第13話 お仕事探しましょう(働かざる者食うべからずです)

「私。リルラに負けてる気がするの。」


突然シルラがそう言い出した。


いきなりなんてことを言い出すんだ、

とも思ったが無視すると後が面倒なので話だけは聞いとこう。


「どういう意味?魔法に関しても同じくらいなんでしょ?」


「それはそうなんだけど…」


何やら言いにくそうなことを…

私で解決できるかな…


「この前、リルラとお出かけしたのよ。」

仲が良くて大変よろしい。


「その時にリルラに聞かれたのよ。」

ほうほう、何を?


「生活費はちゃんと収めてるのか?って。」

…そりゃ大切な話だけども


「それで実際のところ、どうなのかしら?」


んー、実際どうかって言われても…


そりゃぁ、1人暮らしから居候とはいえ2人暮らしになったわけだし

前と比べれば若干、出費が増えたっちゃ増えたけどね。


まぁそれも仕方ないと割り切ってしまえば仕方ないのかもな。


「なるほどね、清華の心を読ませてもらったわ。

要は私がお金というものを稼いで来ればいいのね?」


「あのね、シルラ。この世界には

この世界の決まりがあるんだよ。シルラ、今何歳?」


「乙女に年齢なんて聞くもんじゃないわよ!!」


そういうつまらんのはいいから、さっさと答えなさい。


シルラが私の耳元に近付いてくる。

この家、私ら以外に誰もいないから安心していいのに…


「〇〇歳よ。」


「はいギルティ、だめです働けません!!」


「なんでよぉ」とも言いたげにシルラが拗ねる。

そういう年相応なとこだよ。


「じゃあさ、リルラが働けてるのはなんでだと思う?」


シルラが考え始める。


以前、病院に行った時のことを思い出せ。

あの時のリルラは私ん家にいる時と何か違ったでしょ…?


「ピコーン、分かったわ!!」


「はい、シルラさん。」


「あの時のリルラは大人っぽかったわ!!」


「大正解」


そう見かけである。


この世界には労働基準法たるものが存在する。

でもそれは人間の法律だ、エルフになら通用しないでしょ。


今のシルラは見たままの小学生、中身もそれ相応。

なら見かけだけでも変えといたほうがいい。


「シルラ、魔法でどうにかできそう?」


「んんぅ」とうなって頑張るシルラ。

その調子だ、頑張れ頑張れ。


「えいっ!!」


少し目を離した隙に

どうやらシルラは魔法が発動させたようで…


視線を戻すと、そこには私と同じくらいの美少女…


美少女…?


「何を見とれてるかしら?何度も見慣れてるでしょ?」


「えっと、シルラでいいんだよね…?」


「当ったり前じゃない」とも言いたげに胸を張る。

張られた胸は見かけの年相応でございまして…


…負けた。

何がとは言わないが…


「羨ましいでしょ?何がとは言わないけど。」


けっ!!羨めしくなんてないもんね。


なんて話はさておき、

「きちんと化けれてるじゃん、これなら大丈夫そうだ。」


「でしょ、でしょ?

私はやっぱりリルラになんて負けてないのよ。」


見た感じは病院で働いてたリルラと同じくらいの背丈になり、

声も若干変わった。


なんと言うか少し大人っぽくなった感じ?


まぁとりあえずこれで見かけの問題はクリア。

あとは…


「シルラって何か得意なことはある?」


「そおねぇ、私はなんだってできるわよ。

なにせ私はエルフだもの、魔法だって使えるもの。」


さいですか、なら一通り見て回ってもいいかな。


大人になったシルラを連れて外に出る。

なんかこれだと姉妹みたいに思われるんじゃ…


最近のシルラはこっちにもずいぶん馴染んだようで

移動に風魔法?を使わなくなった。


あれ、使うと結構な被害が出るんだよなぁ…


シルラは一応、制御はできるものの

それでも一応の被害は生じる。


私の家の近くには色々な店がある。

そこから回ってみようか。


◇◇◇


ヤバイ、どこにもバイト募集の張り紙なかった…


シルラも若干へこんでる。

「私なんて、私なんて、必要とされてないんだわ…ははは。」まで言っちゃってる。


「まぁ、今日は運が悪かったってことでさ。

ホントこれに関しては時間の問題ってこともあるしさ…」


少しばかり元気を取り戻したようだ。


「じゃあせめてここで換金できるものを作るわ!!」


は!?


高らかに宣言してシルラはそこら辺に

いくらでもある石を手に取った。


その姿が大人から子供に変わる。


その姿が戻るやいなや、

意志の周りに魔法陣が現れる。


いつにない集中、

何が起きてるっていうんだ?


日も落ち、ビル群に沈み始めた太陽が隠れ

暗くなり始めた街並みを金の光が満たす。


光が収まった時、

シルラの手の中にあったのはただの石じゃなかった。


私の見間違いじゃなければ…


「それって金?」


ふふんと胸を張るシルラ。

この様子は…まさかね。


「よく分かったわね清華、これは紛うことなき金よ!!

これで私がこれまでお世話になった分、足りるかしら?」


足りるんだけどさ…

今はそれどころじゃない。


「あのね、シルラ。

気持ちは嬉しいんだけどこっちの世界では金は貴重なの。

そんなにポンポン作っちゃったら貴重じゃなくなっちゃうんだ。

そしたらこっちの世界は大混乱になるんだよ。

だから気持ちだけ受け取っておくね。」


まさかこんな場所で、この年になって経済の話をするなんて思わんかった。

これでシルラも分かってくれるといいんだけど。


シルラはしぶしぶと金の塊を懐にしまった。


「じゃあ帰ろっか。」


「分かったわ。」


「仕事、見つかるかなぁ?」


「時間の問題なんでしょう?きっと見つかるわよ。」


その強気な姿勢、ぜひ見習いたいもんだ。



これは余談だが

その後、例の金塊はうちのタンスの上に飾られることになったのである。

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