第13話

琴歌さん達から離れろと言われても、前提として琴歌さん達と話すようになってから今まで僕から話しかけたことは無いはずだ、いつも僕は話しかけられる側で……それを離れろというのは無理があるだろう。


「言っておくけど僕は話しかけてるわけじゃないから゛離れる゛というのは無理かな。あの二人と仲良くなりたいのなら僕にこんなことするより別のことをした方がいいんじゃないかな?」


「お前が邪魔なんだよ、いつも仲良く話してるお前がな。俺だけじゃない、他の奴らが話しかけようにも琴理はお前以外に興味が無い……だからお前に興味を持たせなくすればいいと思ってな」


いやぁ……そんな面倒くさいことしてる暇があったら別にできることがあるでしょ。確かに琴理さんは頑なに僕以外の男子と話そうとしないけどさ、直接琴理さんに話しかけるんじゃなくてまずは琴歌さんと仲良くなった方が手早いかもしれない。

 ︎︎琴理さんの話すラインはおそらく琴歌さんとになった人だと思うんだよ。


「……僕を殴って何になるの? 一応ここは学校ってことを忘れない方がいいよ、僕がこのまま職員室に行けば君はもう一度生徒指導室だよ」


「職員室に行かせないから何も問題は無い」


なるほど、だから最初は姿を現さずに僕が奥に進んでから姿を現したのか。今の構図は相手が校舎裏に行く道に居て僕の後ろはフェンスがあって通れない、僕が今通ろうとすればもちろん邪魔をされるだろう。


「七時からやらないといけないことがあると言ってたな、お前が離れると言うまで俺はここで邪魔をし続けてやるよ」


面倒くさい、本当に面倒くさい。


走って行こうにも道が狭いし、掴まれるだろうし後ろのフェンスは登れる訳では無い、それに最悪なことに校舎内からここを見れるような窓もない。さて、どうやって帰ろうか……誰かこいつの大声に気づいて通ってくれないかな。

 ︎︎まだ放課後になってからそこまで時間は経っていない、先生の手伝いとか生徒会の人は学校に残っているかもしれないけど、普通に考えたら来ないよなぁ……。


「帰りたいのなら早く言えよ、もうあの二人とは関わらないってな」


「関わってる訳じゃないってさっきも言ったよね?」


「だからあの二人と離れて、話しかけられても無視しろ。それで興味が無くなるまでそのままにしておけ」


まぁ確かに会ってない場合はそれで友達じゃなくなるかもしれない。僕と二人が同居してる以上は僕と二人の関係を途切れさせることは不可能に近いのである。

 ︎︎言う通りにして帰ってこのことを伝えるだけでもいいけど、そうしたら学校で話すことが出来なくなるからね、それは僕にとっても避けたいことである。


「たとえ二人が僕に興味が無くなったとして、君と話してくれるとは限らないと思うけど?」


「お前という邪魔がいなくなったら何回もトライするだけだ、それか無理矢理だな」


一回目の生徒指導室行きで学んでて欲しかったなぁ……。そんな事したら二回目は確定だし流石に琴葉先生も忠告だけで済ましてくれるかな? 公私混同はしないらしいけど二回目で抑えられるのかな……。


「いやぁ、そんな事しようとするやつは琴歌さん達だけでなく他の女子とも仲良くなれないでしょ……。僕なんかに構わずまともになれば?」


「言わせておけば……後悔しても知らないぞ」


次に僕が見た光景は腕を振り上げてこちらに向かってくる姿。僕は武術を習ってるわけじゃないしこの場所は広くもない、避けられるはずは無いけど僕は腕で守ることなくその姿を眺めていた。


「はい、そこまで。ここがどれだけ周りから見られない場所だろうとあれだけ大声出してたら流石に外に居たら誰かは気になって見に来るさ」


やってきたのは琴葉先生、後ろにはピースをしてる朱里さん。僕は朱里さんがこっちに気づいて先生を呼びに行ったことを見ていたので先生がやって来るまで話を長引かせていた。

 ︎︎向こうは僕が逃げれないようにしたつもりだったんだろうけど、そのせいで後ろにいる人に気づけなかった。


「暴力は良くないな、その拳が当たっていれば罰は重くなっていただろう。姫乃が私に伝えに来なければ危ないところだったな? 君たちはもう帰るといい、あとは私の仕事だ」



§



後始末は琴葉先生に任せて朱里さんと一緒に帰っているのだが、そういえばどうしてあの時間に朱里さんは学校にいたのだろう。


「ねぇ朱里さん、なんであの時間まで学校に残ってたの?」


「こんなでもボクは一応生徒会に入ってるからね、それで仕事が長引いちゃったんだよー。それで話し声が聞こえたから見に行って先生を呼びに行ったかなぁ、やばそうな感じだったし」


「僕はあのままだったら多分殴られてたし助かったよ、ありがとう」


「えへへ、どういたしましてっ!」


想定外のことでだいぶ時間を取られちゃったし早く帰って晩御飯を作らないと。琴歌さん達はもう帰ってるだろうし、待たせたら行けないからね。


僕はいつもより少し早足で家に向かった。

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