第5話 六つの寮

「新入生の皆さん、呼ばれた人から前に出てきて下さい。まず、ケニー・スミス」


先生の広げた地図のような紙をまじまじと見つめると、紙の上半分に六つの鏡のマーク、そして下中心部に足跡のマークがある。

と、先生が足跡のマークに乗るようケニーと呼ばれた生徒に促す。


そこにケニーが足を置くとボウッと一番左の鏡が白い光を放つ。と、ベリアン先生の持っている、名刺だろうか?……学生証のようだ。共に白い光を放ち、茶色だった学生証は白を基調としたデザインへ変わる。


「ふむ…ウィッシュライト寮!」


ベリアン先生がケニーへ学生証を手渡すと、右からから二番目の大机の生徒達がこっちだと手招きする。

次の人を呼ぶ前に先生は名簿に何かを書き込んでいる。どうやら寮わけの結果を記しているようだ。


その後も次々と寮わけを行うと、寮わけは精神鑑定により振り分けられる割に、見事均等な別れ方をしている。人数が均等になるよう対人間の相性も汲み取って振り分けているのだろうか。

朱に交われば赤くなるともいうように、人付き合いや環境によって、その人の性質は変化することもあるだろう。


「ジン・フェニックス」


寮わけのシステムに考えを巡らせていると、先生が馴染みのある名前を呼ぶ。それが私のことだと一瞬気づかず、ハッとして慌てて前に出る。先生に促され、足跡のマークに足を重ねる。


「……センドパトラ寮」


センドパトラ寮。緑がシンボルカラーの寮だ。

正直言うと、どんな魔法士を象った寮なのか、全く覚えていない。

私は緑に染まった学生証を受け取り、寮の上級生が手招きする卓へと向かった。






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