第2話 魔法が使えるのか?使えてしまうのか?(使えても使い道がありません)

私は市内に勤める25歳OL、

現在は市内でも割ときれいな街並みの場所で仕事をしている。


そんなことはどうでもいいんだ。


ある日、朝起きたら目覚まし破壊してそのまま職場へ

職場で鏡を見たら耳がとんがってた!?


今日も出勤、

朝に鏡を確認したらやっぱり耳はとんがったままだった。


これいつまで続くの?


休日出勤の翌日、目覚ましを買いに行って

家電量販店の人にめっちゃ変な目で見られた。


まぁね、あれだよ、人目が多いところに行った私も悪いけどさ、

1日経ったら治ってるもんじゃない、普通?


とは言いながらも無事に買えた私は

新たなパートナー(目覚まし)と共にスッキリな朝を迎えようと思っていた。


今までの私なら朝は目覚ましが鳴ってから起きていた、

だが今日は違った。

目覚ましのなる数十分前に自然と目が開いたのだ。


これは私にとって奇跡と言うにふさわしい。


目覚まし無しでは起きれなかった私が

目覚ましと毎朝、格闘していた私が

目覚ましに勝った!!


これもエルフっぽくなったせいだろうか?

これならエルフっぽいのもいいかもしれない。


前言撤回、

エルフっぽくなんてなるべきじゃない。


目覚ましに勝利したことに浮かれている間に

始業の1時間前になっていた。


「急げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

前もしたような全力ダッシュ。


前回と違うのは心なしか速度が速いこと

って言うより速い、確実に速い。


そしてなんなら地面から足が浮いている。

そのまま空中を翔けているような状態になっている。

速度が徐々に上がる


(これ、どうやって減速するの?)

そう、減速の仕方も何もかも分からない。


ただ分かるのは

方向から考えるに自分の会社に向かっているということだった。


考えるも速度が上がっていく。

ついには交差点に差し掛かった。


トラックが曲がってくる。

こっちだって止まれないんだよ。


―キキィィィィィィー

「馬鹿野郎、死にてぇのか!!」


「ごめんなさぁーい」

声を張り上げて言うも、聞こえていないだろう。

だって私はもうはるか彼方にいるのだから。


危うく引かれるところだった。

ホントに危ない、危ない。


そのまま同じようなことを何度も繰り返し、

その度にはるか遠くからできるだけ聞こえるように謝り続けて数分、

会社の近くにまでやってきてしまった。


道を歩く山下さんを見つけた。

いつもの癖で横に並んで挨拶しようとしてしまった。


高速で飛ぶ私が横を通過したことで

彼女はコマのようにクルクルと回転して目を回す。


―あっ、やっちゃった。―


後で何か買ってあげよう、お詫びとして。


でもね、それも全ては会社に無事につくことが前提になってるんだよ。

今その前提が崩れようとしている。


さっきまでの流れを踏襲するのなら

このまま進む→止まれない→会社にぶつかる→The End


さぁっと顔が青ざめた。

どうにかして止めねばなるまい。


どうすれば止まるかなんて私には分かんない。

確か、V=V₀+atやらx= V₀t+1/2at²やら何やら式があったはず。


動け私の頭脳、物理苦手だったけど。

こういう時くらい力を貸して、神様…


いつまでたっても神様は降りてこられなかったし

天啓もなかった。


こうなりゃ力技だ、パワーisパワーと何処かの芸人が言ってた。と思うことにするっ。

向こう2日くらいの声がガラガラになることも顧みない、

今はThe endを避けるため



「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」


◇◇◇


止まった、なんとか止まった。


パワーisパワーに負ける魔法とは、なんて思いながらも無事に出社。

いや、無事じゃないか。1人被害者がいる模様で…


あの言い訳じゃないんだけど、なんだか今日は止まれなくてさ。

なんて言うか、あの、

ホントにごめんね、山下さん。


いきなり飛び出した魔法もこんなのなら意味ないじゃん。

ほどほどにしようよ、ほどほどに。


その日は特に業務に支障をきたすこともなく、

ストレスで職場を吹っ飛ばすこともなく1日が終わった。


いや、終わっててほしかった。


私は何か重要なことを忘れていたんだ。


朝、浮かれ気分で遅刻しかけて

そのまま家を飛び出した。


もしその時から例の飛ぶ魔法が使えてたとしたら?

部屋を飛び出した時から使えてたとしたら?


答えは全て私の家の中にある。


Open The Door


地獄絵図が眼前に広がっていた。

まぁ、何と言いますか何と言えばいいのやら。


折角ストレスが溜まらないようにしてたのに

最後の最後にストレスをためさせてきたのがよもや私自身とは…


こういうときは深呼吸、してる場合じゃない。


部屋の鍵を閉めて、いったん屋上に出る。


大きく息を吸って、はいて

もいちど大きく吸って


「バカヤローーーーーーーー」


雲が割れて月が出た、

無駄に威力高いのやめてほしいんだけど。


やっぱり魔法なんてまっぴらごめんだ、

こんなの使うもんじゃない。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


3話は来週水曜日、11月29日に更新します。

「面白かった」、「続きが気になる」などありましたら

評価、コメントの方もよろしくお願いします。

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