第16話
競技に出場しなくていいってだけでだいぶ気が楽になったので僕は僕の仕事に集中するとしよう。この前のあいつのことが気にならないわけじゃないけど、僕がどうなったかを気にする必要は全くないんだから。
︎︎一つ言うとしたらもう学んで欲しいということぐらいだ、二回目だし前より怒られてるはずだからね。
体育祭の運営をするのはいいんだけど、琴歌さんと一緒になったからか男子たちからずっと「変わってくれ」って言われるんだよね。それは琴歌さんがいるから体育祭委員をやりたいと言ってるようなものでまともに仕事をする確証も無いので変わる気は無い、というか一度決まってるんだから変えれないでしょ。
「天くんも体育祭委員なんだね、失礼かもしれないけど運動は苦手?」
「そうだね今までほとんど運動してこなかったから少し走るだけですぐバテちゃうんだ……。それで朱里さんはなんで体育祭委員になったの?」
僕がそう聞くと朱里さんは急に黙り始めた。もしかして聞いちゃいけない内容だったかな……?
「あかりん、私から逃げるな。あ、気にしないで、たまに勉強を教えてたんだけどあかりんが逃げただけだから。それで放課後に残る可能性もある体育祭委員になることで勉強しなくて済むからあかりんは体育祭委員になったはず。話によればいつか琴歌と天ともう一人で勉強するらしいし、私達も混ぜてもらおうかな」
「えー、ボクはもう十分勉強したじゃん! 今はこっちの仕事の方が大事だから琴理には捕まらないよーだ」
「別に体育祭が終わればいつも通りに戻るだけだから、短い休みだけど楽しんでね?」
これは僕の想像だけどさ、琴理さんとの勉強むっちゃきついけどその分結果が出て結果が出たら結構褒めてくれそう。まぁ結果が出たらの話で変わらなかったり、ましてや落ちでもしたらよりきつくなると思う。
「天くん助けて……鬼が、鬼がいる」
「あはは……朱里さんの学力がどんなものか知らないけど、今度の勉強会に来る? 色んな人がいるから学力も上がると思うけど」
「ボクは勉強したくないの!」
それは学生としてどうなのだろうか……? 高校は中学と違ってちゃんと成績を取った方がいいと思うし、朱里さんが大学に行きたいかは知らないけど行きたいなら成績をしっかり取っておくべきだろう。
「ほら普段の勉強にも入試の時みたいにやる気を出せば点数取れるでしょ? そうしないと来年同じクラスになれないよ」
そういえばこの学校は二年生になった時のクラス替えが少し特殊なんだった。ほとんどの人は普通のクラスにランダムで決められて、一年生の時の成績を見て上位の人だけを集めた特進クラスというものがある。
︎︎琴理さんはもちろんこのままいけばそこに入れるだろうし朱里さんが来年も琴理さんと同じクラスになるためにはそこに入るために勉強しないといけないはずだ。
「そういえばそんな面倒くさい制度もあったね。ボクは琴理と同じ学校に入るためだけに猛勉強したけど、同じクラスになるためには仕方ないかなぁ」
「じゃあ次のテスト楽しみにしてるからね、あかりん?」
「うへー、これ高い点数取らないと二人きりっでの勉強コースじゃん……」
§
放課後になって働く時間になったけどなんか半分の人は塾やらで来れなくて結局来たのは僕と琴理さん、朱里さん、そして他の知らない人だった。塾があるなら最初から体育祭委員にならなければよかったのではとは思うがまぁなった理由は人それぞれだ。
︎︎僕みたいに種目に出たくなくてなった人もいるだろうし、普通に仕事をやってみたい人もいるだろう。
「他の生徒には後々言うつもりなんだが、今年の体育祭は隣の男子校と合同で行う事となった。それで誰か向こうの委員の人達とどんな感じで進めていくかを話してきて欲しいんだ」
男子校かぁ、そういえば隣になんかあった気もするけどそこまで気にしたこと無かった。でも男子校となれば女子が居ない分彼女に憧れている人も多くいるだろう、もしかしたら強行手段も厭わないやつもいるかもしれない。
︎︎だとするならば女子、その中でも琴歌さんは絶対に行かせたらダメな気がする、目をつけられそうだ。
「先生、それは何人で行くんですか?」
「別に何人でも構わないが、三人くらいが丁度いいだろう」
まぁほとんどの人は休みが潰されたくないのか、用事があると言って逃げたけどそうなったら僕達しか残っていない。
「誰も行かないのだったら僕が行きます。どうせ用事は無いですし、誰かがやらないといけないことですから」
そう言ったらもちろん琴歌さんも行くと言ったし、朱里さんは用事があるらしいので二人で行くことになった。まぁ琴歌さんだけで行かせるよりましだし、最悪僕が見守っておけばいい。
︎︎心配し過ぎと言われるかもしれないけど、この学校で実際に被害を見てきてるからね。
共学で他の女子もいる中であんな手段を取るやつも出るんだから、男子校となれば警戒したくなる。それほど男子が惹かれる魅力を琴歌さんは持っているのだ。
§
そして帰り、僕忠告をしておくことにした。
「琴歌さん、土曜日の男子校の人達との話の時に約束して欲しいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、なんですか?」
「男子校の人に着いてきてと言われても着いていかないこと。手伝って欲しいとかだったら僕も一緒に呼んで」
「わ、分かりました……」
琴歌さんは自分が持っているものに気づいてない、だから男子校の人と関わるのがどれだけ危険かを理解していない。琴歌さんと男子校の人を二人きりにさせれば……もしかしたら、もしかしたらだけど、そういうことも有り得る。
未知なものは怖いからね、警戒するに越したことはない。
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