第3話 初日からトラブル
クラスへと足を踏み入れると、辺り一面十人十色、まさしく多種多様だ。
地元山吹の街と違い様々な髪、瞳、肌の者達。新鮮だ。
ミドルスクールと異なり席は自由のようで、私は後ろの方に座り生徒を観察する。
人間も様々な髪色の者がおり、皆地毛のようだ。そして獣人属もいる。あれは狼の獣人、豪快な欠伸をする様はうちの愛犬スピンを彷彿とさせる。
あっちはウサギの獣人。随分可愛らしい。まるでお人形さんのようだ。
あとドワーフ属だっけ?早くも教科書を読み予習に取り組んでいる。れっきとした同い年だが丈は私がナーサリースクールの時のようだ。
「本当に世界中から集まっているんだな。」
と、ドスドスと足音を響かせ、二メートルを超えた長身が入ってきた。
長い茶髪を後ろで束ねた大柄な男性、貫禄がある体格に反し瞳は子犬のようで愛らしい印象を受ける。
「は~い皆さん席着いてるかー?俺はウィリアム。君たちの担任だ。宜しくな~!」
広い教室でも充分すぎる大きな声で挨拶をする。
「さっそく寮わけするぞ。皆ローブを羽織って改めて身なりを整え大広間へ向かってね」
そう言うや否や我先にと廊下へ飛び出しルンルンと駆けていく様は、やはり大きな子犬のようだ。
私達生徒もローブを羽織り各々髪やメイクを鏡でチェックする。
私は特に拘りはないので、ローブの形を整え第一に教室を出る。他のクラスからは既にぞろぞろと生徒達がでているので、皆に着いていく。大広間は別棟1階にあるため吹きさらしの階段を降りて外へ出る。
大広間へ着くと、厳粛なローブに反し場が何やら騒がしい。
一体何だ?
背伸びをして前を見渡すと、クラスにいたウサギの獣人がこの騒動の原因のようだ。先程抱いた可愛らしい印象と違い瞳孔が開き荒くれた様子で雷魔法を撒き散らし暴れ狂っている。
「オイオイお前ら、俺に勝てんのかよ?タイマン張るかコラァ!」
ヤンキー、それもまた昔のヤンキーのようなセリフを吐き目前の人達を煽っている
何これ?初日からそんなことしたら退学になるよな?何馬鹿なことしてんだよ。ミドルスクールじゃあるまいしきっと先輩方も白い目で…
「おうおう、今年も骨のあるやつが現れたな。」
「新入生頑張れー!」
「でも寮わけまだじゃねー?寮長誰も来てねえし」
「すげえ魔力だな!私も負けてられないよ!」
「おい俺の髪ボサボサになっちゃったじゃねえか!セットしたばかりなんだぞ!」
え?皆案外乗り気?
驚き辺りを見渡すと、これまた先程クラスにいた狼の獣人と目が合う。すると彼方から声をかけてきた。
「毎年恒例のイベントなんだとよ。大昔にさ、魔法学校と言やあ魔法の才が全て、弱肉強食の世界だと勘違いした荒くれどもが先輩に舐められないように力を見せつけ大暴れしたんだ。
それを意外な事に創設者が気に入り、新入生が力を誇示し寮長へ手合わせすんのが恒例行事になったんだ。とはいえあくまでも有志で強制じゃない。だが毎年一人は決闘を持ちかけるやつが現れるんだ。学校側も規定を満たした魔法による私闘は容認しているから、入学式だけでなく日々運動場で生徒達が力比べをしているそうだ」
「そうなんだ、詳しいね。私はジン。宜しく」
「俺はケセラだ。宜しくな。姉貴が寮長でさ、決闘しまくって寮長まで登り詰めたかなりの戦闘狂なんだよ。『入学式の決闘が楽しみ!きっと沢山立候補してくるよね!早くやりたいなあ!』って昨日からナーサリースクールの遠足前日みたいにウキウキしちゃっててさ」
「ほう。それまた面白い御姉様で。」
「お、ルカ」
いつの間にかルカが会話に混ざっていた。
「こちらケセラだよ、そしてこちらルカ。」
「初めまして。ご紹介に預かりました、ルカと申します。宜しくお願いいたしますね」
ルカは良いとこのお坊ちゃんなのだろうか?振る舞いや言葉選びの一つ一つに気品が溢れでている。
「おう、随分礼儀正しいやつだな。俺はケセラだ!宜しくな」
ケセラもニカッと犬歯を覗かせ笑いかける。
「にしても、決闘は通常寮わけの後では?」
「そうなの?そういやさっきも誰か言ってたな」
「ああ、そうだ。普段は寮わけで自分の所属が決まった後、そこの寮長に持ちかけるんだが…アイツ気が早えや。」
三人で騒ぎの元に目を向ける。
ウサギの獣人は、相変わらず強大な雷魔法を大広間中に轟かせている。かなりの持続力だ
感心し見つめていると彼方も見つめ返すや否や、声を荒げる。
「おいお前!何見てんだよ?やんのか!?やんねえのか!?」
注目を集める程暴れてんのは誰だよ。
「あのー、喧嘩を売るのは寮長じゃないの?」
「うるせえ!誰だって良いだろうが!寮長どこにもいねえしよー、代わりにお前で良いぜ」
「私が嫌に決まってんだろ」
目がイッている。話が通じなさそうだ。
私は新入生だぞ。辞めてくれよ。
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