第8話 クリスマスの予定は何ですか?(ちょっと変わった思い出を!!)
今日は何の日かお分かりだろうか?
そう、世間一般には「クリスマス」と呼ばれる日。
でも私には特に用事もない。
ていうか現在進行形でパソコンに向かってるんだけどね。
私みたいな社畜にとっては
今日という日も年末が差し迫った1日に過ぎない。
たださぁ、
クリスマスだよ、クリスマス。
仕事が終わった私なら
ちょっとは早上がりさせてくれてもいいじゃん。
なのに私が帰れない理由、
それは…
「花森ィ!!」
さっきからうるっさい部長だ。
これは少し前のこと
新人のミスが発覚した。
こんな時に限って、期限まで猶予がないときに見つかった。
うちの部署で動ける人間を総動員、
もちろん社畜の鏡の私も総動員。
もぅなんでなんだよ…
シルラも1人、家にお留守番させてる。
とりあえず連絡は入れといたけど、そんな問題じゃない。
今日の分の仕事が終わってたのは私だけ。
ということは必然的に私に回ってくる量が多くなるってわけだ。
社会って理不尽だよね。
「花森ィ、訂正した書類できたかァ?」
「できました」
◇◇◇
「花森ィ、お詫びのメール送ったかァ?」
「送ってます」
◇◇◇
「花森ィ」「花森ィ」「花森ィ」「花森ィ」「花森ィ」…
(…)
(うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)
心の中で叫んだ瞬間だった。
頭の上に魔法陣が浮かんだ…気がする。
半ば半狂乱になってた私に詳しいことなんて分からない。
そしてその瞬間、
周囲の時間の流れが遅くなったように感じた。
…いや、遅くなってる?
途端に頭が冷静になる。
周りのみんなに異常はなし。
いや、異常はあるんだ。
1つだけ挙げるとすれば極端に動きが遅くなってるってこと。
さっきから私の苗字を
馬鹿みたいに呼び続けてた部長も
間抜けな顔をさらしてゆ―――――っくり動いている。
うん、この人はこのままでいいや。
私が速くなったのか、みんなが遅くなったのか
疑問は残るが今は好都合。
「さて、年内最後の大仕事だ。」
◇◇◇
終わったぁ…
死ぬぅ。
あの後、私がどれくらいの時間動き続けたのなんて分かんない。
それでも終わった後には
気付いたら普通の時間の流れに戻っていた。
そして一気に来る疲労。
溜まった疲れなんて、たまったもんじゃないよ。
はは、ははは
すみませんでした。
こんなこと言わないとまともな精神保てない。
私が仕事を終えて時間が通常の流れに戻った時
みんなは不思議そうな顔をしていた。
だって残ってた仕事が消えてるんだもんね。
さて、誰のせいやら。
仕事は終わったし今度こそ帰る。
明日だってまた出勤なんだから。
「じゃあ、お疲れ様でしt…」
「花森ィ、なに帰ろうとしてんだァ?」
あぁそうだ、この人も元に戻ってたんだった。
ずっとあのままだったらよかったのに…
ここだけの話、
あの私だけがいた時間で仕事を片付ける時の唯一の安らぎが
「部長の間抜けな顔」
だったことは内緒だよ。
はぁ、この日とやっぱり何にも分かってない。
知ったかぶって偉そうな顔してるだけじゃないの?
「新人のミスに関しては全て終わりましたので、
それでも何か用事がありますか?」
一瞬、呆然とした後
「い、いや、じゃあいいんだ…」
そう言って下がっていった。
みんなの見てる前でハズくなったんだろうなぁ。
それではみなさん、お疲れさまでした。
早く帰りなよ。
私はふらつく足で会社をあとにした。
会社から出て数歩歩いた時だった。
視界が揺れる。
(あっ、これヤバいやつだ。)
そう思った時には遅かった。
どんどん地面が近づく。
クリスマスにこんなのツイてない。
ホントつくづく嫌になる。
刹那、風が吹く。
いつまで経ってもぶつかる様子がない。
ん?どうしたんだろ?
目を開くと私は宙に浮いていた。
「帰りが遅いと思ったら何やってんのよ、清華!!」
シルラがいた。
「…天使」
「な、な、な、何を寝ぼけたことを言ってるのかしら。」
今日はクリスマスだからね、
一瞬シルラが天使に見えた。
「今から家に帰るわよ。」
「ちょっと行きたいところがあるんだけどいいかな?」
◇◇◇
連れてってもらったのはとあるビルの屋上、
こっからは大通りがよく見えるんだよね。
この時期、ここら辺ってイルミネーションがきれいなんだ。
途中でコンビニ寄って
買うもの買っといてよかった。
飲むもの飲みながら
ビルの上から眺めるイルミネーションもまたいい。
「帰ろっか。」
足元に魔法陣が現れる。
視界が光に満たされた。
◇◇◇
シルラに布団をかける。
今日は随分、疲れさせちゃったかな…
まぁお詫びってわけじゃないけど
「メリークリスマス」
枕元にプレゼントをそっと置く。
日付は違うけどね。
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