第20話
今日は体育祭の一日目なんだけど、一昨日の一件のせいで結構ダメージを負っている。歩くことはできるけど、走るとしたら保って数秒程度だろう。
︎︎向こうはこのことを見越して僕のことを突き落としたのかもしれないけど……大丈夫、今日は僕以外にも琴歌さんを守ろうとする人は居る。
競技中に湊と琴葉さんは動けないけど琴葉先生が動いてくれている。よく考えたら草薙達を阻止するために結構な人が動いてるな……まぁ僕が集めたんだけども、僕よお願いでも引き受けてくれてるってことはそれだけ琴歌さんが大事にされてるってことかな。
︎︎琴葉先生と琴理さんからしたら血の繋がった家族、湊からしたら友達で、僕にとっての琴歌さんは家族で……僕を救ってくれた大切な友達だ。
「身体、大丈夫なのか? 動きたくなる気持ちも分かるが今は自分の身体を大事にしておけ、琴歌のことは私に任せておけ」
「それは先生として許せないからですか? 親として許せないからですか?」
「両方だ、他校の生徒とはいえ先生として、元警官として……親として子どもに手を出した奴を許すつもりは無い。そのためにも証拠を得る」
現状、他のみんなはグラウンドに集まって先生の話を聞いてるけど僕だけはグラウンドの隅で座って休んでいる。琴葉先生が居なくなれば僕はもちろん動くつもりだし、お願いした僕が動かないというのも良くないからね。
長々とした話が終わって、競技が始まったので今から委員の見回りが開始と同時に草薙達の行動も開始したはずだ。琴歌さんがどこにいるかは知らないけど、さすがにまだ接触していないだろう。
「ねぇ、ちょっと着いてきてよ。少し話をしよう」
「僕のところに来るとは思っていなかったかな? いいよ、ゆっくりと話をしよう」
僕はそのまま草薙達について行って、やってきたのはやっぱりあの校舎裏、この前案内された時に確認したのだろうか? にしても琴歌さんのところじゃなくて僕のところに来るなんてね、本当に想定外だ。
「石井に落とされたっていうのにまだ懲りてないんだ、これ以上邪魔するならこっちも保証は出来ないよ? この前後ろにずっと着いてきてた先生、あれもお前が呼んだんだろ?」
「僕が呼んでたとしたらどうするの? 普通に考えて正当性は僕にあると思うんだけど」
「やっぱ知ってるか、まぁ証拠がないんだから正当性もクソもないさ。どっちが正義か悪かも分からない、そしてこの話の内容もお前をここから出さなければ聞かれることもないからな」
そもそもで体格差がある上に二対一、それに今の僕は負傷してる状態だ。勝てる見込みなんて一パーセントもないけど、位置関係から逃げることも出来ない。
「来いよ、クソ野郎共」
§
「琴葉さんらしくないですね、娘の事だからといって冷静じゃないのは。警察を辞めてから色々一般人に戻ってきてるんじゃないですか?」
「それはそうかもしれないな、白鳳が居なくなってから私は警察というものから完全に離れるようにしてたしな。学校の先生になってお前と再会するとは思わなかったが」
元同僚の大和と一緒に校内を見回ってるが今のところあの二人を見掛けていないし、誰かが叫ぶような声も聞いていない。大和を呼んで戻って来た頃には既に天がさっきの場所から居なくなっていたし、体育祭が始まってから琴歌を見かけていない。
︎︎何処にいるか分からないと私がどのような術を持っていたとしても出来ることは無い。
「見回りって言ってもグラウンドだけじゃない、私は引き続きグラウンドの見回りをするから大和は校舎側を見てきてくれ」
「僕も生徒が危険な目に遭わないように頑張りますよ。正直、あいつらのやろうとしてる事には苛立ちを感じてます」
私と大和は別れてあの二人がなにか悪さをしていないかを見回りを始めた。
§
あそこまで焦ってる琴葉さんは初めて見たなぁ。まぁ白鳳さんが亡くなって、これ以上自分の前から誰も居なくなって欲しいんだろう。
さてと、生徒は全員グラウンドにいるはずだしこっちには生徒はいないはず。こっち居るとしたら先生が不審者かのどちらか、先生だとしてもほとんどは体育祭を見てるし居るとしても職員室ぐらいかな。
︎︎要は今この校舎側に大人がいたら無視するわけにはいかないかな。
「よく考えたら敷地内をゆっくり歩いたことは無かったなぁ……。この学校、僕が通ってたところより全然大きいや」
そのまましばらく歩いていると地面がコンクリートから土に変わった。そのおかげで一つ分かったことがある。
「ここに足跡が三人分……えっと、この先の校舎裏に続いてる。校舎裏はちょっと怪しいかなぁ」
この足跡が何時の足跡なのかは分からないけど、現在進行形かもしれないし僕も一応止めるため準備しておいた方がいいかな。まぁもう既に事を済ませた後かもしれないけど、向かわないという選択肢は無い。
一応飛び出してくる可能性、何か得物を持っている可能性、色んな可能性を考慮しながらその校舎裏に向かっていくと衝撃な光景がそこにはあった。
「……三月くん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます