第2話 幸太郎に興味の無い父親と。月子の女優の母と

☆矢島幸太郎サイド☆


翌日になった。

俺はゆっくりと起き上がりながら洗顔したりして容姿を整え制服を着る。

最後にネクタイを締めた。


それから簡素な朝食を作った。

焼いたパンにバターに蜂蜜。

全てが単純であるがこれで俺は満足だ。


にしても昨日の横の部屋のあの喘ぎ声は何だったのだろう。

うるさかった。

考えつつ俺はそのまま朝食を食べてから玄関から出ると時間が早いのにちょうど隣の住人の黒木と鉢合わせになった。

俺は目を丸くしながら黒木を見る。

凛としたすました顔をしている黒木は真顔でこう言ってきた。


「あら。おはよう」

「あ.....ああ。おはよう。元気か黒木」

「そうね。元気よ」


それからそれだけ言ってから黒木は「じゃあ」とそのまま鉄製の階段を少しずつ音を立てて降りて去って行く。

俺は「なんだ。昨日と変わらないな」と考える。

やはり気のせいだろう。


そう思っているとスマホが揺れた。

眉を一瞬顰めてスマホを見てみるとそこにやはりだが佐藤からメッセージがあった。

(今日は爽やかな朝だね)と書かれているが.....。

クソッタレだな。

何考えているんだコイツは?


「.....」


俺はメッセージに(まあな)と入力してからそのまま送信する。

別れ話をしよう。

取り敢えずコイツが地に落ちるのも見たいしな。

思いながら俺はまた会ってからそうしようと思い空を見上げる。


「.....はぁ」


そんな溜息を吐きながら晴天を見る。

曇ってないのだが曇っている様に見える。

こんな気持ちになるのは久々だな。


腹立たしさと悲しみが俺を包むのは.....ここに来る前の実家以来か。

実家、母親、父親、絶望。


「.....」


俺は本当に残された親父が嫌いだ。

なぜ嫌いかと言えば愛情をくれない。

それも母親だけ愛でて親父は.....俺には邪魔と言わんばかりの接し方しかしない。

生まれてからずっと俺が妬ましかった様だ。


(なら何故俺を生んだのだ)と思ったが。

母親が病死してさらに気が狂った様だ。

俺にはメチャクチャ冷めた感じにしか接しない。


親父はだから嫌いだ。

母親は好きだ。

母さんは俺に愛情をくれたから。


この家も(生活費は勝手に振り込むから)的な暴利な感じで俺を捨てる箱庭としてこの場所を形成した。

もう何というか(死んでくれ)的に感じた。

最悪だと思う。

親が思う事では無い。


「.....くだらない事を考えても仕方がないか」


そんな事を呟きながら俺は階段を降りた。

それから高校に登校する為に歩き出す。

近所の人達に挨拶をしてからそのまま歩いた。

金はあるのに愛はない。

は。馬鹿らしい。


☆(黒木月子)サイド☆


ヤバすぎる。

何がヤバいかっていえば本日朝から幸太郎くんに会った。

体がというか下半身が疼いてしまうのだが。

あのイケメンの事を考えるとヤバい。

私は本気で疼く体を我慢しながら高校に何とか登校する。


それから私は下駄箱に靴を入れてから上履きに履き替えてからさっさと生徒会室に向かった。

私の役職は.....生徒会の会長だ。

外見だけクールな生徒会長。

本当は根性が腐っている女の子だ。


本心から思う。

(私は変態)という事を。

だって私は.....変態行為ばかりしているから。

そんな事を考えながら私は作業をしていると生徒会室のドアが開いた。


それから「あれ?会長」と声がする。

その声の主は生徒会書記の長妻南(ながつまみなみ)さんだった。

茶色の髪の毛の2つのおさげ髪の少女。

1年生で私の後輩に当たる。

私は笑みを浮かべた。


「あら。長妻さん。おはよう」

「はい。おはようございます会長。何をしているのですか?」

「書類の手伝いをしているのよ」

「ああ。そういう雑用は私達メンバーが.....」

「まあ私がしたいって思ったからね」


私は会話しながら柔和になる。

すると長妻さんはその言葉に「あはは。変わらずですね。会長は優しいです」と満面の笑みを浮かべながら一緒に作業してくれる。

私は「そんな事はないわ」と苦笑した。


「いえ。だってクールで本当に憧れます」

「私はそんな良い人間じゃないわ」

「いえいえ。謙遜ですよ」

「本当よ?.....演じているだけよ」


そうだ。

良い人間を演じているだけだ。

私は根っから.....女優の母親の.....。

まあでもそれとか変態だとかはイメージダウンにしかならない。

考えながら私は首を振る。

それから印刷機を動かした。


「あ。そういえば会長は矢島幸太郎先輩と隣同士のアパートに住んでいるんですよね?」

「そうだよ?それが.....どうしたの?」

「.....いえ。その.....知らないなら大丈夫ですよ」

「.....?」


私は(何かあったのだろうか)と思いながら長妻さんを見る。

長妻さんは首を振ってから「大丈夫です」と笑顔になる。

それから私の背中を押してくる。

「ささ。会長は座ってて下さい」という感じでだ。


「ちょっと待って。まだ仕事が.....」

「それは生徒会のメンバーがすれば良い事です。.....でしょう?会長」

「まあそうだけど.....でも」

「いいから座ってて下さい。会長」


私は口をへの字にした長妻さんに強制的にソファに座らされる。

そして長妻さんはどんどん効率の良い作業をしていく。

流石は.....生徒会書記に選ばれた人だな。

効率が良すぎる。

思いながら私は.....長妻さんを見た。

比べて私は。

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