第27話
言っちゃったし、口調も戻しておこう。今の僕が選ぶのは女装のことより友達のことだ。
「まぁ誤解されないように説明しておくと、どっかの誰かが無理やり俺を参加させた挙句女の子を連れてこいとか言うから女の子っぽい天に女装してくれって頼んだわけだ。メイクは姉ちゃんにしてもらって服もコーディネートしてもらった結果が今の姿だな、正直予想より女の子で俺もビビった」
「じゃあちょっとメイク落としてきてよ、別に女装が趣味だとしても引かないし、そういう理由なら本来の姿も見てみたいな」
とりあえずトイレで顔を洗ったけど、やっぱりこっちの僕の方が慣れてるね。こうしてみると今の僕とさっきの僕じゃ全くの別人だ、まぁもう二度と女装なんてしないだろうし記念としていいのかな?
「えっと、僕はちゃんと男ってこれでわかってもらえるよね?」
「男の娘じゃん、メイクしなくても普通に可愛いよ!」
「ねぇ湊、やっぱり僕って女の子っぽいのかな……」
昔は近所の人としか関わりがなかったし、大人はだいたい可愛いって言うから気にしてなかったけど、最近は同学年の琴歌さんとか湊とかにも女の子っぽいって言われてるからもう本当にそうなんだろうね。別に嫌じゃないけど、高校生にもなって身長が女子より低いのはね……。
「あれだ、俗に言う男の娘ってやつだよ天は。大丈夫だって、可愛い男も多分需要あるから、実際男だってわかっても持ち帰ろうとしてる奴がいるし」
「そっかぁ、天ちゃんじゃなくて天くんだったんだ。へへ、私とおねショタしようやぁ……」
どうしよう、女の子だと思われてた時より悪化してるかもしれない。おねショタって何? 学年一緒じゃん、絶対天海さんがおねの方で僕がショタの方だろうけど、普通に身の危険を感じる。
︎︎言葉を知ってるだけでどういう意味かわからないけど恐らくショタの僕は危険でしょ。
「彼氏の前で浮気すんなって、あまみゃ。おねショタは同人誌までに留めておけよ……迷惑かけて悪いな天くん、わかると思うけどあまみゃはそういう趣味の人なんだ」
「実害が出なければ大丈夫だよ……本気で身の危険は感じたけど。でも僕は普通に友達として仲良くしたいと思ってるから、引っ越すというのと女の子っていうのだけが嘘だからさ」
「えーそうなんだ、それじゃあ今度ご飯食べに行ってもいい?」
どうしようかな、僕の家には琴歌さん達が居るけど別の学校の人だし問題ないとは思う、あと女子だし何も言われないし。
「えっと……シェアハウス的なことをしてるから同居人に許可を取らないと」
「俺も行きたい。天のご飯食べたことないし、どんな感じで同居人と過してるのか気になる」
「湊はご飯よりそっちが目的でしょ」
はぁ、まぁいいや琴歌さんと琴理さんには連絡しておいたし、あとは返信を待つだけかな。
湊に関しては月詠姉妹と同居してることを知ってるからこそニマニマしてるんだろうし、体育祭のことがあってから琴理さんとも仲がいいからね。まぁいつになるかはまだ分からないけど二人増えるなら買う量も増やさないとだけど、一人で行けるかな……?
「あー、食事代とか払った方がいい?」
「別にお金はいらないって、湊には買い物を手伝ってもらうかもしれないけど。いつもより多いから普通に僕一人じゃ持ちきれないかもだし」
「おっけー、じゃあ買い物の日が決まったらまた連絡してくれ」
ちょうど二人から返信が来て、琴歌さんは『天さんが作るんですから天さんの好きにすればいいですよ』と琴理さんは『天の家で、天が作るんだから自由に人を呼べばいい』と許可を貰えた。
「同居人も来ていいってさ、いつにするかは後で決めよう。そういえば湊は明日僕の家に来るんだったねぇ? 昼ごはんは作ってあげるけど、ちゃんと勉強頑張ろうね?」
「まぁ成績まずいしなぁ、サボるわけにはいかないよ。せっかく学年一位と五位に教えて貰えるんだからちゃんと頑張るさ」
明日は僕の家で勉強会をする、メンバーは僕と月詠姉妹、あと湊と朱里さんの五人だ。朝からやるつもりなので、途中で勉強を一旦やめてみんなで昼ごはんを食べることになっている。
︎︎いやぁ……五人分なんて初めて買ったから腕がちぎれるかと思ったよ、まぁ今度は湊にも手伝ってもらうし大丈夫でしょ。
もうすぐテストで、みんなで集まって勉強するのってなんかいいよね、今までそんなこと絶対無かったからとても楽しみである。
「ねぇねぇ、その同居人の事を聞かせてくれない? どんな人なのかとか」
「二人いるんだけど、双子で……妹の琴歌さんは清楚でちょっぴり天然だけど優しい人だよ、そのせいでちょっとした事件にも巻き込まれたりしたけど。で、姉の琴理さんは男子には当たりが強いけど根は優しい人かな、あとボーイッシュ」
「家で男一人、女二人、何も起きないはずもなく……」
何も起きてな……くはないな。一回起こしに行った時に見ちゃったことあるわ、それからは何も無いけど一回あったらアウトだよな。
「何も起きてないからね? というかどんなことを考えてるのさ」
「例えば、風呂場でばったり遭遇しちゃって裸を見ちゃったとか?」
「僕はちゃんとそういうことを気をつけてるから大丈夫、そうじゃなかったらさっき言ってた琴理さんに殺される」
この前は起こしに行ったという名目があったら許されたけど、風呂場の場合は僕の注意不足ってことで叩かれそう。まぁ、そんなことがないように僕は一番最初に風呂に入るんだけどね。
「でもさ、男として女の子が家に二人いてそういう感情とか湧かないの?」
「元々僕は一人ぼっちで住んでたんだけどね、二人が来てから生活が楽しくなったんだ。だから二人が嫌がるようなことはしたくないかな、これから先もずっと二人には笑っていて欲しい」
「可愛いけど言ってることはイケメンだ……」
ちょっと一言余計かな? まぁ、可愛いって言われるのも、男でもこんな見た目と声をしてる僕の事を認めてくれてるってことだしね。
「湊なら顔もイケメンだし、言うこともイケメンだよ? 僕が覚えてる限りで湊の名言集でも作ろうか?」
「やめろ!」
「ははっ、そんなこと言われなくなったって作らないって」
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