いじめの真実。

@kasago1192

第1話

 僕は生きていても良い人間でしょうか?



 ある日学校に行くと僕の机には、ビーカーに入った一輪の白い花と、お線香が置いてあった。

 

 僕の戸惑ってる表情をみて、クラスのみんなはクスクスと笑っていた。


 机の中には”遺書”と書かれた封筒と色紙が入っており、遺書には「ボクは生きていたら人を不幸にしてしまう人間です。クラスのみんなと話し合った結果、屋上から飛び降りる事になりました。」と、書いてある。


 もちろん僕は、そんな事を書いた覚えは全くない。


 色紙には「天国でも頑張って生きろよ。」「居なくなってくれてありがとう。」など、クラスの皆からの寄せ書きが書いてあった。


 寄せ書きの端っこには、小さな文字で「君のお陰でクラスがまとまったよ。」その言葉を書いたのは担任の先生だ。



 二年ほど前から、僕はクラスの皆からいじめを受け。

 最初の頃は、プロレスごっこで倒される役(悪役レスラー)をさせられ、だんだんエスカレートしていき、気づいた頃にはお金までたかられるようになっていた。


 日に日に元気がなくなっていく姿を心配した母は、学校での友人関係などいろんなことを聞いてきたが、僕は笑って「学校楽しいよ!友達みんな優しくしてくれるんだ!」と、とっさに嘘をついてしまった。



 そんなある日、買い物中の母親に、公園で僕が袋叩きにあってる姿を見られてしまい。

 殴られているのが僕であることがバレない様、顔を隠したつもりだったが、その日の夜、両親に呼び出された。


 両親の部屋に入ると、そこには目を赤めた母親と、悲しそうに僕を見つめる父親がいた。


 何分かの沈黙の後、父親から「転校するか?」と、言われたが僕はそれを全力で断った。


 

 僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ。



 僕の前にいじめを受けていた女の子は、顔だちも良くとても綺麗な子だった。


 恥ずかしながら、僕はその子に一目惚れをしてしまっていた。


 彼女は校内で噂されるほどの美人であったため、そのことを面白く思わない人たちが何人かいたみたいだ。


 学校の裏掲示板をキッカケに、SNSでは日に日に彼女の悪口が書かれるようになり、気づいた頃には彼女はクラスのみんなからいじめを受けていた。



 ――放課後、彼女が一人、机に書かれている悪口を消す姿を目にした。


 「これ、なかなか落ちづらいよね」と声をかけ。


 僕は雑巾を手に取り、机に書いてある悪口を消し始めた。

 

 彼女はそんな僕の姿をみて。


 「……ありがとう。」


 にっこり僕に微笑んでくれた。それが彼女と初めて交わした会話だった。


 

 その後も、彼女のいじめはだんだんエスカレートしていった。


 プールの時間では足を引っ張られ、制服はハサミで切り刻まれていたり、下着を隠されていたらしい。


 そんなことがほぼ毎日のように続き、彼女は放課後、よく一人で泣いていた。


 泣いている彼女に、飲み物を持って話しかけることが、ここ最近の日課になっている。


 「君って優しんだね……」


 そう彼女に言われた時は、天にも登るほどの嬉しさがあった。

 

 彼女には申し訳ないが、学校での楽しみは放課後、二人だけの時間だった。


 日が増すごとに、彼女の笑顔が消えていくのは心配だったが、僕はこの時間を大切にしたいと思っていた。


 不謹慎に聞こえると思うが、僕にとってはこの時間が青春だった。


 

 ――そんなある日、彼女は学校に来なくなってしまった。


 先生の話によれば、彼女は転校してしまったそうだ。原因はいじめだったらしい。


 彼女にもう会えないと思うと、目から自然と涙が溢れてきた。

 


 その時、僕は心に決めた。


 僕と彼女との時間を壊した奴らに復讐すると。


 まず最初に思いついたのは、いじめの主犯格を、先生や教育委員会に告げ口しようとしたが、たぶんそんな事をしてもあまり効果がないと思う。


 大人のことだから、どうせ「証拠はあるのか?」などと言って、うやむやにされるのが目に見えている。


 あ!、、そうだ!、、


 僕がいじめられて、いじめの証拠を集めればいいんだ!



 その日から、僕の二年間に渡る作戦が始まった。


 

 まずは、僕が管理人をしている学校の裏掲示板に、自分の悪口を何個か書いてみた。


 2〜3日が過ぎた頃、サイトには僕の悪口が溢れていった。


 よし!思った通りだ!


 僕は24時間365日、いついじめが来てもいいように、ボールペン式の盗聴器を、欠かさず毎日身に着けることにした。


 そして悪口が書かれ何日か経過した頃、クラスの男子から、殴る蹴るの暴行を受けるが、彼女に会えない心の傷に比べれば、こんなの痛くも痒くもない。


 日に日に身体には傷が増えてきてるが、証拠が集まってると思えば、この傷さえ愛おしく思えてきた。


 僕がいじめられて一年が経った頃、彼女が精神科に入院している事が分かった。


 今すぐお見舞いに行ってあげたかったが、僕はまだ何も成し遂げていないと思い、会いたい気持ちをグッと堪え、復讐に専念することにした。


 

 ――そして復讐当日。


 僕は一人でも多くの人に、いじめをうけていた事を知ってもらうため、SNSに証拠の動画と音声を投稿し、拡散を呼びかけた。


 投稿して一時間ほど経った頃、SNSではいじめの話題でもちきりになった。


 ネットの特定犯が学校を特定し、いじめの主犯格、いじめに関わっていたクラスメイトをすぐさま晒上げてくれた。


 クラスのみんながどんな反応をしているのか気になり、SNSのプロフィール欄をみにいくと、ほとんどのクラスメイトがアカウントを消してしまってた。


 次の日学校には、大勢のテレビの記者で校門が埋め尽くされていた。


 僕は何事も無かったかのように教室に入り、授業を受けたがネットで晒されたクラスメイトは誰一人登校してくれなかった。


 放課後になり、クラスメイトの事が気になりSNSで調べると、いじめに関わった人物とその家族の写真、仕事先まで晒されていた。


 そしてクラスメイトたちは、もう二度と学校に来ることはなかった。



 僕がいじめの投稿をした二カ月後。



 充分すぎる位の状況証拠もあり、いじめに関わった何人かの父親は仕事をクビになっていた。


 もちろん僕をイジメていた人たちは、みんな転校したが転校先ではいじめられているみたいだ。


 主犯格に至っては、事件の後すぐさま引っ越しをしたが、引っ越し先もすぐにバレてしまい、家には家族では食べられない量の出前が届いたり、道を歩けばケータイカメラを向けられたりして、相当ストレスが溜まっていたんだろう。



 今朝、ニュースでその家族が一家心中していたことが報道されていた。




 さてと、僕の復讐も終わったし。

 あの日の放課後のように飲み物を持って今から会いに行くね。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いじめの真実。 @kasago1192

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ