第29話

今日は勉強会の日なんだけど琴歌さん達が起きてこない。琴理さんはいつも通り寝てるんだろうけど、琴歌さんも寝てるのは珍しい。


「琴歌さーん、琴理さーん!今から朝ごはん作るからなるべく早く着替えてねー!」


扉越しにそう言っても反応がない、本当に二人ともまだ寝ているのかな? だとして僕はこの扉を開けていいのだろうか……女子二人の部屋だし、普通に男子には見られたくないものも置いてあるかもしれない、でも速く起きてもらわないと僕も困る。


その後、何回も声をかけたり扉を叩いたりしてみたけど全く起きる気配がないので……僕は勇気をだして扉を開けることにした。


「二人とも起きて……」


一つのベッドに二人が抱きつきあって寝ている、気持ちよさそうに二人で寝てるのを見てると起こすのも悪い気がしてきた。にしても元々この部屋は何も無かったのに随分可愛くなってるなぁ……。


「二人とも起きてー、今日は勉強会だから色々準備しないとだからー!」


布団を捲ろうとしたけど、自分の部屋かは電話がかかってくる音がしたので戻ってみると朱里さんからだった。


『もしもし? どうしたの、僕の家まで道が分からない?』


『いやぁ、琴理に用があるんだけど全然電話に出なくてさ。琴歌にもかけたんだけど琴歌も出ないんだよね』


『あー、二人ともまだ寝てるよ。気持ちよさそうに寝てるけど起こすところ』


普通に起こすか悩むけど、さすがに用事があるので起こさないといけない。何も無かったら普通にあのまま寝かせていたと思う。


『ほんと!? ならビデオ通話で見せてよ』


『そんなことしたら、バレた時に僕が怒られるんだけど。そんなに見たいなら今から自分で僕の家に来たら? 親はいないし、別にいつ来ても問題ないからさ』


『じゃあ今から行くねー!』


朱里さんがそう言って七分後ぐらいかな、朱里さんが玄関の前にいた。さすがに速すぎると思う、もしかして近所に住んでるのかな? そうじゃないとこんな早く来れないでしょ。


「奥にある左側の部屋が琴歌さん達の部屋だけど、怒られても僕は責任負わないからね? なんならついでに起こしてきて」


「二人の寝顔を見れるならあとから怒られたってボクは満足だよ! それじゃあ部屋に侵入させてもらって……」


完全に動きが変態のあれなんだよなぁ……。さっき起きてなかっただけで今は起きてるかもしれないのにね、まぁ起きてるならさっきのチャイムで出てきてると思うけど。

 ︎︎まぁ僕は絶対協力者だと疑われないようにキッチンに戻っておこ。



§



「ここが二人の部屋かぁ、中学生の時とあんまり変わってないね。まぁ置いてあるものが全然違うけど」


とりあえず寝顔を拝ませてもらおうかなぁ……。


「やっぱり二人は抱き合って寝るんだね、今も変わってないのすごいかも。近くで見ると本当に似てるねぇ、髪型を合わせればボクでさえどっちがどっちだか分からなくなる気がするね」


琴歌は純粋で可愛いし琴理はかっこいい、二人の見た目は同じなのに性格が違うから双子っていうのは良いんだよね。でも性格が影響されない寝てる時っていうのは二人とも可愛いんだよね、長年一緒に過ごしてきてボクは二人を好きになっていた。

 ︎︎

百合というものがこの世にはあるけど、別にそうなりたいわけじゃない、二人と幼馴染、それだけで十分。


「ねぇ朱里さん、朝ごはんって食べてきた? 良ければ作るけど」


「ボク? 見れると聞いたから食べずに来ちゃった。それじゃあボクの分もお願い、ボクはもう少し見つめておくから」


「しばらくしたら二人を起こして来てね?」


「うん、ありがとう」



§



二人ともまだ起きて来ないし、疲れでも溜まってるのかな……。というか朱里さんが言ってた用事ってなんだろ、用事があるんだったら早く起こせばいいのに。

 ︎︎それに、朝ごはんも琴歌さん達の寝顔を見るために食べて来なかったのも意味わからないけどね、そこまで寝顔を見るの重要かな?


まぁいいや全員の分のご飯もできたし、さすがにそろそろ起きてもらわないとね。


二人の部屋に行こうとしたら、ちょうど琴理さんに腕を掴まれた朱里さんがリビングにやってきた。


「バレた……」


「何やってるんですかっ、もう! 」


「あかりん? 幼馴染でも部屋に侵入するのは良くないよ? それに寝顔も拝むなんてねぇ?」


「とりあえずご飯食べよう、うん。説教はそれからにして欲しいかな」


みんなお腹すいてるだろうし、時間が経てばせっかく作った朝ごはんが冷めちゃうからね。



§



ご飯を食べ終わって、朱里さんが琴理さんに怒られてる姿を琴歌さんと見てるけど、完全に朱里さんが悪いから擁護のしょうがないんだよね。


「天さんは止めなかったのですか? 同性でも……寝顔を見られるのは恥ずかしいんですよ?」


「僕はずっとキッチン居たしなぁ、朱里さんには二人を起こしてきてって頼んだだけ」


恥ずかしいとか言ってるけどさ、僕は毎回起こしに行く時に見てるんだけどな……。まぁ今言ったらポコポコ叩かれそうだし言わないけど。


とりあえず後は湊が来るのを待つだけかなぁ。


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