第19話
そして二回目の話し合い、場所は僕たちの学校だったが向こうが知らない場所で僕たちが知ってるとなると向こうからしたら琴歌さんを呼ぶ方法はいくらでもある。例えば道案内を頼めば琴歌さんは優しいから絶対に教えるだろうし、行き方を言うだけでなくその場所までしっかりと案内するだろう。
「この前の話し合いでほとんどのことを決め終わっちゃったから正直何も話すことがないね。月詠さん、役割の中に見回りがあるから校内の案内をしてもらってもいいかな? そうじゃないといざとなった時に迷っちゃうからさ」
ここでしっかり琴歌さんを指定するあたり、この二人は黒な気がする。僕でもいいなら『どっちか』と言うはずである、つまり二人きりになったら何かをしようとしている。
︎︎でも困ったことにここで僕が行くよというのは少し不自然である、琴歌さんに何かやることがあったのなら話は別だったんだけど。
「そうだ琴葉先生に話をしよう」
§
「えっと、私たちが今いるこのフロアは主に二年生の教室があるところですね。ここの上が一年生、下が三年生です」
「トイレとかはどこにあるのかな?」
「えっと向こうの角を曲がったところに看板があるのでそこですね。下の階と上の階の同じところにもありますよ」
バレないようにこっそり後ろを着いてきたけど、今のところは何も問題は無いかな。ちなみに琴葉先生に話をしたら「またか……仕事が一段落ついたら様子を見に来る」と呆れた感じに言って職員室の中に戻って行った。
︎︎というか普通にバレたら色々と僕は終わりなんだよね、危険な橋すぎるけど僕があのまま教室に残ってたらどうなるか想像もできないしなぁ。
僕は一応会話が聞こえる距離にいるけど、最悪三人の姿が見えていれば何とかなる。
「うちの学校には無い教室が何部屋かあるね。中って見ても大丈夫なのかな?」
「一応どの教室も生徒たちは使用可能なはずですし、備品を触らなければ問題ないと思いますよ」
なんの部屋が分からないけど入口が一つしかない、止めに行くべきだ。僕が階段の物陰から出ようとしたら浮いてる感覚に陥った。
「さっきからつけてきて邪魔なんだよ、君。だからさ消えて?」
僕にしか聞こえない声で石井はそう言って、二人のところに戻って行った。草薙と石井、琴歌さんが個室の中に入った……まずいことが起こるのは目に見えてるけど、階段から落とされた衝撃で身体が動かない……それに背中から落とされたせいで声が出せない。
︎︎僕が助けに行かないといけないのに、このままだと琴歌さんが危ない……。
琴葉先生に話をしたものの、仕事が終わってないかもしれないし都合よく僕たちがいる場所に居るわけじゃない。
「さっき大きい物音がしましたけど……石井さん、何かあったんですか?」
「いや、なんでもないよ。ちょっと物音がしたから気になって見に行っただけ、それじゃあ入ってみようか」
「ちょっと待て、その教室は立ち入り禁止だったはずだ。案内中に悪いが他をあたってくれ」
「あちゃー、ここ立ち入り禁止なんだ、それじゃあ移動しよう」
「あぁ、是非そうしてくれ」
姿は見えないけど、この声は琴葉先生だろう。三人の声が段々と離れていく、一旦聞きは去ったけどどうせ直ぐにやってくる……。
︎︎とりあえず琴葉先生がタイミングよく来てくれてよかった、そうじゃなければ琴歌さんは今頃大変なことになっていたと思う。
ふぅ、呼吸できるようになったけど痛みで身体を動かせないな……どうしよう。
「派手にやられたな、天。悪いが私は向こうの方を優先したい、一人で保健室に行けるか?」
「大丈夫じゃないですけど、琴葉先生はそのまま三人の方に向かってください。僕はしばらく動けそうにないですから」
今は僕を保健室に運ぶよりあの三人を追いかけて二人の悪事を止めることを優先した方がいいだろう。僕が一人で保健室に行けるかといったら『はい』とは言えないけど、とりあえず気合いで行くしかない。
痛いなぁ……骨は逝ってないけど、結構やばいぶつけ方をしてる。這いずってでも保健室に行かないと、先生以外に誰も居ないし這いずってても理由を説明すれば大丈夫でしょ。
§
私はその後もずっと観察してきたが向こうが何か行動を起こすことは無かった。もしかしてだが私が後ろに着いてきていることがバレていたかな? まぁ向こうが何も出来ないように気づくように歩いていたんだが。
︎︎にしても天だ、だいたい十二段ある階段の一番上から押されて背中から落ちた……大丈夫か分からないな。
あの男どもはまだ何も琴歌に対してやってないが、後ろをつけていた天を突き落とした時点で何かしようとしているのは確定だ。そうじゃなかったら天を突き落とす理由は無い、何かをするのにこちらを見ている天が邪魔だったんだろうな。
幸いもう集まることは無いし私は体育祭中ずっと暇だ。何かをしている決定的な証拠を捉えたいな、娘に手を出そうしていて息子に手を出した奴を許す訳にはいかない。
草薙と石井の思惑を暴くため、天(負傷)、湊、琴理、琴葉の四人が集まった。各々のやり方で草薙と石井から琴歌を守る戦いが始まる。
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