとメガネをかけてる琴歌を見たかったけどなぁ。学校でかけたりは……?」
「……考えておきます」
琴歌さんのメガネ騒動もあったけど、とりあえず今回の目的である朱里さんと湊の勉強が始まった。湊は死ぬほど勉強してここに来たからか覚えはいい、朱里さんは……やる気を出せば普通に頭いいのにね。
「なんでボクは琴歌に教わっちゃダメなのー?」
「琴歌は優しすぎてあかりんが休むのを許しちゃいそうだからあかりんはずっと私が担当する。あかりんはやる気さえ出せば点数取れるのに、なんでそうしないの?」
「単純、面倒くさいから。ボクにとっては琴理と同じ学校に来れただけで満足だったんだよ。でも、このままだとボクは琴理と離れ離れになっちゃうかもだからね……多少は頑張ろうかな?」
「多少じゃなくて本気で頑張るんだよっ!」
向こうはなんか騒がしいな……琴理さんが朱里さんの頬つねっちゃってるし。まぁ友達同士でやる勉強会ってこんな感じなのかな。
︎︎というか湊のことは琴歌さんが教えてるから正直やることないんだよね、今のままだといつもの勉強と変わらなし、なにかやることないかな。
あ、そうだ昼ごはん作れば良いんだ、時間もちょうどいいしね。まぁ五人分なんて初めて作るけど、作り方は普段と変わらないし夏休みに五人分作る予定もあるからね。
「ねぇ天くん、ボクにも手伝わせてくれないかな? 五人分も一人で作るなんて大変でしょ」
「別に料理は好きだしただ量が増えてるだけだしなぁ。というか朱里さん、勉強はどうしたの?」
「やる気は出してるけど急にハードすぎてさ、逃げるための口実で手伝おうと思って……」
「僕は大丈夫だから勉強頑張ってねー。来年も琴理さんと同じクラスになるために、ほら!」
朱里さんを琴理さんのところに返して、とりあえず作り始めよう。五人分を作るにしても持てるかな……フライパン、三人分の時でさえギリギリなんだけど、まぁ両手でもてばいけるでしょ。
と思ってた時期が僕にもありました……。僕が非力すぎて両手使っても無理だぁ、簡単に量を作ろうと思って焼きそばにしたけど具材が多いからその分重くなっちゃってる。
︎︎僕の腕細すぎるし、力がないことで色々支障が出てるから鍛えたりした方がいいのかなぁ……。
§
結局僕がフライパンを持ち上げられないのを見てた琴歌さんが持ち上げてくれてお皿に持ってくれた。普通に男としてフライパンを持ち上げられずに女子にやってもらうの恥ずかしいんだけど。
「クッキーの時点でわかってたけど、天って料理上手いな。あー、俺もこのくらい料理できるようになりたい」
「まぁ僕は小さい頃からずっと作ってるからさ。湊は料理を学ぶより学ばないといけないことがあるでしょ?」
「それもそうだな、料理は彼女が出来てから考えるとしますかね。まぁそんな時が来るのかも怪しいけどな」
湊は奏さんが帰ってくるまで恋愛はしないんだったっけ。その奏さんがいつ帰ってくるかも分からないというのに、その人のために頑張れるというのはすごいと思う。
︎︎僕はまだ湊のことを全然知らないし、奏さんに関しては会ったこともないけど二人は再会して欲しいな。
「それじゃあ僕は片付けてくるから勉強再開しといてー、片付け終わったら僕も勉強する」
まぁ勉強すると言っても課題はもう終わってるし、やる問題がないんだけど。だいたいそういう時はネットで入試問題を調べてやってる気がする。
「私も手伝います! ずっと天さんに働かせてばかりでは天さんが勉強できませんから」
「そう? それじゃあ二人でさっさと終わらせちゃおうか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます