第7話
日曜日は琴歌さんたちが部屋で服を片付けたり持ってきてもらっていた家具を置いたりと、色々していたのでそこまで話すことはなくご飯を作ったら知らせるぐらいだった。それで暮らし始めてすぐわかったことなのだが……琴理さんが全然起きない。
︎︎日曜日になって僕が朝起きてご飯を食べ終わっても琴理さんは寝ていて、部屋の中に入ったら怒られそうなので琴理さんは琴歌さんに起こして貰った。
怒られないためにも今日も扉を隔てて声をかける。
「琴歌さん、今日は学校だから早く起きて。ご飯はもう作ってあるから」
「あの天さん、私は起きてるんですけどお姉ちゃんが……。私はお姉ちゃんを起こしておくので先に食べておいていいですよ」
「もう食べ終わってる、琴理さんは僕がいたら邪魔だろうからね」
2日間の対応だけでわかるが琴理さんは僕と仲良くする気は全くない。ただ、琴歌さんと一緒にいても何も言ってこないし、ずっと僕のことを見ている気がする。
︎︎最初は嫌だと自分で言っていたのに琴歌さんが行くと言ったら着いてきた、まぁ妹が心配なんだろうけどさ、一緒に暮らすということは今みたいに普段見せないところも見られるということだからね? 別に僕は何もする気は無いし琴歌さんだけが来ても構わない……と言っても信用出来ないから着いて来たんだろうなぁ。
「それじゃあ僕は二人の迷惑にならないように先に学校へ行くから、家の戸締りをよろしくね」
「えっ、一緒に行かないんですか? 別に私たちは迷惑だなんて思いませんよ」
「琴歌さんたちが思わなくたって、周りの目があるんだよ。琴歌さんみたいな容姿が整っていて、成績優秀な人と僕みたいな至って普通の人が一緒にいたら周りは違和感を覚える。
︎︎周りからしたらあの男は誰だってなるし、他の男子からしたら琴歌さんと一緒にいること嫉妬したくなる。嫉妬されたら僕は何かされるかもしれない、結局一人で行くのは琴歌さんたちの為じゃなくて僕の為だね」
声をかけてくる琴歌さんを無視してぼくは1人外に出た。僕にとっても琴歌さん達にとっても、一緒に行かない方がいいことは多いと思う。
︎︎僕は嫉妬されないためにも、琴歌さん達は変な噂が立てられないためにもいつも通り琴理さんと2人で行った方がいい。
別に再婚して同じ家に住むことになったと説明すれば綺麗に収まるのかもしれないが、僕が隠している片親ということを言わないといけないのだ。まぁ言う時は琴歌さんたちの方も片親ということを明かすことになるのでバカにされるということは無いかもしれないが……結局僕が臆病でまたあんな目に遭うのが怖いんだ。
§
「話は聞いてたけど、言ってることは半分は合ってて、半分は間違ってる。私たちと一緒にいたら嫉妬もされるし噂も経つと思う、でも私たちは一言も迷惑だなんて言ってない」
あの男、天が一人で出ていったから数十分後、私はいつも通り琴歌と二人でで学校に向かう。出会ってまもない私が言うのもあれだが天は過去のことを引きずりすぎてる、中学の時に何があったか詳しくは知らないけどその時の人がこの高校にいる訳じゃなさそうだし、気にせず過ごせばいいのに。
「お姉ちゃん、いくら男子に苦手意識があるからといって天さんにきつく当たりすぎですよ。天さんは中学の時の男子たちとは違って私たちのことを理解してくれるんですから」
「わかってる、でも私からしたらまだ分からないことだらけだから。ゆっくりとお互いを理解し合って、仲良くなっていけばいい」
私はクラスが違うから家でしかそのチャンスがない、琴歌はクラスが一緒だし既に仲が良さそうだから気にする必要もないか。私が天とどう関わるか、最初の印象は悪いだろうし結構難しそうかな。
まぁでも私は琴歌のように仲良くはできない、琴歌のように上手く立ち回れない。どちらかと言うと琴歌は優しかったお父さんの面影が強くて、私は気の強いお母さんの面影が強い。
︎ ︎︎私と琴歌は見た目も声も何もかもが似ているけど、中身だけは全然違う。だから私は琴歌のように上手く天と仲良くなることは出来ない。
正直、私は姉でありながら妹である琴歌に劣ってることが多い。学力だったりとその他諸々で……私は琴歌には勝てない。
︎︎別に私は頭が悪いわけじゃない、ただ琴歌より劣っていると言うだけだけど、姉として気にならない訳では無い。
「琴歌、私は天と仲良くなるのが難しいからさ、私が天と仲良くなるためにも色々アシストしてくれないかな? 最初は突然あんなこと言われて酷いこと言っちゃったけど、琴歌の言う通り天は私たちの気持ちが分かるわけだし」
「まぁ今日はもう無理ですけど、まずは一緒に通学するところからじゃないですか? そこから一緒にご飯を食べたり色々したりすれば仲良くなれますよ。それに私たちは同じ家に住んでるんですからチャンスは沢山ありますって」
「それもそうか、急いで失敗するよりはゆっくりと確実にやった方がいいしね」
今日帰ったらちゃんと天と話してみることにしよう。
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