第11話

「放課後、生徒指導室に来るように。ちょっとした話がある」


「それはちゃんとした呼び出しですか? それとも職権乱用ですか?」


「人聞きが悪いな、ちゃんとした話をするつもりだから何も問題は無い」


生徒指導の先生、もとい琴葉さんに呼び出される場合はどっちの話か分からないんだよね。普段の学校生活なのか、僕たちの家での話なのか……学校生活の相談なら呼び出さないといけないんだと思うけど、家のことならスマホで済まして欲しい。



§



「いやー悪いなわざわざ来てもらって、私もスマホで済ましたいところだが学校のことだから一応呼んでおこうかなと思ってな」


「そうですか。それで、教室の外に人がいる件については何も問題は無いんですか?」


琴理さん達帰る予定だったが急に呼び出されてしまったので生徒指導室の外には琴歌さんと琴理さんがいる。普通に中で話している内容が聞こえそうだが問題ないのだろうか?


「どうせ外にいるのは琴理と琴歌だろ? 聞かれても別に大丈夫だ、それ以外の人ならどこかに行ってもらうつもりだけどな」


「あの二人ですし、男子たちが寄って来てるんじゃないですか? 僕、耳が良いので分かりますけど、話し声が四つ聞こえます」


「生徒指導室の前でナンパか、随分勇気のあるやつじゃないか」


いや、話してるってのがわかるだけで内容は分からないからナンパかは分からないですよ? まぁ月詠姉妹に近づく時点で大体は察せるけど、二人とも美少女だからなぁ。

 ︎︎とりあえず廊下に出てみるが案の定二人が男子に絡まれていた、まぁ琴理さんがいるし無理やりということは無い。


「無理やり誘うというのは感心できないな、しかも生徒指導質の前で、だ。どうする? ここで引けば勘弁してやるが、それでもしつこく二人に付きまとうのなら今すぐこの部屋に入れてやってもいいんだぞ? 良かったな、滅多に入れない特別な部屋だぞ」


「先客がいるから入れねぇよ!」


「別に悪い事をしたから呼び出したわけじゃないさ、個人的に話したいことがあったから呼んだまでだ。あと……お前今、タメ口を使ったな?」


その男子は琴葉さん、今は生徒指導の先生に部屋へ引きずり込まれてしまった。まぁやった事としては向こうの方が悪いしね、断ってるのにしつこく誘い続ける理由が僕には理解できないかな。


「あんなことがあったけど……とりあえず帰ろうか、大丈夫だった?」


「大丈夫よ、私は昔からそういうことには慣れてるから。琴歌は優しすぎて追い払うことが出来ないから私がそばに居てあげないとダメなんだけどね」


確かに琴歌さんは優しすぎてお誘いを断らなさそうだし、さっきだって琴歌さんだけだったのならあのまま押し切られていたかもしれない。



§



「はぁ、生徒指導の先生というのは役割が少ないがその役割一つの労力が大き過ぎるな」


「お疲れのようですね、琴葉先生……いや琴葉さん。もう大丈夫なんですか?」


「私か? ずっと引きずってても仕方ないだろう。お前の方こそ、尊敬する先輩が殉職したんだ、気にする事はあるだろう?」


桜木大和さくらぎやまと、警察時代の後輩で私と白鳳と一緒に働いた仲だ。私と白鳳が結婚すると決まった時は私たち異常に喜んでくれたか、懐かしい思い出だ。


「僕なんかより琴葉さんの方がよっぽど辛いでしょうに。警察をやめて、双子を産んですぐに白鳳さんは刑務所の火災で亡くなってしまったんですから」


「警察という職業上、常にそういうリスクを背負ってるということだ。白鳳は人のために働いて……そして居なくなった、白鳳は人を守ったんだ、それ以上は求めないさ」


白鳳のように人を守りたかった……だけど私は警察をする訳にはいかない、私がいなくなったら娘は頼る相手がいなくなるからな。だから私は学校の職員になった、そして経験を活かし生徒指導の先生として今に至る。


「私は生徒たちの笑顔が見られればそれでいい。もしも不審者が出ようものなら私とお前でボコボコにするさ」


「僕を勝手に入れないでくれますかねぇ、まぁ行きますけど。それが警察官だった僕の役割でもありますから」


「まぁそうだな、実質そういう時は私たちに頼まれるはずさ」


学校に不審者が出た時にどうにかするために学校の職員になったまでもある。偶然なことに私が配属された高校に娘が受験したからな、別に娘がいるからやる気を出す訳じゃないが、守るべきものがいるとなるとやる気が出るというものだ。


「そういえば最近再婚したと聞きましたけど、どうです?」


「どうと言われてもな、私は楽しく過ごしてるさ。その再婚相手の子どもがこの学校にいるんだが、今はその子と私の娘が同居してる。私たちとは離れている」


大事な人を失った同士、分かり合えるところは多くある。蒼弥さんはもう二度と大事な人を失いたくないと言ってとても私を守ってしてくれている。い本当だったら私が守る側になんだろうが、守られる側というのも悪くはないな。


「そういうお前も結婚するそうだが、大事にしてやれよ。警察官という危険な仕事だが、彼女さんを置いて居なくなるなんてことはするな。

 ︎︎置いてかれた側の気持ちも考えるんだな、辛い時にお前が手を差し伸べることにどれだけの力があるのかをしっかりと考えろ」


「琴葉さんが言うと重いですよ……」


いつも大和雑談をして一日を終えている気がするな。まぁそんな日々が私にとって一番楽しいんだが。


「蒼弥さんは私の前から居なくならないでほしいな」


───


しばらく投稿休みます!

くたばってほしいよテストさん

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