第5話 ドキドキ

☆(矢島幸太郎)サイド☆


菜穂の様子がおかしい気がする。

俺は何故だろうと顎に手を添えながら考えてみるが。

答えは結局出ずじまいだったので途中で考えるのをやめた。


それから俺は校門付近で菜穂を待っていると。

菜穂がやって来た。

俺の顔を見てからビクッとなる。

何でそんな顔をするんだ?


「菜穂?どうした?」」

「い、いや。幸太郎の顔が.....いや。何でもない」

「何だよ?顔に何か付いているか?」

「い、いや。そういう訳じゃない。ご、ごめん.....」

「今日のお前は何かおかしいぞ。菜穂」


俺は菜穂に苦笑する。

すると菜穂は恥ずかしいのか「えへへ」と照れ笑いをした。

そんな姿を見つつ「遊びに行くか」と笑顔になる俺。


それから俺は菜穂の手を握ろうとした。

これは俺達の恒例の挨拶だが.....菜穂はビクッとしてから掴まなかった。

それどころかみるみる真っ赤になっていく。


「な、菜穂?」

「え、あ、うん!?な、なに!?」

「い、いや。お前さん真っ赤になっているぞ?」

「へ、あ、うん!?」


やっぱり菜穂の様子がおかしい気がする。

俺は菜穂の顔を覗き込む。

すると菜穂は「な、何か!?」という感じの反応をして後退りする。

ちょっと嫌われているのかな?


「菜穂.....今日はちょっと苦手な日か?」

「え?.....あ.....いや。そういうのじゃないの。.....ただちょっと幸太郎に触れられるのが恥ずかしいの.....」

「え?俺に触れられるのが?それはどういう意味だ?」

「そ、それは内緒。.....内緒だから」


そして菜穂はモジモジしながら「じゃ、じゃあ行こうか」と笑顔になる。

それから俺の前を歩く菜穂。

歩幅が少し早い気がする。

何だろうか。

そんな事を言われたら俺まで恥ずいのだが?


「.....じゃあ先ずはカラオケ屋でも行くか?」

「お。良いね。歌をぶちかましたいよ」

「そうか。.....なら行ってみるか」

「今日は恋愛の曲が歌いたい」

「そ、そうか.....随分積極的だな」

「え?.....あ」


菜穂はまた真っ赤になる。

俺はその姿を見ながら少しだけ恥じらう。

それから頬を掻いた。


全くな、と思いながらだが。

そして俺達はカラオケ屋にやって来る。

個室に入った。


「で?恋愛の曲って何を歌うんだ?」

「アクア◯イムズかな」

「.....へぇ。.....ちょい昔のバンドの曲だな」

「そうだね。私は.....アクア好きなんだ。だから」

「ああ。そういう事か。.....お前が好きなバンドなんて初めて知ったわ」

「そっか。ごめん」


そして菜穂は曲を選択して画面を見て歌い出す。

安定感といい(やっぱり上手いな)と思いながら菜穂を見る。

すると菜穂はマイクをもう一個握った。

それからそれを俺に渡してくる。


「な、菜穂?」

「ねえねえ。歌って。.....幸太郎」

「デュエットって事か?俺は.....音痴だぞ?」

「そんなの関係ないよ。どんな歌でもスパイスになるんだから」


音痴っていうか音がずれているのだが。

思いながら俺は苦笑いを浮かべながらだったが念を押されそのまま歌う事になった。

それから俺たちは歌い始める。

過去の曲ばっかりだが。

これ菜穂が好きなのかな?


「菜穂。これ随分と昔の曲ばっかりだな」

「そうだね。私、一昔前の曲が好きなの」

「ああ.....そうなのか。.....それは良い趣味だな」

「今のアイドルとかそういうのは付いていけないもん。昔のバンドは最高だよ」

「そうか」


そんな会話をしながら俺は菜穂とデュエットするが。

やはり菜穂の素晴らしい歌声に比べて俺は劣っているな。

思いながら俺は何とか音を合わせようとする。

すると菜穂が俺の手を握ってきた。


「な、菜穂!?」

「何だか盛り上がってきたからね。あはは」

「い、いや。盛り上がってって」

「さっきはゴメンね握れなくて」


それから菜穂は俺に寄り添って来る。

そして続きを歌い始める。

俺は優しく包むその手に驚きながら赤くなっていたがやがて「全く」と言いながら目の前の画面の音程バーを見つつ集中し始めた。

すると何でか評価点数が89点が取れた。


「幸太郎。やったね」

「.....そうだな。.....音痴者が混じっていて随分と高い点数が取れたもんだな」

「幸太郎の歌声って確かに鼻声がちょっとあるけど愛おしい声だよね」

「そんな馬鹿な。俺は音痴だから」


そんな感じで菜穂を見る。

すると菜穂は壇上から降りようとして躓いた。

それから落ちようとした菜穂を慌てて「あぶね!」と受け止める俺。

ちょうどその小さな顔と見つめ合う形になった。


「.....あ、ありがとう。幸太郎.....」

「そ、そうだな」

「そ、その。.....そろそろ離して.....」

「そうだな.....すまん」


菜穂を解放する。

すると俺は緊張故かブワッと手汗が出た。

それどころか真っ赤になってしまう。

何だこの感情は。

相手はただの菜穂なのに.....?

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(修正版)彼女がNTRた。そして女子達はエロ暴走した アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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