第3話 お買い物には千里眼が付きもの(そんなわけありません)

やっと1週間が終わって、今日は土曜日。

目が覚めた頃には太陽もすっかり天高く昇っていた。


「お昼食べるか…」

そう言って冷蔵庫を開けるも中身は酒だらけ。


これなのじゃいけないよなぁと思いつつも

冷蔵庫の中を着々と侵略していく酒は一体何なのだろう?


これも魔法のせいか、このとんがった耳のせいなのか?


そうであればどれほど楽だっただろう。

無責任に酒が増えていくのだから、私のせいじゃないと胸張って言えたらなぁ。


はい、私のせいですね。

魔法で酒が増えるはずないよね。


ただ改めてみても自分の生活が乱れていることがよく分かる。

(これは運動しないといけないかなぁ…)

そうだ、丁度お昼ご飯もないし

少し買い物に出かけよう。


そうすればお散歩できて健康にもいいだろうし

何より、お腹が減ってきた。


早く食材買ってきてご飯作ろう。


◇◇◇


近所の商店街に着ました。


そこそこの人付き合いはあるものの

やっぱりこの距離感が苦手なんだよなぁ。


今日のお昼だけでなく、ここ1週間分の食材も買わねばなるまい。


まずは肉屋さん。

「いらっしゃい、今日もいい肉入ってるよ!!」


じっくり見渡しても何が何なのか分からない。


いや、分かるんだけどね。

視界に映る肉の全てに


何処産のものか、どの部位かが画像付きで、生産者の顔や

ましてや生産者の電話番号まで

浮かび上がって見えた。


いらんっ、そんな情報いらないよ!!


大声で叫びそうになったがなんとか押し込めて

心の中で盛大に叫んだ。


部位の説明に関しては、某サイトみたいにやたらと詳しく書いてるし

生産者の顔なんてどこで調べたの?


誰に聞くでもなく、心の中で問いかける。

もちろん答えなんて帰ってはこない。


仕方なく「見えた」なかで一番お得そうな肉を選んだ。

これでこの情報、嘘だったらホントに許さないからな.


私が選んだ肉を見て肉屋のおっちゃんが目を丸くする。

「へぇー、随分いい奴選んだなぁ。

そいつはすごくいい肉な割に安く入った奴なんだ。

お得なの選びやがって、悔しいぜちくしょう。」

どうやら見えた情報は嘘ではなかったみたいで

おっちゃんはおまけまでくれた。


これまだ一軒目なのにもう荷物が重くなった。

あとどれだけまわればいいのだろう。


同じようなことが他の店でも続き

家路に着く頃、カバンは私を地に伏せさせんとしていた。


昔はこんなもの簡単に運んでたのに…

やはり年なのか?そうなのか?


…でも私まだ25なんだけど。


商店街を出たところで卵を買い忘れたことに気付いた。

(あぁ、戻らなくちゃ。)

ホントのこと言うなら戻りたくない、

でも卵がないって、ねぇ…


面倒だが戻ろう

これが終われば家に帰ってベットにダイブだ。


積まれた卵の前に立つ。

最近、鳥インフルエンザか何かは知らないが

やたらと卵が高いんだよなぁ


なんて思いつつ1つ取ろうと手を伸ばす。


その時だった。

目に映ったのは少し離れたスーパー。


そこにも卵があった。


「!!」


目の前の卵よりも安い、


視界は再びスーパーに戻る。

近くに山下さんが歩いている。


―これだっ!!―


確か見えた卵には

「お1人様、お1つまで」の文字。

これならいけるっ。


我ながらケチだとは思う、でも節約しないとお金なんてすぐに飛んでいく。

社会人になって嫌というほど知らされた現実である。


だからこそ、

手を伸ばせっ!!限定品の卵にっ!!


回れ右してスーパーに向かって走る。

今スーパーが見えている「これ」は千里眼だろうか?

私も知らないような道筋が目に映った。


これカーナビみたいだなんて悠長なこと考えてる暇はない。

その道筋通りに走ると

すぐにスーパーが見えた。


その横で腰に手を当てて飲み物を飲む山下さん、発見。

「事情は後で、来て。」

これこそ追い詰められた人間の底力、

彼女もろとも、卵売り場に突撃した。


◇◇◇


ぐったりしている山下さんを連れてスーパーを出る。

彼女には悪いことしちゃったなぁ。


お詫びにジュースを手渡す。

毎度毎度、この子に何かしら迷惑かけてる気がする。


これからも迷惑かけるつもりじゃないけど

もしかしたら、もしかしたらね、何かあるかもしれないからさ。

前借りとしての意味も持たせてね


渡しておいた。


彼女はぐったりとしながらも

手でグッジョブしている。


ホントごめんね。


1週間分の食材の購入が終わった。

ようやく用事が終わった。


さぁ家に帰るぞ、

今日やりたいことも終わった。

心なしか足取りも軽い。

そのせいだろうか、家にもすぐに着いた。


勝ってきたものを全部冷蔵庫に押し込める。

そして着替えたらそのまま寝室へGo!!


あぁ、布団の魔力というものは恐ろしい。

意識が少しずつ刈り取られていく。


―なんだか大切なこと、忘れてる気もするけど、まぁいいy…。―


◇◇◇


しまった、本当にやってしまった。


ちょっとだけ寝るつもりだったのに

起きたら現在、午後10時。


起きた時の目的、忘れてたぁ!!

ご飯作るはずだったのに買い物だけで精一杯になってた。


時間が時間だしなぁ、今から食べたら確実に明日に響く。


もっと若い頃はこの時間帯から夜食を食べたなんて

そんなこと思い出すのも私が年を取った証拠だろうか。


自分で考えてて悲しくなってきた、もういいや。

明日こそちゃんとした生活しよう。

明日のことは明日の私に任せまーす。


おやすみなさい。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


4話は来週水曜日、12月6日に更新します。

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