第15話

六月に入ってようやく高校最初のイベントである体育祭の時期がやってきた。中学の時から体育祭だとか文化祭はあったけどやらないといけないことだけやって後は誰にも見られないような場所で過ごしていた記憶がある。

 ︎︎まぁ今回はそんなことにはならないと思うし、秘密がバレない限りは。


「体育祭かぁ、今まで運動なんてろくにしてこなかったから上手くできる自信が無いなー」


「まぁまぁ、今日は種目決めで練習はしっかりあるんだからさ。運動が苦手だって言うならあんまり動かない種目でも選べばいいじゃねぇか」


「湊は絶対運動できるじゃん、見た目が物語ってる。あれでしょ、サッカー部に入ってて他のスポーツも何故か人並みにできるタイプでしょ?」


偏見すぎるかもしれないけど、イケメンってだいたい運動できる人だよね。湊なんか絶対「できないって」とか言いながらどんなことも人並みにはこなしてそう。


「サッカー部じゃないぞ俺は、でもまぁスポーツなら大体人並みにはできる気がするな。ただな? 圧倒的に学力がないんだよ、学力が」


「琴歌さんと仲がいいんだから教えてもらえばいいじゃん、琴歌さんって学年一でしょ?」


「確かにそうだけどよぉ、月詠姉が許してくれるかどうか……。というか天、お前そんなこと言ってるけどこの前のテスト五位だろ、天が教えてくれよ」


あ、バレた。普通に考えて誰にも教えたことの無いただ点数を取ってるだけの僕と、頭が良くて色んな人に教えたことのある琴歌さんだったら琴歌さんに教えてもらった方がわかりやすいだろうと思っただけだ。


「琴歌さーん、湊が勉強教えて欲しいだって」


「湊さんですか? 確かに前のテストではそこまで望ましい成績ではなかったですし、勉強はしておいて方がいいですね!」


「天ぁ、優等生の正論が問答無用で俺を刺してくる、助けて」


「いやぁ、でも勉強しといた方がいいのは事実じゃん」


湊が勉強しないとまずいのは前提として、勉強会するとなったら琴歌さんがいる時点で琴理さんも来るだろうし琴理さんが居るので朱里さんも来る可能性がある。朱里さんの学力は知らないけど勉強会をするなら人が多い方が知恵を分けれるだろう。


「お姉ちゃんも呼びましょうか、お互いの得意教科を教えていったほうが効率がいいですから。私は数学と英語、お姉ちゃんは理科と国語が特に得意ですね」


「僕は得意な科目といったら社会かなぁ。良かったね湊、五教科の先生が居るよ」


「点数は良くなりそうだけど勉強会が地獄になりそう……」


勉強会については後々話すとして、とりあえず体育祭でどの種目に出るか決めないと。


「それじゃあみんな座ってください、前から言っていた通り体育祭の出場種目を決めます。今年やる種目を書くのでちょっと待っててくださいね」


黒板に今年やる種目がズラズラと書かれて言って自分のやりたい種目にとりあえず名前を書いて被ったらその人同士でジャンケンか何かしらで選手を決めるらしい。僕はもちろんあんまり動かなそうな借り物競走と玉入れにしておいた。


「あれ、湊はリレー出ないんだね。足速そうだけど」


「俺は別に目立ちたいわけじゃないからな、普通に何してもいいから人が少ないところに行くよ」


ちなみになんだけど一種目二人までなので琴歌さんが名前を書いたところにもう一人だけが行くかで向こうは争っている。さすがの人気だけど、あまりにも一緒の種目になろうと必死すぎて琴歌さんも困惑しちゃってるよ。

 ︎︎別に同じ種目だからといって一緒に何か出来るわけじゃないんだけどね。


「あ、一つ忘れていることがありました。体育祭の運営をする体育祭委員を男女一人ずつ決めないといけないんですが、やる人はいますか? あと体育祭委員になったら運営側に回ってもらうことになるので種目には出れません」


もちろん放課後に残る可能性もあるので手を挙げる人はいない。種目に出れないのなら僕にとっては都合がいい。


「なら僕がやりますよ、他の人はやらないみたいですし」


「じゃあ男子は三月さんで。あとは女子なんですけど、やりたい人はいますか?」


「天さんがやるのなら私がやりますよ。他の皆さんはやりたがらないようですから」


琴歌さんがやると言った瞬間男子たちが「やっぱ俺もやりたいかなぁ」とか言い出したけど既に手遅れである。体育祭委員は僕と琴歌さんに決まって、他の人たちは種目決めに戻って僕と琴歌さんは役割について話すことになった。


「琴歌さん、僕が立候補したから立候補したでしょ? 流れが自然だったけど、僕にはわかるよ」


「天さんにとって相方が私だった方が色々楽ですよね? 帰る場所も一緒ですし、友達ですから」


確かに知らない人といきなり一緒に作業するより知ってる琴歌さんと一緒にやった方が楽なのは当たり前だし琴歌さんは僕に役割を投げるなんてことはせずに一生懸命やってくれるだろう。他の人がサボると決めつけてるわけじゃないけど、琴歌さんは絶対にサボらないという信頼があるし、仕事もうまくやってくれるだろう。


「そういえばどうして皆さんは私と一緒になることに拘るのでしょうか?」


「琴歌さんは分からなくていいと思うよ、向こうが勝手に拘ってるだけだろうし。まぁ拘りすぎた結果、善悪の判断が付かなくなるやつもいるから気をつけてね」


そういえばこの前のあいつ……どうなったんだろう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る