第25話

ある日、突然湊に家へ来て欲しいと言われたので行ってみると、家に入った瞬間土下座された。本当に意味がわからない。


「どしたの……?」


「本当に申し訳ないんだが、女装してくれない?」


「は?」


「ですよね」


土下座してるだけで意味わからないのに女装しろってどういうことだよもう……。体育祭の時からそうだけど色々おかしいことがありすぎじゃない……?


「理由は?」


「いやぁ友達にパーティー的なのに参加するんだが、参加者全員が付き合っててさぁ……。俺だけぼっちで行くってのも気が引ける」


「断ればよかったじゃん」


「いや、知らん間に参加することになってた」


あぁ、確かに湊って他人から見たら普通に彼女居そうに見えるし勝手にパーティーとかに参加することにしてもちゃんと来る感じがあるよね。にしても湊の彼女役が女装した僕でいいのか?


「別に琴歌さんとかに頼めばよかったじゃん」


「いやぁ、学校の人達とだし、琴歌さんを連れていくと後々面倒くさくなるじゃん。琴歌さんに迷惑はかけたくないし、それだったら架空の女の子を作ってパーティーが終わったら存在を消すほうがいい」


「それで僕に女装しろと? それ遠回しに僕が女の子みたいって言ってるでしょ、僕だってちゃんと男だよ。なんなら証拠だそうか?」


ここで僕の情報を開示しよう。


身長が低くて(154cm)、声は高め。髪の毛(紺色)も長く、それに童顔である。


まぁ僕が選ばれるのは必然の事だったのかもしれないけどさすがに僕の見た目でも今のままだったら男だと思う。さすがに今の僕の姿で女と言い切るのは無理でしょ。


「ボロンしようとするな。さすがに今のままじゃ無理だし、姉ちゃんにメイクしてもらうからあの部屋入って、もう事情は説明してるし」


「その姉を連れていけばいいのでは……?」


「姉ちゃんこの後彼氏とデート」


「あーうん」



§



言われた部屋に入ると既にメイク道具をもって待機してる湊のお姉さんがそこには居た。改めて今から僕がメイクされるとなると実感が湧かない、だって僕は誰がなんと言おうと男だし。


「さてと、湊から聞いてた天くんは君だね? ちょっと近くで顔を見てもいい?」


「えっ、まぁ構いませんけど……」


いいとは言ったものの思ってたよりも距離が近くて緊張する……。


「ふふ、顔赤くなってて可愛い。見た目は可愛くいて女の子っぽいけど、中身はちゃんと男の子なんだねぇ? それじゃあ早速メイクしてくけど、色々我慢してね?」


「は、はい……」


メイクされるのなんてもちろん初めてだけどこんなに緊張するものだとは思ってなかった……。それに湊のお姉さんも美人だし、湊の家系には美形になるっていう血筋でも流れてるのかな。

 ︎︎というか女装ってことは女の子をの服を着るってことなんだけど……大丈夫かな、メンタル的な意味で。


パーティー的なやつってことは写真をおそらく撮るだろうし、僕の女装姿が残されるんでしょ? 完全に黒歴史じゃん、湊の頼みとはいえ危ない橋を渡りすぎでしょ、僕。湊がこの写真の人について聞かれても答えないように口止めしとかないと。


「本当に男の子とは思えないくらい可愛いね、メイクしてちゃんと服着て街を歩いたら殆どの人が騙されちゃうんじゃない?」


「僕は湊の頼みだからやってるだけで、普段だったら絶対女装なんてしませんよ。今日きりです、絶対に」


「えー、私は可愛いしいいと思うんだけどなぁ。まぁそれも天くんの自由だし、私が口出しする訳にもいかないよね」


もし僕が女の子だったら……なんて考えてしまうけど、今の僕があるのは男の子として生まれたからかもしれないし、でも女の子だったら中学自体のことがなかったかもしれない。正直性別なんて人生に関係なくて、大事なのは自分がどう行動するかなんだと思う。


「はい、これでメイク終わり。まるで自分が自分じゃないみたいでしょ? メイクはね、自分がなりたい姿になれるんだよ……だから私も小さい頃からコスメが好きにだった、馬鹿にされることもあったけどね。

 ︎︎それでも自分の趣味に他人が口出しすんなばーかみたいな感じで今まで過ごしてきて、仕事もコスメ関係のを選んできたんだよね。天くんも自分のやりたいことがあるなら周りの目なんか気にせず突き進んでいけばいいんだよ」


でも、今の僕にはやりたいこともないし夢もない。料理は好きだからそっち系の方が僕に似合ってるかな。


「それじゃあ次は服だけど……私が好きに選んでも問題ないよね?」


「僕は女の子の服なんてわからないですし、お任せします」


「よーし、許可ももらったし飛びっきり可愛くコーディネートしてあげるね?」


許可を出したのは僕なんだけどさ、普通に湊のお姉さんが着せたい服とかも着せられて合計十七着くらい着せられてようやく服が決まった。うん、本当にこれが僕なのか怪しいところだけど、紛れもなく鏡に映ってるのは僕だ。


湊が見たら驚くだろうなぁ……絶対『誰!?』って言われる気がする。


女装天……いや、男の娘天の誕生である。

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